がんを知り、がんの克服を目指す

愛知医科大学病院

臨床腫瘍センター(腫瘍外科部門)

愛知県長久手市岩作雁又

がんは死因の第1位 発がん原因と予防

がんは1981年から死因の第1位です(図1)。2019年には年間約37万人ががんで亡くなり、生涯のうちに約2人に1人ががんにかかるとされています。今やがんは特別な病気ではなく一番身近な病気なのです。地震への備えと同じように、がんになってからではなく、普段からがんについての知識があれば、がんに対する不安や悩みは少なくなると思います。

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図1 主な死因別に見た死亡率の年次推移

私たちの体の中にある細胞は、常に生まれ変わっています。何らかの原因で細胞の遺伝子に傷がつき、その傷がうまく修復されないとがんになってしまいます。発がんの要因として、遺伝子の個人差などがんになりやすさとしての「内的要因」と、外部からの「外的要因」があります。

「外的要因」は、紫外線や放射線などの「物理的因子」、ウイルスや細菌などの「生物学的因子」、食事や発がん物質などの「化学的因子」などで、このうちいくつかは、がんになるリスクを下げることができます。具体的には、禁煙、ウイルス検査とワクチン、ヘリコバクター・ピロリの除菌などです。

早期発見と進化するがん治療

がんの種類によって、治りやすいがんと治りにくいがんがあります(図2)。胃がんや大腸がんになっても約半数は完全に治ります。自覚症状のない早い段階で見つけて治療すると完全に治る可能性が高いです。いくつかのがんでは、検診を受けることでがんによる死亡を減らすことができます。

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図2 部位別がん罹患数と死亡数

当院では、最新の技術(手術・放射線・薬)でがんと闘います。小さな創(きず)で行う鏡視下(きょうしか)手術やロボット手術が増え、以前と比べて患者さんの負担が軽くなり入院期間も短くなりました。放射線治療の進歩は「切らずに治す」を実現しました。新しい分子標的薬が開発され、副作用が少なく効果が大きくなりました。また、全く新しい作用でがんを抑制する免疫チェックポイント阻害薬は、保険適用の病気が、悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)・非小細胞肺がん・腎がん・ホジキンリンパ腫・頭頸部(とうけいぶ)がんだけでしたが、新たに胃がんや尿路上皮がんも追加になり、積極的に使用することができるようになりました。

高齢のがん患者さんの多くは、がんだけでなく、心臓・肺・脳・腎臓・糖尿病などの病気も持っています。当院では、がんとその他の病気の治療を一緒に、専門的に受けることができます。

そして、患者数の多いがんはもちろん、小児がんなどの稀(まれ)ながんに対しても、それぞれ専門医がいます。診療科内で治療方針が決まらない場合、キャンサーボード(検討会)で多くの診療科が集まって治療方針を相談して決めます。医学が進歩し、従来とは異なる治療方針になることもあります。

遺伝子検査で個人別のがん治療

人の性格が異なるように、同じ種類のがんでもがんの性質は異なります。個人の違いを遺伝情報に基づいて検討し、がんのタイプを事前に調べて、そのタイプに合う薬を使えるようになりました。

2020年には、がんに関連した遺伝子を一度に調べる検査が保険適用になる予定です。これに備えて当院では、患者さんの同意を得てがん組織を保存するバイオバンク(写真)を開始しました。がんの組織を保存して、将来の治療に備えるのです。

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写真 バイオバンク保存用超低温冷凍庫

臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングや自費診療による遺伝子検査も行っています。高齢の患者さんには体力と希望を勘案した治療を提案しています。

更新:2024.01.26

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