糖尿病の多様性に対応できる全領域をカバーした診療-糖尿病センター

富山大学附属病院

糖尿病センター

富山県富山市杉谷

生活療養指導など、幅広い診療をチームで実践

富山大学附属病院・糖尿病センターは糖尿病だけでなく、その合併症を含めて幅広く診療し、糖尿病が出てくる前のメタボリック症候群の段階から統合的に生活療養指導を行うために2019年4月に設立しました。

“糖尿病”と一言で言いますが、これは単なる1つの疾患ではありません。“糖尿病”の中には1型、2型といった全く異なる病態が含まれます。また小児から高齢者まで幅広い世代に起こります。“糖尿病”に併せて起こる合併症もあります。

さらには、併発しやすいがんなどの悪性疾患なども加わり、実にさまざまです。このように多様性をもつ“糖尿病”を“金太郎あめ”のように画一的に治療することはできません。

糖尿病を治療するためには、全身を通しての診療が必要となります。心臓、脳を含めた全身の血管に目を届かせ、糖尿病で多いがんを見逃さないことは前提です。またその治療にあたっては、医者が薬や注射を処方すれば済むものではなく、療養生活についての看護師の指導、食事についての管理栄養士の指導、運動についての理学療法士の指導と多職種の協力が必要となります。

イラスト
糖尿病センターのロゴマークは、世界糖尿病デーのシンボルである「ブルーサークル」と富山県の県花であるチューリップ(花言葉は「思いやり」)を示します。3本のチューリップは「団結」「生命」「健康」を示します。思いやりの気持ちをもち、団結して富山県の糖尿病診療を進めていきます

患者さん一人ひとりに合わせた治療方針や指導

当センターは大学病院でこそ可能な、多くの専門医や専門職が連携して1人の患者さんに対処できる体制によって、一人ひとりの“糖尿病”に合わせたきめ細かい治療方針や指導を行います。さらに当センターは糖尿病学会と連携しつつ、富山県内の糖尿病にかかわる病院や診療所に対して、新しい情報を届ける中心としても機能します。以下に部門構成を示します。

  • 1)精密血糖評価介入外来(リブレ外来)
  • 2)先進1型糖尿病外来
  • 3)高度肥満症治療外来
  • 4)特定保健指導・重症化予防指導外来
  • 5)心血管合併症・脂質管理外来
  • 6)遺伝性糖尿病カウンセリング外来

ここでは具体例として、1~4について説明を行います。

1)精密血糖評価介入外来
最近使われるようになってきた持続血糖モニタリング機械の名前から、通称「リブレ外来」とも呼ばれます。持続皮下グルコース測定機(リブレ)を用いることで、HbA1cや自己血糖測定では分からなかった高血糖、低血糖、グルコース変動幅などを解析し、“糖尿病療養指導士”の資格を持った栄養士・看護師が指導を行うことで、患者さん自身の食事・運動・薬物療法の効果や影響への理解を深め、患者さんが取る行動が変わるようにします。
2)先進1型糖尿病外来
インスリンポンプ療法も進化しており、当院でも低血糖前に自動停止する機能(スマートガード)を備えた最新機種を用いた治療を提供しています。さらに通常診療を超えた先進的な医療も提供します。1型糖尿病の原因である「自己免疫」を制御して、自己のインスリン分泌を保持させることを目的とした「発症早期1型糖尿病に対する免疫修飾療法」の臨床試験、膵臓(すいぞう)のインスリン分泌細胞を移植する「膵島移植(すいとういしょく)」のための国内の移植実施施設への紹介などです。
3)高度肥満症治療外来(ベストウエイト外来)
内科、外科、精神科、麻酔科、栄養科、理学療法科、看護師がチームとなって、皆さんをサポートしていきます。2020年度からは肥満外科治療としてスリーブ状胃切除術も実施しています。
4)特定保健指導・重症化予防指導外来
そもそも糖尿病を発症させないための生活習慣の指導も社会としては必要になります。これまで大学病院が担ってこなかった部分ですが、地域からの要望を受けて特定保健指導・重症化予防指導を行います。

増加する糖尿病患者さんへの診療体制

高齢化する糖尿病の患者さんでは、若い患者さんの治療の中心であるカロリー制限より、筋肉量が落ちてしまうサルコペニアへの対策が重要となります。サルコペニアの予防には、まず筋肉量を簡単にかつ正確に繰り返して評価することが求められます。そのため当センターでは体組成計を導入し、その結果を活用しての指導を行っています。

写真
写真 診療の様子

糖尿病患者さんは近年爆発的に増加しているわけですが、富山県にも10万人前後の糖尿病症例がおられると推定されています。当センターは、県内の多数の診療所や病院と連携を取りつつ、紹介いただいた患者さんを中心に病態を明らかにして、その方に応じた適切な治療や療養指導を導入し、元の診療所に戻った後も定期的に評価を行える体勢を整えています。治療方針が確立していると思われる症例でも、専門家の目を通して問題がないかを検討する意味はあると思います。

更新:2022.03.16