一般外来から救急まで、原因不明の内科的疾患に対応

藤田医科大学病院

救急総合内科

愛知県豊明市沓掛町町田楽ヶ窪

診断を通して適切な診療科へ

大学病院は、高度先進医療を担っています。専門性を究めるため、臓器別に診療科が細かく分かれているのが特徴です。一方で、初診や救急での搬送・来院の場合、どの診療科に該当するのかを見極めなければなりません。

人間の体は、さまざまな臓器が複雑に関連し合ってその機能を果たしています。1つの臓器に障害が起きると、離れた他の部位に症状が出ることもあり、診療科を特定することは容易ではありません。

当院には「1か月以上微熱が続いている」「体重が急激に減った」など、原因不明の症状を訴える患者さんが多く訪れます。ほかの医療機関で診断がつかず、転院紹介されるケースもあります。

このように受診すべき診療科がはっきりしない場合や、複数科にわたる可能性がある患者さんを担当するのが救急総合内科です。臓器にとらわれず、全身を総合的・横断的な視点で診断し、適切な診療科へと引き継ぐ役割を持ちます。

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写真1:全身を統合的・横断的な視点で診断します

一刻を争う現場での高い診断能力

「患者さんが抱える複雑な内科的疾患をすべて診ることができる」のが救急総合内科です。高い診断能力で、初診外来、救急外来(ER)、集中治療室、病棟と幅広い部門で活躍しています。

救急外来(ER)がある総合救命救急センターには、生命の危機にひんしている重篤な患者さんが絶えず救急搬送されてきます。2018年度の救急車受け入れ台数は9600台以上、1日に換算すると30台弱という多さです。とくに当院は、地域医療を支える大学病院として「24時間365日体制の断らない救急医療」を掲げており、救急搬送から徒歩での来院まで重症・軽症問わず、あらゆる患者さんを受け入れています。それらすべての患者さんを診察し、治療の方向性を決めるのも当科の役目です。

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写真2:一刻を争う患者搬送
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写真3:総合救命救急センター内

時には救急搬送が重なり、複数の患者さんを同時に診なければならないことがあります。救急の現場は一刻を争います。この患者さんはどんな病気なのか、優先すべき治療は何なのか、どこから専門医に引き継ぐべきなのか、一人ひとりを迅速かつ的確に判断する能力が求められます。

救急医療に欠かせない内科医の存在

かつて救急といえば、交通事故やスポーツなどによる外傷の治療が主で、外科医が中心となって運営していました。しかし、高齢化が進むにつれ、脳卒中や心筋梗塞(しんきんこうそく)などの内科的疾患による搬送が多くを占めるようになり、救急の知識と技能を身につけた総合内科医が欠かせない存在になっています。とくに内科的疾患は軽症に見えても重篤な疾患が潜んでいる場合があり、「熱がある」と徒歩で来院したからといって軽症とは限りません。

当科には救急専門医が10人以上、全体で30人以上の医師が在籍しています。救急外来(ER)では、内科診断学に精通した救急専門医をリーダーに、研修医や医療スタッフがチームを組み、ありとあらゆる可能性を考えたうえで診断や初期治療、集中治療を行うことで、高い救命率を実現しています。

各診療科との調整役

ある病気にとっては良い治療でも、その人が持っている別の病気にとっては都合が悪い場合があります。とくに高齢者は複数の疾患を抱えていることが多く、真の原因はどこにあるのか、緊急性が高いのか、どの診療科に引き継ぐのかを的確に判断しなければなりません。このような場合の調整役も私たちの大切な仕事です。

高度先進医療は、生命の危機的状態を脱してこそ行えるものです。まずは診断をつけ、その人に最適な治療や診療科を選択することが必須と考えます。

「全人的な医療」を目指して

当科が目指すのは「全人的な医療」の実践です。「全人的」とは、患者さんの身体面だけでなく精神面を含めてその人全体を診ることです。

病気が引き起こる背景には、食生活や喫煙歴、年齢、ストレス、持病、家庭環境、生活スタイルなどさまざまな要因が絡んでいます。それらを踏まえたうえで治療を進めることが、最善の結果につながると考えています。ゆえに総合内科医には、コミュニケーション力が欠かせません。患者さんや家族への聞き取り、他科との連携には信頼関係が必要だからです。

当院には40の診療科があり、それぞれの専門医が最新の医療を提供しています。彼らが専門性を究めたスペシャリストだとしたら、広範囲をカバーする救急総合内科はジェネラリストだといえます。このジェネラリストを追究し、「全人的な医療」を実践することこそが、私たちの使命だと考えています。

更新:2022.03.08