最高最新の医療を支えるさまざまな臨床検査

福井大学医学部附属病院

検査部

福井県吉田郡永平寺町

国内最高レベルの検査を迅速かつ正確に診療科へ提供

当部では、全自動分析装置と高度な特殊検査装置を用いて、正確な検査結果を診療科へ迅速に提供し、精度管理の水準を国内最高レベルで維持しています。大学病院の最新治療を支えるために、先進医療に必須の特殊検査、質量分析による原因菌の迅速な同定、さらには最新超音波機器を用いた主要臓器に関する高次元の質的検査も積極的に実践しています。このように当部は、患者さんが安心して最高で最新の医療を受けていただくための基盤を提供しています。

大腸がん治療の先進医療を支える薬物測定

近年、大腸がんの治療は急速に進歩していますが、大腸がんの死亡者数は年間4万人を超え、さらに増加を続けていることから、新しい抗がん薬治療(化学療法)が求められています。大腸がんの代表的な化学療法の1つに、「FOLFOX6療法」という治療があります。これは、フルオロウラシル(5-FU)という抗がん薬を長時間かけて点滴する方法に、別の種類の抗がん薬と、抗がん薬の作用を強める薬を併用する治療で、2週間ごとに繰り返して行います。

これまで、5-FUの投与量は、患者さんの体格(体重や身長から計算した体表面積)に基づいて決定していました。しかし、同じ体格の人に同じ量を点滴しても、薬の吸収や代謝には個人差があるため一部の患者さんには効果があっても、別の患者さんにはあまり効果がなかったり、副作用に苦しんだりするケースがあります。このため、患者さんごとにきめ細やかな5-FU投与量の調整を行い、治療に理想的な血液中の5-FU濃度を保つことで、抗がん効果や副作用の軽減が期待できるといわれています。

当院では、「FOLFOX6療法」の点滴時に血液中の5-FU濃度を正確に測定し、次回に治療で投与する5-FUの量を決定する医療技術により、大腸がんに対してより効果的で安全な治療を行っています。この治療は、特に高い技術と充実した設備を必要とする先進医療の1つであり、厚生労働大臣が認めた大学病院など全国5施設(2016年1月現在)で行われています(写真1)。

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写真1 フルオロウラシル(5-FU)測定装置

質量分析計による迅速な原因菌の特定

感染症の治療には、原因となる微生物を特定し、効果のある抗生剤などの治療薬を選択していくことが重要です。微生物検査では、2つの検査が主な業務となります。1つは、感染部位から採取された検査材料を培養し、発育してきた原因菌の菌名を決定する同定検査で、もう1つの検査は、その菌に対してどの抗生剤が効くかどうかを判定する薬剤感受性検査です。生化学検査や血液検査のように、その日に結果が得られる検査と異なり、菌の発育を待って検査するため結果報告までには、おおよそ4日から10日が必要となります(結核菌の場合は2か月かかる場合もあります)。

時間のかかる検査をより早いタイミングで報告し、適正で効果のある抗菌薬を1日でも早く投与できれば治療期間の短縮(在院日数の短縮も含めて)につながります。この治療期間の短縮を可能にする装置として、微生物検査に従事する臨床検査技師の目の前に、突然現れたのが質量分析計(マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析計)です(図1)。

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図1 質量分析による細菌名の決定

この装置は、2002年にノーベル科学賞を受賞された田中耕一博士が考案した技術を基に細菌同定検査法に応用されたもので、当院でも2015年より日常検査で導入しました。これにより、菌名決定までの期間を最大で3日間も短縮することが可能となり、難治性感染症への早期治療などに貢献しています(図1)。

最新技術を用いた超音波検査

超音波(エコー)検査はテクノロジーの進歩が著しく適応臓器も幅広くなり、日常診療において欠くことのできない検査となっています。近年、組織の相対的なひずみ(ストレイン)の程度を見る方法が、心臓や肝臓などのエコー検査にも用いられています。さらに、CTやMRI検査の画像情報を超音波装置に融合することが可能となり、診断精度が飛躍的に向上しています。

虚血性心疾患を疑う場合、心エコー検査での評価は局所心筋における内膜の変化と収縮期の壁厚の増加を視覚的に観察することで行われています。しかし、このストレイン法を用いると、視認では評価が困難な微細な心筋の動きも簡単に同定でき、潜在している心筋病変を検出できます。また、この方法は、急性心筋梗塞(しんきんこうそく)後の左室機能改善の予測や抗がん剤による薬剤性心筋障害の早期発見にも有用とされています。超音波センターでは、循環器内科で実施している難治性心不全患者さんの心臓再同期療法の適応評価でも用いています(図2、3)。

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図2 心臓 ストレイン(正常例)
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図3 心臓 ストレイン(虚血性心疾患)

C型慢性肝炎などの慢性肝疾患の場合、腹部エコーと合わせてストレイン法で観察すると肝線維化の進行度が把握できます。また、肝腫瘍(しゅよう)が存在すれば、その病巣の硬さは増しているので診断に有用です。消化器内科では処置エコーとして、ストレイン法と画像情報の融合を備えた最新超音波装置を使用し、肝臓がんの治療法の1つであるラジオ波焼灼術(しょうしゃくじゅつ)(RFA)の術中モニタリングや、治療効果判定を実施しています。

更新:2023.02.25