慢性腎臓病になったら知ってほしいこと

浜松医科大学医学部附属病院

腎臓内科

静岡県浜松市東区半田山

慢性腎臓病とは?

じん臓(ぞう)は尿を作る臓器で、老廃物を取り除く役割を担っています。その老廃物を除去する力を腎機能といいます。

腎臓組織に障害が生じると尿蛋白(にょうたんぱく)が出現します。その組織障害が進行すると腎機能が低下します。慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう)は、尿蛋白もしくは腎機能低下が持続的に認められる状態です。成人で8人に1人、特に70歳代の3人に1人、80歳代の2人に1人が慢性腎臓病といわれています(図1)。

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図1 成人の8人に1人は慢性腎臓病

慢性腎臓病の管理

慢性腎臓病の原因を突き止め、対策します。慢性腎臓病の多くは、糖尿病や高血圧、脂質異常症など、生活習慣病に関連して発症します。そのため、目標を定めて、生活習慣の是正に取り組みます。

特に減塩対策は大切で、どの程度食塩を摂っているか現状を把握し、減塩・生活指導を管理栄養士とともに行います。さらに、腎臓を守る薬を、患者さんの状況に合わせて適切に使用します。

また、生活習慣とは関係なく、高度な尿蛋白や血尿がみられる場合には、腎生検(じんせいけん)(*)という検査を行って、腎臓の障害の種類や程度を、詳細に評価します。腎生検の結果、専門的治療が必要と判断した場合、腎臓障害を抑える免疫抑制療法を行っていきます。

* 生検/患部の一部を切り取って、顕微鏡などで調べる検査

自分で選ぶ腎代替療法

慢性腎臓病が進行して老廃物の除去ができなくなると、心不全や感染症など、さまざまな合併症をきたし、生きていくことが難しくなります。そういう状況になっても生きていくためには、自分の腎臓の代わりに老廃物を取り除く手段が必要です。その老廃物を除去する治療を、腎代替療法(じんだいたいりょうほう)といいます。

腎代替療法には腎移植、透析があり、透析にはさらに腹膜透析(ふくまくとうせき)、血液透析の2種類があります(図2)。わが国の透析患者さんは、年々増えています(図3)。

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図2 腎代替療法の種類
グラフ
図3 慢性透析患者数(1968 ~ 2020 年)と有病率(人口100 万対比、1983 ~ 2020)の推移(2020 年12 月31 日現在)
日本の透析患者数は年々増えています
(日本透析医学会〈https://www.jsdt.or.jp/dialysis/2227.html 〉より引用) 

それぞれの治療には、生活様式が異なるだけでなく、注意点や長所、短所が異なります。当科では早い段階で腎代替療法の特徴を丁寧に説明し、どれを選択するのか、時間をかけて準備していく体制が整っています。

●腎移植

腎移植は、長生きや質の高い生活が期待できますが、免疫抑制薬の継続や、合併症対策の準備が必要です。

亡くなった方から腎提供を受けるための登録の手続きを、泌尿器科と協力して当科で行っています。健康な親族から腎提供を受ける場合は、腎提供者の精神的、肉体的負担を含めて、安全性の確保に時間をかけて準備をしていきます。

●腹膜透析

腹膜透析は、お腹(なか)に入れたカテーテル(プラスチック製の細くて長い管)を介して行う透析で、患者さんに自宅で操作してもらいます。当科では、夜の寝ている間に透析を行う方法を主に提案しています。

通院や透析時の体への負担が少なく、透析操作もそれほど難しくありませんが、いずれ尿が出なくなったときには、血液透析を併用、もしくは血液透析に移行します。

●血液透析

血液透析は血液をフィルターで掃除する治療です。

血液透析を開始するときに、1週間ほど入院してもらいますが、その後は近隣のクリニックで週3回血液透析をしてもらいます。

更新:2023.10.26