インプラント治療を諦めたくありません。何か方法を教えてください。

愛知医科大学病院

歯科口腔外科

愛知県長久手市岩作雁又

インプラント治療ってどんな治療?

今までは、歯を失ってしまった場合、ブリッジ(両隣の歯を削って金属の被せ物をつなげる方法)や義歯による治療が行われてきました。しかし、残っている健康な歯への負担や、違和感、噛(か)む力の低下を強いられてきました。

インプラント治療は、失ってしまった歯の部位に、人工の歯の根(チタンという金属)を埋め込み、それを土台として新しい人工の歯を作り出す治療です。この治療により、違和感がほとんどなく、自分の歯と同じように噛める歯をつくることができるようになりました。

厚生労働省のインプラント治療に関する調査でも、「インプラント治療は、総入れ歯や部分入れ歯よりも“噛む”機能の回復に優れ、異物感が少なく、患者さんの満足度が高い治療法です」と報告されています(平成26年 日本歯科医学会厚生労働省委託事業「歯科保健医療情報収集等事業」歯科インプラント治療の問題点と課題等 作業班より引用)。

インプラントは、骨が少ないのでできないと言われました。何か良い方法はないでしょうか?

インプラント治療を行うには、今まで歯を支えていた骨の代わりに、インプラントを支える骨が必要になります。一般的には、骨の幅で約6mm、高さで少なくとも10mmほどが必要といわれています。しかし、歯を失った原因やその後の期間によっては、骨が体に吸収されてしまい、十分な骨の量がない患者さんも多くいます。

当院では、口腔(こうくう)外科の高度な知識と技術を生かし、「骨が少ないのでインプラントができない」と言われた患者さんでも、骨を増やすことでインプラント治療を可能にしています。

骨を増やすには、以下の方法があります。

GBR法(骨再生誘導法)
骨が失われた部位に人工膜(メンブレンやチタンメッシュなど)を用いて骨を増やすためのスペースを確保し、人工骨(ハイドロキシアパタイトやβ-TCPなどのリン酸カルシウム系の材料)や自家骨(自分の骨)を移植し、骨の再生を図る治療法です。
ベニアグラフト(ブロック骨移植)
板状の自家骨を採取し、前歯部の顎骨(がっこつ)に貼り付ける治療法です。
オンレーグラフト(垂直的骨造成)
奥歯の骨の高さが足りない場合に用いる治療法です。自家骨をブロックで採取し、形を整えて骨量が不足した部位に貼り付けます。人工骨を使用してこの治療を行う場合もあります。
サイナスリフト(上顎洞底挙上術(じょうがくどうていきょじょうじゅつ))
上顎奥歯の上部には上顎洞と呼ばれる空間があります。上顎の臼歯(きゅうし)部にインプラントを埋め込むときに、必要な骨が確保できない場合、上顎洞粘膜(シュナイダー膜)を挙上し、そのスペースに人工骨や自家骨を移植することにより上顎洞底に骨をつくる方法です。
ソケットリフト
上顎の奥の骨が薄い場合、上顎の骨を少しだけ残してその骨ごと上顎洞を覆っている粘膜(シュナイダー膜)を持ち上げ、そこに人工骨や自家骨を移植してインプラントを同時に埋め込む方法です。
仮骨延長法(ディストラクション)
骨に切れ目を入れてゆっくりと伸ばしていくことで、骨を延長する治療法です。
骨移植(腓骨被弁(ひこつひべん)・腸骨移植・頸骨(けいこつ)移植など)
がんや外傷による大規模な骨欠損に対して行います(写真)。全身麻酔下に自家骨や骨に栄養を運ぶ血管柄(けっかんへい)付きの自家骨を採取し、骨欠損部にプレート固定します。血管柄付きの場合は、専用の顕微鏡を使用して血管をつなぎ、血液からの栄養が移植骨に運ばれるようにします。

写真
写真 がんのため、左上顎骨を切除後、顎骨再建・インプラント治療を行った症例
再生医療・成長因子
成長因子の投与や患者さん自身の骨髄(こつずい)や歯(歯髄(しずい))から得られた細胞を用いて骨再生を行う研究が進み、一部臨床応用されています。当院でも、患者さん自身の歯から得られた細胞を用いて骨再生を行う研究を行っており、この臨床研究は「再生医療等安全性確保法」および「人を対象とする医学系研究倫理指針」のもと、特定認定再生医療等委員会の審査を経て、地方厚生局へ届け出を行い実施していました。

このような手技を駆使することで、一般的なインプラント治療だけでなく、たくさんの骨欠損を伴うがんや外傷を負った患者さんへもインプラント治療を行い、食べる楽しみを感じていただいています。

また、難しい症例になるほど、神経や血管を損傷するリスクを伴います。リスクを減らすためには、事前に画像診断に基づいた正確なプランニングが必要です。当院では正確な診断と手術を行うため、最新の画像診断・手術シミュレーションシステム(NobelGuide®)を採用しています。

写真
図 NobelGuide®は治療計画から埋入までの予知性・安全性を向上させるシステムです

手術中の怖い気持ちを軽減するために静脈内鎮静や全身麻酔を選択すること、術後、家に帰ってからが不安という方には、入院により安心して過ごしていただくこともできます。このように大学病院の口腔外科だからこそ可能な、安心して治療を受けていただける環境が整えられているのも当院の特徴です。

更新:2022.03.14