「遺伝」の悩み、ご相談ください

平塚市民病院

産婦人科

神奈川県平塚市南原

はじめに

皆さんは「遺伝」と聞くと、どのようなイメージを持たれるでしょうか?

体格や血液型、親と子や兄弟が似ているかどうかといったことが思い浮かぶ方も多いと思います。なかには、遺伝性の病気や、生まれつきの病気のことを連想される方もいるでしょう。

遺伝は本来、生命の多様性と深いかかわりがある概念です。あらゆる生物において、遺伝子の変化は一定の割合で起きています。遺伝子に変異を持つ人がいる状態こそが、生物として健全な社会であるとも考えられます。遺伝性疾患は、一部の人の問題ではなく、誰もが当事者になり得る問題であり、社会全体で取り組むべき課題です。

遺伝診療と遺伝カウンセリング

遺伝診療は、ここ最近、急速に進歩している医療分野の1つです。現在では、遺伝子検査によって、確実に診断ができ、治療や対策を取ることができる疾患が増えてきました。

一方、検査の結果によっては、その人だけでなく、家族や兄弟など血縁者の人生が大きく変わることもあります。こういった場合、「検査によって何がどこまで明らかになるのか」「社会的支援などはどのようなものがあるのか」「周囲の人たちはどのようにかかわっていくのがよいのか」といった情報を伝え、本人、家族が納得し、安心して医療を受けられるようサポートしていく、「遺伝カウンセリング」が重要となってきます。

遺伝する病気と聞いても、大多数の方は他人事と思われるかもしれません。しかし、いざ親や自身が病気になったときには、「親と同じ病気に自分もなるかどうか」「自分の病気が子どもや孫に遺伝するのかどうか」といった不安に直面するかもしれません。もしそうなった場合は、人生の大事な問題となるため、大きな戸惑いや悩み、苦しみを伴います。そういった方の話に耳を傾けて、ともに考え、より良い人生を歩んでいただくお手伝いをすることが、遺伝カウンセリングの役割です。

答えは1つではありませんし、二者択一でもありません。絶対的な正解があるわけでもありません。遺伝カウンセリングによって、新たな選択肢が見つかることもあります。自分たちで最後まで考え、納得した選択をしていただけるように、私たちはともに考え、寄り添い、サポートしていきます。

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遺伝カウンセリングの注意点と当院の診療

遺伝性疾患だけでなく、出生前診断も遺伝カウンセリングの対象です。ただし、このことに関しては、誤った知識や誤解が深く浸透しているようです。インターネットには、妊婦さんの不安を煽(あお)るかのような記事や、健康食品、高額な検査など、不安につけこみ、混乱させるような広告も多く見られます。

また、妊婦の血液検査で、胎児の染色体異常の有無を高い精度で診断する検査が広まりつつあります。遺伝に関する知識が不十分なまま、フォロー体制も整わないなかで、このような検査が安易に広がることは危惧されるべきことです。

国内では、「人についての遺伝」の教育が十分になされていないため、誤って理解している方がたくさんいます。出生前診断も、遺伝病の発症前診断と同様、検査を受ける時点では被検者は患者ではないため、通常の医療の対象とはなりません。また、結果的に選択的妊娠中絶が考慮され得ることから、倫理的問題への対応が極めて重要です。

当院では、そのようなお母さんの不安にきちんと対峙し、一つひとつ丁寧に不安を解消していくことを目指しています。そのための手段として、当院では羊水検査を行っています。今後もcombined test(出生前診断)やNIPT(母体血胎児染色体検査)といった技術を取り入れていき、いずれは周産期遺伝カウンセリング外来を設け、妊婦さんの些細な疑問や不安を少しでも解消できることを目指しています。

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更新:2024.01.26