がんの苦しみをやわらげたい 緩和ケアを愛媛県に

四国がんセンター

緩和ケア内科 

愛媛県松山市南梅本町甲

がん専門病院の緩和ケア病棟

当院は、2006年4月に現在の場所に新築移転し、緩和ケア病棟を開設しました。緩和ケア病棟の特徴は、がん専門病院(がん診療連携拠点病院)にあるということで、開設当時から大事な役目を担ってきました。

そのひとつが、がんによる苦痛な症状をしっかり緩和するということです。がんには、身体的な痛みだけでなく、社会的、精神的あるいはスピリチュアルな側面を含めたさまざまな苦痛があります。その苦しみを、いろいろな職種の人がかかわることで解決できることがあります。

例えば、気持ちの問題、経済的な問題、スピリチュアルな問題(生きることの意味、死の恐怖、後悔、罪悪感)を抱えているときは、看護師、臨床心理士、医療ソーシャルワーカー、臨床仏教師などが相談に乗り、つらさを軽くするようにします(図)。

フローチャート
図 全人的苦痛

ふたつ目の役目は、家で過ごしている患者さんの症状や状態が変わったときに、24時間365日対応することです。電話相談、外来診療を行い、入院が必要であれば、緩和ケア病棟で受け入れます。

重要なことは、入院の必要がある患者さんを待たせないことです。救急車での入院も受け入れてきました。救急病院をたらい回しされることは、ありません。そうすることで、患者さんは、自宅でも安心して暮らすことができます。

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写真1 緩和ケア病棟の室内
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写真2 病室からつながる中庭

苦しみのためのがん難民を出さないために

一時期、がん難民という言葉が流行ったときがありましたが、私たちはそれを生み出さないのが使命だと思います。年間260人前後の患者さんの人生の最終段階を看ていますが、がん難民をなくすには、緩和ケア病棟が必要といえます。がんの治療における最後の砦のような存在と考えています。

緩和ケアは、入院での対応以外に、外来でも受けることができます。緩和ケア外来は月曜から金曜まで行っており、当院通院中の患者さんはもちろんですが、他の病院でがんの治療を受けている患者さんも主治医と相談して、外来紹介してもらうことができます。

外来受診ではなく、何か気がかりや困ったことなどがある場合には、がん相談支援センターで相談を受けています。

緩和ケアに対する誤解

緩和ケアに対して誤解している方がまだまだ多いので、それについて説明します。

緩和ケアは、がんの末期の人が受ける治療だと考えられていることです。2002年にWHO(世界保健機関)が緩和ケアを次のように定義しています。

「緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOL(生活の質)を、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである」

緩和ケアの対象は、がんの末期だけではないということです。

国内では、がん対策基本法が2006年に制定されてから急速に緩和ケアが広がってきました。最近では、がんと診断されたときからの緩和ケアが求められるようになっています。また、がんではない患者さんの緩和ケアも話題となり、2018年には、心不全も緩和ケアの対象と認められるようになりました。悪性腫瘍(あくせいしゅよう)と後天性免疫不全症候群(こうてんせいめんえきふぜんしょうこうぐん)を対象としていた国内の状況が、やっと少しだけ世界レベルに近づいたともいえます。

このように、緩和ケアの目標は、患者さんの苦痛を適切に評価し、対応することで、患者さんと家族のQOL(生活の質)を改善していくことです。今後、緩和ケアがますます普及し、誤解がなくなることを期待します。

更新:2024.01.25