大腸がんの外科治療
富山大学附属病院
消化器外科
富山県富山市杉谷
大腸がんと診断された場合、やはり手術を受ける必要がありますか?
大腸がんは、比較的ゆっくり進行するがんのため、そのがん自体の切除が、抗がん剤治療や放射線治療と比較し、最も効率が良く、治療効果の高い治療法とされています。
ごく早期の大腸がんであれば、内視鏡治療の適応となりますが、多くの大腸がんでは、手術によって大腸がんとその周囲のリンパ節の切除を行います。高度に進行した大腸がんを含めても、大腸がんの85~95%が切除の対象となります。
大腸がんでは、腹腔鏡手術が行われますか?
ロボット支援手術が行われますか?
大腸がんでは、手術後の腹部の痛みの軽減や、腸管の蠕動(ぜんどう)の回復が早い利点などから、最近の全国調査では、大腸がん手術の60%前後が腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)によって行われている結果が報告されています。
当院では、ここ数年は約90%を腹腔鏡手術で行っています。大腸がんの手術に関して、腹腔鏡手術と開腹手術を比較した、複数の臨床試験では、手術の安全性や、がんに対する治療成績は、ほぼ同程度と報告されています。
また2018年からは、大腸がんのうち、肛門に近い直腸がんに対してのロボット支援手術が保険適用となりました。当院では、2018年6月から導入し、現在は、直腸がんの大半をロボット支援手術で行っています。直腸は、周囲にさまざまな臓器と神経や血管が多数走行する、深く狭い骨盤内という場所に存在します。ロボット支援手術では、手術器具を装着したロボットのアームが、多関節でさまざまな角度の動きができ、手ぶれもしません。骨盤内の深部でも正確に手術器具を動かすことができるようになりました。直腸がんの手術では、ロボットの能力を如何なく発揮でき、がんを取り残さず、合併症を防ぐための理想的な手術が可能になると考えています。
肝臓や肺に転移がある大腸がんと診断された場合は、手術で治すことができませんか?
転移を認めても、転移臓器を含めてがんの切除が可能と判断された場合は、手術での治療を行います。しかし、肝臓や肺への遠隔転移を伴う大腸がんの場合、手術単独での治療は困難な場合が多いです。この場合は、手術と抗がん剤を組み合わせて治療を行います。
当院では、消化器内科、消化器外科医師が参加し、毎週キャンサーボードと呼ばれる症例検討会を開催し、手術と抗がん剤治療をどのように選択し治療を進めて行くかを、個別に検討しています。こういった積極的な治療により、近年、転移を伴う大腸がんの治療成績も飛躍的な改善を認めるようになっています。
また、大腸がんからの出血や、がんに伴う腸管の狭窄(きょうさく)症状(排便困難、腹痛など)を認める場合は、大腸がんのみの切除を行い、その後に転移巣に対して抗がん剤治療を行うこともあります。
人工肛門(ストーマ)について教えてください?
ストーマ外来があると聞きました?
大腸がんの手術の場合、肛門にごく近い直腸がんの手術や、腸閉塞(ちょうへいそく)を伴う大腸がんの手術の場合、人工肛門を作ることがあります。人工肛門は、ストーマとも呼ばれています。
人工肛門は、腸の一部をお腹(なか)の壁を通して皮膚の上に出して、肛門に代わって便の出口としたものです。1~2cmほど皮膚から腸が突き出た形になります。人工肛門は、本来の肛門のように筋肉を使って、お尻を締める、緩めるということができません。そのため、便やガスがいつ出るかわかりません。便の受け皿として専用の袋(パウチ)を人工肛門に張り付けて、便の管理する必要があります。
がんに罹(かか)る患者さんの増加に伴い、人工肛門を必要とする方も多くなってきています。そのような人工肛門をお持ちの患者さん(オストメイトといいます)の診療を行っているのがストーマ外来です。人工肛門管理の専門資格を持った皮膚・排泄ケア看護認定看護師が、それぞれの患者さんの人工肛門の状態に合わせたケアや管理のアドバイスを行っています。当院で手術を行われた方はもちろん、ほかの施設で手術を行われた方も受診することが可能です。また腸管ストーマ(人工肛門)だけでなく、尿路系ストーマ(人工膀胱や尿管皮膚ろう)に関するトラブルや相談にも対応しています。
参考文献:「大腸がん治療ガイドライン医師用2019年度版」(大腸癌研究会)http://www.jsccr.jp/guideline/2019/particular.html
大腸がんに対する治療の基本は、がんの切除です。ごく早期のがんであれば、内視鏡治療の適応になります。大腸がんの手術は腹腔鏡での手術が主流であり、直腸がんでは、ロボット支援手術が行われるようになりました。
転移を伴う大腸がんでは、手術と抗がん剤の組み合わせによる治療が必要です。
更新:2024.10.09