病院での診断・外来編

四国がんセンター

乳腺外科

愛媛県松山市南梅本町甲

検診で異常を指摘されたら

本編では検診で要精査となった患者さんが、診断確定から治療に至るまでの、当院の外来診療の流れについて、主に私の専門分野である乳がんを例として述べたいと思います(写真1、2)。

写真
写真1 外来待合室
写真
写真2 2階にある中庭(光庭)

1.まずは精密検査を受けましょう

まずは、検診指摘部位の再評価を行います。実は検診の時点では、即精査が必要な方は10人に1人程度にすぎないからです。その結果、即精査が必要な方、半年後経過観察の方、1年後経過観察の方、さらには、経過観察自体不要な方などに分けられます。

2.確定診断が必要です

即精査が必要と判断した場合、がんの疑いのある病変から針やメスで細胞や組織を採取し、顕微鏡で診断を得る病理診断に移ります。正確な病理診断は、良いがん治療の重要な一歩となります。もちろん病理診断の結果、悪性ではないと分かるときもあります。

3.がんと診断されたら

がんと診断を受けた場合、当初は不安で頭の中が真っ白になるかもしれません。私たちは正確な病状評価とそれに基づく情報提供を分かりやすく行い、不安増大の要因となる情報不足の解消に努めます。

4.正確な病状評価が重要です

まず、完治を目指した治療が可能なのか、誠に残念ですが、もはや治癒が望めない状態なのかの判断が必要です。がん細胞が離れた臓器に転移する遠隔転移を認めた場合は、乳がんでは治癒が望めない状態と判断せざるを得ません。遠隔転移に至る手前の状況として、リンパ節への転移があります。

所属リンパ節と呼ばれる、発生した臓器によって転移を起こしやすいリンパ節群は、リンパ節郭清(かくせい)と呼ばれる手術方法で、まとめて摘出すれば完治できることが多いです。しかし、転移リンパ節の個数が多い場合、さらには所属リンパ節以遠の転移があった場合は、完治は極めて困難となります。

その評価のために、最も威力を発揮する検査がPET‐CTです。全身を一度に検査でき、がんの場所や周囲への広がりを高精度に確認できるため、治療開始までの日数を短縮できます(写真3)。

写真
写真3 CT装置

完治が望めると判断した場合はさらにMRIなどを行い、治療方針決定のために重要な指針となる、病期(ステージ)を決定します。

5.治療方針を呈示します

病状に合わせ、身体状況、年齢、生活様式、就労状況など、すべてを総合的に判断した上で、具体的な治療方針を決定し、患者さんに呈示します。乳がんで完治が望める場合、主病巣ならびに所属リンパ節を完全に取り除くことができる根治手術(こんちしゅじゅつ)が中心となります。

手術した後は、摘出した組織より作成した標本の解析結果を過去のデータと比較して、術前PET‐CTなどでは分からない微小な転移遺残による再発の可能性などを考え、手術の効果を補うために、薬物療法、放射線療法などを合わせて行うこともあります。

一方、治癒が望めない場合は、治療の目的は生存期間の延長、ならびに症状緩和となります。全身の状態が比較的良く保たれている場合は、主に薬物療法が行われます。ただし全身状態が良くない場合、治療によって逆に生存期間を短縮させることになるため、緩和ケア中心となりますが、緩和ケア自体に延命効果もあるといわれています。

6.治療方針を決定します

まず、治療を行う場合のメリットや無治療の場合の経過などについて、患者さん側から医師に確認することが重要です。さらに治療を行う場合、ほかの選択肢の有無、治療効果、副作用、合併症などの長所短所についても同様です。その上で、説明に納得できない、受け入れられない場合、疑問不安が払拭されない場合などは、別の医師の意見を聞く、セカンドオピニオンをぜひ利用してください。その結果、治療内容や方針を十分に理解できることにもつながり、主治医との信頼関係もさらに構築できるのではないでしょうか。

また、より専門的な知識技術を有した看護師と、患者さん目線で相談できる、がん看護外来の利用や、本人、家族の精神的な不安を共に考えるための臨床心理士との面談も有効です。そのようなサポートが充実した施設でがん治療を行うことは、患者さん、主治医双方にとって大いなる助けとなります。治療を受ける施設の選択をされる際、ぜひ念頭に置いておくとよいでしょう。

7.治療開始に向けての準備を行います

治療方針決定後、もしくは並行して、治療開始に向けての準備も必要となります。いざ治療を行うとなった場合、治療にかかる期間、入院期間、費用、就労状況ならびに日常生活の変化など、気になる点は多数あると思います。その際、入退院についてのさまざまな疑問点を説明してもらえる入退院サポート室、患者さんや家族の相談に対応してもらえるがん相談支援センター(写真4)、高額療養制度などの経済的な面について助言をもらえるソーシャルワーカーの存在も、大きな助けとなります。こちらも、施設選択の際の留意点です。

写真
写真4 がん相談支援センターのスタッフ

更新:2024.10.28

関連する病気