創傷治療のスペシャリストによる最高・最新の治療

福井大学医学部附属病院

形成外科

福井県吉田郡永平寺町

新鮮な傷の治療

包丁などの鋭い刃物や手術での切り傷は縫合することで線状の傷になります。これを一次治癒といい、治癒までの期間は早く、最小限の傷跡になります。これに対して感染した傷や皮膚が欠損した状況では、傷を縫合することができず、開放にしたまま周囲から皮膚が張ってきて治癒するのを待つことになります。これを二次治癒といいます。二次治癒の場合には、治癒するまでに時間がかかるため傷の幅が広がり、色調や質感も周囲皮膚とは異なった瘢痕(はんこん)となります。

傷跡をきれいに治すためには、早く治癒させることが大切です。「傷口は濡(ぬ)らしてはいけない」と聞いたことがあるかもしれませんが、最近では水道水で傷を洗い流し、細菌を物理的に減らして清潔に保つことを勧めています。毎日の消毒も必要がありません。

また「傷を乾燥させて、かさぶたで治す」ということも聞かれたことがあると思います。かさぶたは正常な創傷(そうしょう)治癒過程が進行していないときにできるもので、かさぶたの下に膿(うみ)が溜(た)まることがあります。傷の治癒には適度な湿潤環境が必要といわれています。そのために傷の保護として軟膏(なんこう)を塗ったり、最近では湿潤療法に特化した絆創膏(ばんそうこう)が販売されたりしています。

大きな皮膚欠損では持続的に創面を吸引する装置をつけ、陰圧をかけることで肉芽組織の増生や皮膚の伸長を促進させる局所陰圧閉鎖療法を行うことがあります。最近では装置が小型化され外来通院でも治療を行うことが可能です。

肥厚性瘢痕・ケロイドの治療

傷が治癒した後に、瘢痕が痛みやかゆみを伴って赤く盛り上がることがあります。もともとの傷の範囲のみに生じた状態を「肥厚性瘢痕」と呼び、もともとの傷の範囲を超えて広く生じた状態を「ケロイド」と呼びます。

肥厚性瘢痕は数年かけて自然に軽快し、成熟した瘢痕となります。そのままでも特に問題はありませんが、痛みや見た目が気になるようであれば、手術で切り取って縫い直すことが可能です。この際には傷にかかる緊張に注意して敢えて傷を盛り上げたり、傷の方向を変えるためにジグザグにしたりして縫うことで、肥厚性瘢痕が再発することを予防します。

ケロイドの場合は、自然に治癒傾向を示すことはありません。手術で切り取っても、その傷がより大きなケロイドになるため、手術単独での治療は厳禁です。ステロイドの貼り薬や注射でケロイドの炎症を抑えて退縮させる治療を行います。手術を行う際にはケロイドの再発予防がきわめて重要であり、手術後に傷への放射線照射を組み合わせて行うことで、ケロイドの再発を抑止します。当院では、形成外科と放射線治療科が手術前から連携をとり、患者さん個々の症状に対して治療計画を立てることで、より効果的なケロイドの治療を行っています。

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写真 左:胸部ケロイド 右:手術と放射線療法によりケロイド再発は認めていません

更新:2023.09.11