多職種連携による個々の患者さんに適した糖尿病個別化治療

藤田医科大学病院

内分泌・代謝内科 

愛知県豊明市沓掛町町田楽ヶ窪

糖尿病を早くしっかり治すために

糖尿病は血糖値が高いために血管合併症(血管が詰まり血液が流れなかったり、やぶれて大出血を起こしたりすること)を引き起こす病気です。血糖値がかなり高くならないと症状が現れないために早期発見が難しいのです。

そのため健康診断などを受けていない方の中には、血管合併症の症状が進んでしまってから糖尿病を指摘される場合もあります。また、血糖値が一時的によくなったために安心してしまったり、時間がなかなかとれなかったりして病院への通院を中止してしまうこともあります。そのような場合、次に病院を受診したときには血管合併症がかなり進行していることがあります。糖尿病を早く発見し、治していくためには、患者さんに自分の体のことをきちんと知っていただくことや、周りの人のサポートを受けることが大切になります。

糖尿病の合併症を増やさないために

糖尿病になると合併症と呼ばれる病気が増えやすくなります。特に血糖値の影響を受けやすい神経障害、(眼の)網膜症(もうまくしょう)、腎症(じんしょう)を糖尿病の3大合併症といいます。

当院では、医師による定期的な検査のほかに、糖尿病療養指導士や糖尿病看護認定看護師、管理栄養士などのメディカルスタッフが療養のお手伝いをする専門外来を設けています。例えば、足の病気がないかどうかのチェック(フットケア)や、腎症を悪化させないための指導(透析予防指導)をしっかり時間をかけて行っています。これらの合併症は、自覚症状があまりなく、自分では気づきにくいので、専門スタッフによるチェックや指導が特に効果的です。また、外来の待ち時間に独自で開発した簡単なアンケートや検査結果をもとに、スムーズに公衆衛生看護科外来受診ができるようになっています。

糖尿病の入院治療で行うこと

当院では、はじめて糖尿病と言われた方、糖尿病の合併症が見つかった方、手術前に血糖値が高く血糖値を下げる必要がある方などを対象に糖尿病の入院治療を行っています。

糖尿病の入院では、まずどのような理由で血糖値が上昇したかを医師・メディカルスタッフ・患者さんで一緒に考えていきます。血糖値が上昇する理由はさまざまですが、膵臓(すいぞう)が傷んで血糖値を下げるのに重要なインスリンが出ない場合や、実はがんが隠れていたという場合もあります。そのため糖尿病の合併症の程度を確認しながら、膵臓の働きを含めた全身の検査を行います。

糖尿病では、生活習慣のリズムと身体のリズムがずれていることが多いので、食事・運動を含めた生活のリズムを整える工夫をしていきます。また、薬が必要な場合には、個人個人の体に合った薬を必要最小限の種類と量で考えていきます。

個別化治療に役立つ糖尿病療養指導カードシステム®

患者さん一人ひとりの病状に合わせて治療を行うために、当院では日本糖尿病協会が制作した糖尿病療養指導カードシステム®(カードシステム)を導入しています(写真1)。

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写真1:糖尿病療養指導カードと説明用パンフレット(提供:日本糖尿病協会)

入院1日目に患者さんから担当看護師が生活面の情報収集を行い、スタッフ間で情報が共有されます。それにより、日によって指導するスタッフが替わっても、患者さん個人の課題がすぐに把握できるようになりました。集団糖尿病教室と糖尿病療養指導カードによる個別指導を組み合わせることで、さらに充実した糖尿病教育を実施しています。

また、土日祝日の糖尿病指導も効率よく行われるようになりました。退院時には、入院中のカードシステムによる指導内容のチェックリストと問題点を列記したものを、糖尿病連携手帳につけて患者さんにお渡しし、外来や紹介先の病院での診療にスムーズにつなげています。患者さんはお薬手帳と一緒に糖尿病連携手帳を携帯していただくと、眼科や歯科をはじめとする他医院を受診する際に、確実に現在の糖尿病の状況が伝えられます。

糖尿病ケアサポートセンターを窓口とした診療連携

当院には、糖尿病に関する治療の窓口として糖尿病ケアサポートセンター外来があります。かかりつけ医の先生や、ほかに治療中の病気のある方について、スムーズに治療を受けていただくための窓口です。

当院では、公衆衛生看護科という看護外来部門があり、専門外来の診療にかかわっていますが、糖尿病ケアサポートセンター外来では、糖尿病に特化して病院内外からの相談やタイムリーな治療の手配を行っています(図)。

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図:糖尿病ケアサポートセンターと業務の流れ

また、糖尿病ケアサポートチームでは、地域の皆さんへの情報提供のために、世界糖尿病デーにあわせた市民公開講座(写真2)を年1回実施しています。糖尿病患者さんの会「ふじた庵」を通じて、より正確で有益な健康情報をお伝えするための取り組みを行っています。

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写真2:世界糖尿病デーイベント

更新:2022.03.08