角膜移植を支えるアイバンク

浜松医科大学医学部附属病院

眼科

静岡県浜松市東区半田山

アイバンクとは?

角膜(かくまく)(黒目の部分)が濁ったり、穴が開いてしまったりすると、角膜移植が必要になります。角膜移植には角膜の提供が必須です。アイバンクは、献眼者を募集登録し、死後の眼球を摘出する医師を支援し、角膜移植を待っている患者さんに公平・公正に斡旋(あっせん)する機関です(図1)。

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図1 アイバンクとは

角膜移植とは

角膜には、透明なレンズとしての役割と、眼球の壁としての役割があります。角膜が混濁したり、穴が開いてしまったりすると角膜移植が必要になります。

角膜の全部の層を移植する全層角膜移植手術(ぜんそうかくまくいしょくしゅじゅつ)は、古くから行われている手術の1つで、約100年の歴史があります。近年の角膜移植の話題は、羊膜(ようまく)移植手術や、iPS細胞を用いた角膜細胞移植手術などの報道が多いのですが、依然としてドナー角膜による移植手術が重要であることに変わりはありません。

角膜移植の対象となる頻度の高い疾患として、以下の4つが挙げられます(写真1)。

  • 円錐角膜(えんすいかくまく)
  • 水疱性角膜症(すいほうせいかくまく)
  • 角膜炎後の混濁
  • 角膜変性症
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写真1 角膜移植の対象となる疾患

最近では技術の進歩にともなって、角膜パーツ移植(悪いところだけを移植する手術)が行われています。角膜は上皮、実質、内皮に分けられます。上皮と実質を移植する「層状角膜移植(そうじょうかくまくいしょく)」と、内皮を移植する「角膜内皮移植」という手術方法がこれにあたります(図2)。

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図2 種々の角膜移植手術

静岡県アイバンク

人工の角膜はいまだ普及していないので、角膜移植手術には、角膜の提供が必須です。アイバンクは、死後に角膜を提供してもいいという献眼者を募集登録し、眼球を摘出する医師を支援し、角膜移植待機患者に公平・公正に斡旋する機関です。

全国に54のアイバンクがありますが、静岡県アイバンクは、全国で1、2位を争うほど献眼者が多く、全国の活動を牽引しています(図3)。

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図3 アイバンクの献眼数(静岡県アイバンクのデータをもとに作成)

これは、静岡県内のライオンズクラブ、眼科医、ボランティアを中心に、多くの方々の長年にわたる努力の結果です。静岡県東部の活動が盛んですが、特にアイバンクの献眼活動の聖地ともいうべき沼津地区や、近年では小山地区、御殿場地区のライオンズクラブの突出した貢献など、県内のライオンズクラブの献身的な活動に支えられています。

眼球摘出は県内の眼科勤務医、順天堂静岡病院、当院だけでなく、東京大学、順天堂大学、県内の開業医の協力によって成り立っています。

ご家族は、故人が献眼することに最後まで抵抗があるのも事実です。故人の体の一部が、病気で困っている患者の体の一部となり、光となって生き続けていきます。この本を読んでいただいている一人でも多くの方に、価値のある仕事であることを知っていただけたらと願います。

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写真2 献眼者合同慰霊祭の様子(油山寺)

患者さんからの感謝の言葉

(個人が特定されないように一部改変)

私に角膜を提供してくださった方、そして、そのご家族の皆様に心から御礼を申しあげたいと思います。私は幼い頃から光がまぶしくて、外では目を開けるのも辛い状態でした。小学校では黒板のほとんどが光っていて見えず、新聞も見出し以外は白紙に見えました。

HBの鉛筆では自分の文字が見えないので、2Bや黒ペンを使い、教科書を自分のノートに大きく書き写して予習をしていました。大人になると、私が見えていないということは、見える人には理解できないのだということがわかりました。メガネやコンタクトでは見えるようにならないことも理解されず、生きていくことさえ辛い時期が長く続きました。

最初に右目、次に左目の移植を受けました。その後の生活は、世の中がこんなに明るく、色が鮮明で、立体的で、物の存在がはっきり見えて、驚きの毎日です。山がいろいろな緑で構成されている事を、この年になって始めて知りました。空に浮かぶ白い雲が、立体的だったことも知りました。見るものすべてが、感動でした。

今でも、山をながめていると、今までこの景色を知らなかったこと、そして知ることができたこと、そこにはどなたかの善意があってこそ、といろいろな思いで涙があふれてきます。この喜びは言葉では言い表せないです。生きていてよかったと思いました。

かかわってくださったすべての方に感謝しています。いただいた角膜を大切に、大切にしていきます。ありがとうございました。

移植を受けた40代女性の方からのお手紙

更新:2023.10.26