体にやさしい 肝がんラジオ波焼灼療法

愛知医科大学病院

肝胆膵内科

愛知県長久手市岩作雁又

ラジオ波焼灼療法とは

肝がんの治療法の1つで、超音波で観察しながら、皮膚を通して直径1.5mmの電極針(写真1)を腫瘍(しゅよう)の中心に挿入し、ラジオ波という電流を通電します。針の周囲に熱が発生することにより、腫瘍が固まり壊死(えし)します。ラジオ波とは、AMラジオなどの周波数に近い450kHzの高周波のことで、ほかの医療機器(電気メスなど)に使用される高周波と同じものです。

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写真1 治療用の針を展開したところ

このラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法は、1995年頃から欧米で開発され、国内では1999年頃から広く臨床使用れています。2004年4月には、保険適用手術として認められ、肝がんに対する標準的な治療として位置づけられています。針1本分の傷口が残るだけであり、治療後の安静時間や全身状態への影響が少ないという利点があります。手術や肝動脈化学塞栓術(そくせんじゅつ)などのほかの治療法に比べ、患者さんの体の負担が少なく、治療の効果も十分であると考えられています。

一般に、手術も含めた肝がん治療後1年以内の再発率は6~10%です。

第18回全国原発性肝がん追跡調査によれば、ラジオ波焼灼術が施行された肝がん患者9643例の5年生存率は56.3%であり、手術をした場合とほぼ同等です(表)。

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表 第18回全国原発性肝がん追跡調査報告(2004-2005)より

ラジオ波焼灼療法の適応について

肝がんでは、腫瘍の大きさが直径3cm以下で、かつ個数が3個以下であれば、治療を行うことができ(写真2)、合併症を伴う確率も低くなるとされています。また、肝動脈化学塞栓術などの治療も併用して行うことで、治療効果の向上を目指しています。しかし、次のような場合は不可能です。

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写真2 治療前の肝がん(矢印先端の黒い円形部位)
  • 肝臓に十分な機能が残っておらず、黄疸(おうだん)がみられる
  • 明らかな脈管侵襲(しんしゅう)(血管や胆管へがんが入り込んでいること)がある
  • 肺や骨などのほかの臓器に転移がある
  • 著しい出血傾向がある
  • 治療困難な腹水(ふくすい)があり、出血のリスクが高いと考えられる
  • 腹部超音波で病変がはっきりとみえず、安全に針を刺すことができない
  • 腫瘍が腸や心臓に接しており、重大な合併症のリスクが高い

肝がん治療の流れ

治療日前日に入院となります。血液検査、X線検査、心電図などで全身状態をチェックします。

当日は午後からの治療になり、昼食は抜いていただきます。まず、両側の大腿部(だいたいぶ)(太もも)に対極板を貼りつけ、超音波で腫瘍を観察しながら、針を刺す位置と方向を決めます。次に、あらかじめ痛み止めを注射して、皮膚を消毒し局所麻酔をします。全身麻酔は不要です。針を刺入(しにゅう)し、腫瘍の中心まで到達したのを確認したところで、ラジオ波の通電を開始します。電流を流して周囲の組織に熱を発生させ、がんを焼灼していきます。最終的に径2~3cmの球状に焼灼します。腫瘍の大きさや数によっては、何回かに分けて焼灼します。この間も超音波検査で治療の進み具合を観察します。焼灼終了後は、お腹(なか)の中での出血やほかの臓器への合併症が起きていないか超音波検査で確認し、終了となります。

治療にかかる時間は、病変の数、部位、みえやすさなどにより異なりますが、通常1~2時間です。治療終了後、病室にて4時間くらい安静にしていただきます。痛み、発熱、吐き気などが出る場合がありますが、随時薬で対処可能です。安静解除後は夕食を食べていただけます。

治療翌日は血液検査を行い、合併症が起きていないかを確認します。安静を保つ必要はなく、病棟で自由にしていただくことができます。

数日後にCT検査を行い、効果を確認します(写真3)。うまく治療できていれば終了、退院となります。腫瘍の数が多い場合、またはサイズが大きい場合は、再度治療を行う場合もあります。

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写真3 治療後(治療痕は治療前よりも一回り大きくなっている)

肝がんは再発率が高く、治療後も定期的な経過観察が必要です。退院後、約3か月に1回は血液検査や、CT、MRI、超音波検査などの画像検査を行います。定期的なフォローアップを行うことで、もし再発しても早期に発見することができます。さらに、肝機能の温存も重要で、必要に応じてウイルス肝炎の治療を含めた薬物療法や、栄養療法なども行っています。

更新:2024.10.18