症状をゼロにー気管支ぜんそく、肺の生活習慣病COPD
福井大学医学部附属病院
呼吸器内科
福井県吉田郡永平寺町

気管支ぜんそく、COPDはどんな病気?
どちらも肺の中の空気の通り道、気道が炎症を起こしている病気です。息が切れたり、呼吸とともにヒューヒュー・ゼーゼーと音がしたり、咳(せき)や痰(たん)が増えるなどの症状が出ます。
気管支ぜんそくは炎症のために敏感になった気道が、アレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)やほこり、ウイルスなどで刺激され、発作が起こります。発作が起こると気道は狭くなり、空気が通りにくくなるために息切れがしますし、さらに敏感になっているので咳や痰がひどくなります。
慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)(COPD(シーオーピーディー))は別名たばこ病ともいわれ、たばこによる生活習慣病といえます。たばこに含まれる有害物質が、肺で酸素を取り込む大事な役割を担う肺胞を壊すことで起こる肺気腫(はいきしゅ)や、気道に炎症を起こすために、呼吸の働きが損なわれ病気が起こります。国内では500万人以上の患者さんがいるといわれていますが、実際に治療を受けている人は5%程度にとどまることが問題となっています。たばこのための症状だと思っているうちに実はCOPDが進行していて、病状が悪化するまで診断されないことが多いのです。たばこを吸われる方は、COPDになっていないか疑う必要があります。
どんな治療?
気管支ぜんそく、COPDも治療の主体は吸入薬です。炎症を抑えたり、気管支を広げる成分の吸入薬を、毎日使います。最近では、いくつかの成分が1つになった吸入薬が増えており、使いやすくなっています。
気管支ぜんそくでは、発作のときだけでなく、症状のないときも毎日使い、発作を起こさないようにすることが大切です。吸入だけでは症状が治まらない場合には内服薬、また近年では、抗体治療といい、アレルギー反応の源流を治療する薬も使われます。当院では、2015年から気管支サーモプラスティ(図)という最新の治療も行えるようになりました。

内視鏡を使って気管支の内側から壁を温め、発作を抑える
COPDでも吸入治療を行いますが、最も大切な治療は禁煙です。禁煙をしなければ、肺の炎症は進んでいくため治療の効果が得られません。呼吸のリハビリテーションも大きな効果があります。
気管支サーモプラスティって?
気管支鏡という内視鏡を使った、全く新しいタイプのぜんそく治療で、北陸では当科が初めて導入しました。特殊なカテーテルを使って、気道が狭くなる原因となっている、平滑筋(へいかつきん)という気道を取りまく筋肉を温め、その作用で筋肉量を減らし、発作による症状を軽くします。これまでに治療を受けた患者さんからは「ぜんそくを忘れたようだ」「初めて夜ぐっすり眠れた」など、とても良い治療効果が得られた感想を伺っています。
治療は、通常の気管支鏡検査のように局所麻酔で行うこともできますが、ぜんそく患者さんでは検査の刺激で咳が出やすいことがあるため、当院では現在、全身麻酔で治療を行っています。眠っている間に安全かつ確実、丁寧に治療することができます。
症状ゼロを目指して
これらの治療により、気管支ぜんそくでは症状をなくし、健康な人と変わらない生活をすることが可能であり、COPDでは息切れの進行を食い止めることができます。まずは禁煙、そして私たち医療チームと二人三脚で丁寧に治療を進めていきましょう(写真)。

手術室で、複数の医師が安全に行っています
「自分らしく生活して自分らしい最期を迎える」ための療養生活における支援
気管支ぜんそく、COPD、間質性肺炎などの慢性呼吸器疾患は、糖尿病や高血圧と同じで完治する病気ではありません。また、「息がつらい」という体験や不安とともに生活していかなければなりません。もし、慢性呼吸器疾患だと診断されたら、病気と向き合い、折り合いをつけながら生活していくことが必要となります。そのためには、自分の病気を理解し、日常生活を工夫しながら生活していくことが大切になってきます。
慢性呼吸器疾患患者さんは、内服や吸入、酸素療法など自己管理をしながらの生活となります。病気と向き合い、折り合いをつけながら生活していくためには、病気を理解することが必要です。例えば「間質性肺炎」と、よく耳にする「肺炎」は違う病気で、治療方法や日常生活の注意点なども異なります。自分の病名は何で、どんな症状があるのか、どんな治療方法があるかを理解して療養生活を送ることが大切です。療養生活のキーワードは「病気を自己管理しながら、自分らしく生活する」です。
自分らしく生活する完成形が「自分らしい最期を迎える」です。自分らしい幕引きができるように、元気なときから延命治療やお葬式についての希望を書く「エンディングノート」を準備する人が増えています。健康であっても病気があっても、人には必ず最期が訪れます。どこでどんな最期を迎えたいか考え、家族と話し合うことが大切です。
当院では、療養生活のキーワードを目標として、医師、看護師、理学療法士が中心となり、息がつらくなりにくい日常生活動作の練習や、自己管理の方法を患者さんと一緒に考えて療養生活のお手伝いをしています。また、自分らしい最期を迎えるための意思決定支援についても積極的に取り組んでいます。
更新:2023.02.25