膀胱がん、腎臓がんと闘う QOL(生活の質)を保つための最新治療

四国がんセンター

泌尿器科

愛媛県松山市南梅本町甲

膀胱がんは喫煙で増えます

膀胱がんは、前立腺がんほど多いがんではありませんが、泌尿器科領域では2番目に多いがんで、年々増加しています。膀胱がんは喫煙で増えるがんです。喫煙によって増えるがんは肺がんだけではありません。初期症状として多くみられるのは血尿です。肉眼で確認できる血尿のこともあれば、検診で初めて確認できる程度の血尿のこともあります。検診は膀胱がんの発見にも役立ちます。診断は膀胱ファイバーで直接腫瘍(しゅよう)が確認できればすぐに可能で、検査に要する時間も数分です。腫瘍が確認されれば手術で腫瘍を切り取ります。この手術は内視鏡的な手術で、下半身麻酔で行います。この手術により初めて正確なステージが診断され(筋肉内のがんの有無)、その後の治療が決まります。

膀胱がんの最新治療――QOLを保つために必要なこと

治療は膀胱の筋肉にがんがあるかないかで大きく異なります。筋肉内にがんがない場合、膀胱を摘出する必要は特殊なケースを除きありません。一方、筋肉内にがんがある場合は膀胱摘除が一般的です。尿を溜(た)める膀胱を摘出しますので、尿路変向術(尿の出口を作成する手術)が必要になります。この尿路変向が重要なのです。

尿路変向術はいくつか存在し、尿を溜めることができる方法(図1)と尿を溜めることができない方法に分かれます(図2)。蓄尿可能な尿路変向は新膀胱とも呼ばれ、小腸を使って袋を作成し尿道につなぎます。そのため手術傷以外の外観の変化はなく、手術前と同じように尿道から排尿できます。

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図1 新膀胱
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図2 回腸導管

一方、蓄尿できない尿路変向では体に集尿袋を貼り付けることが必要となります。尿路変向にはそれぞれ利点、欠点があり、また体の状況やがんの進行度により、すべての方法が選択肢になるとは限りません。しかし、蓄尿できない尿路変向では外観上の変化や、集尿袋の交換などからQOL(生活の質)の低下を引き起こしますので、当院では可能な限り、新膀胱を勧めるようにしています。

また手術自体も進歩してきました。従来、開腹手術しかなかった膀胱全摘除術も腹腔鏡(ふくくうきょう)が導入され、さらに2018年からはロボット支援手術も可能になりました(写真1)。ますます患者さんにやさしい手術になってきています。

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写真1 ロボット支援手術

腎臓がんは手術が第1選択

腎臓(じんぞう)がんの治療は、最近目覚ましい変化が現れました。新しいタイプの抗がん剤(分子標的薬と免疫チェックポイント阻害剤)の登場です。これまで、腎臓がんに効果のある抗がん剤はほとんどなく、手術ができない、あるいは手術後に再発してきた、などの場合には効果的な治療法がありませんでした。しかし、新しい抗がん剤の登場により、進行した場合の治療も可能になりました。しかし、それでも腎臓がんの治療は手術が大原則ですし、そのためには早期発見が大変重要なのです。

では、どうすれば早期発見できるのでしょう。腎臓がんの症状として血尿、腹部腫瘤(ふくぶしゅりゅう)、疼痛(とうつう)(腰背部痛)がありますが、これらは検診のなかった時代の古典的な症状で、かなり進行しないと現れません。現在、発見される腎臓がんの70%以上は偶発がんです。偶発がんとは、症状がなく発見される腎臓がんのことで、例えば人間ドックで行った超音波検査で偶然発見された、などのケースです。早期発見をするためには検診が必須です。

第1選択の手術ですが、腎摘除術と腎部分切除術があり、それぞれの手術に開腹手術と腹腔鏡手術があります。今は低侵襲(ていしんしゅう)手術の時代ですので、可能な限り腹腔鏡で行っています。腎摘除術か部分切除術かの選択ですが、当院では、腫瘍径が4cm以下であればロボット支援腎部分切除術を行っています。最近の研究では、腎摘除術後に長期間経過すると腎機能の低下をきたし、そのことに起因する合併症(例えば心血管系の病気)での死亡率が上昇することが報告されています。そのため、腎部分切除術の適応はますます拡大されています。特に2016年からはロボット支援腎部分切除術が可能になり、7cm以下の早期がんであれば、腎部分切除術がロボット支援手術で行える時代になってきました。腎部分切除術に対するロボット支援手術の恩恵は大きく、腹腔鏡では困難だった血管周囲の腫瘍や、腎臓の中に埋没している腫瘍でも安全に手術できるようになりました。

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写真2 開腹手術の様子

更新:2024.01.25