「チームOASiS」の活動で、さらに充実した体制へ 通院治療センターの役割
大垣市民病院
通院治療センター
岐阜県大垣市南頬町
通院治療センターとは
通院治療センターは、2007年1月、外来化学療法部門としてベッド数30床で、新設病棟の最上階に開設されました。がんに対する外来化学療法を、安全かつ適正に管理・実施する部署です。
外来化学療法が行われる仕組みには、主に各診療科主導の「処置室型」と腫瘍(しゅよう)内科主導による「腫瘍内科型」の2種類があり、当センターでは診療科としての腫瘍内科はありませんが、「腫瘍内科型」を採用しています。院内の主治医が病気の把握や治療効果判定を行い、当センター医は、主治医から紹介を受けて、化学療法の治療管理について全権を担います。化学療法が始まってからは、延期や中止も含めて問題が生じた際は、主治医と連絡をとりながら治療を行っています。
各診療科の主治医は、センター医への依頼時に、告知の状況からレジメンやコース数の指示、検査値まであらゆる患者情報を伝達し、その情報をもとに、センター医が患者さんごとの化学療法の規定となる「患者サマリー」を作成します。その後はセンター医がレジメンをオーダーし、検査予約、診察日予約、経過観察、副作用マネジメントなどの治療管理をすべて行っています。「レジメン」とは、抗がん剤の治療計画のことで、投与量やスケジュールなどをあらかじめセットとして登録してあります。これにより、統一的で間違いのない安全な治療を実施することができます。
常駐スタッフは、医師については常勤医師が1人。曜日担当で診察医1人、処置医2人の計3人が毎日の診療にあたっています。薬剤師は、曜日担当で2~3人配置されています。看護師は常勤6人、短時間勤務2人、補助員2人、そして、事務と調製した抗がん剤などを運搬する専属SPDが1人配属されています。
当センターには、1日平均約40人、多い日には70人を超える患者さんが通院治療に来院します。来院した患者さんに対し、まず看護師が血圧や脈拍、体温を測定し、その日の状態を確認し、副作用の有無・程度や体重の増減の確認を行います。これらの情報と採血などの検査結果を、医師3人が確認し、治療の可否を判断します。薬剤師は、患者さんと面談を行い、副作用に対する処方提案を行うなど、支持療法に力を入れています。患者さんが日常生活や社会生活を送りながら、安心して安全な治療を継続できるよう、医師・薬剤師・看護師・補助員で情報共有を行い、チーム医療を行っているのです。
患者数は開設当初から年々増加し、開設当初3,766件に対して、2018年度は8,237件で2倍以上に増加しています(図1)。がん種別では、大腸がんが31%で最も多く、ついで乳がん19%、肺がん14%、造血器腫瘍11%、胃がん8%となっています(図2)。
また、がんの三大治療である、手術(外科治療)、薬物療法(抗がん剤治療)、放射線治療以外にも、第四のがん治療とも呼ばれる、免疫治療の一種である「免疫チェックポイント阻害薬」(以下、ICI)が導入され、対象疾患の拡大に伴って、投与患者数は増加しています。
ICIと「チームOASiS」
PD-1、PD-L1の結合によりリンパ球機能を抑えられる状態は、実は、正常細胞が免疫細胞からの攻撃を逃れるシステムにも関与しています。このため、ICI投与により、ブレーキを外された免疫担当細胞が暴走し、正常な細胞を攻撃することで種々の副作用が生じることがあります。甲状腺のホルモン産生細胞や膵臓(すいぞう)のインスリン分泌細胞などの障害による内分泌系の障害、間質性肺炎、大腸炎、肝障害などの自己免疫性疾患様の障害です。これまでのがん細胞を直接攻撃する薬剤による、正常な細胞が障害されて出現する副作用とは全く異なった副作用が認められるようになったのです。このため、副作用が認められた場合には、当院のいろいろな科が協力して対応することが必要となります。
当院では2018年8月に、ICIに対する院内チーム「OASiS」(Ogaki Alliance System for irAE Support)を立ち上げました。医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者さんの状況に的確に対応しうる医療を提供できる体制づくりを目的としています。ICIを用いて治療を行う科、治療は行わないが副作用が出現する可能性がある臓器の診療科に加え、薬剤師・看護師・臨床検査技師や医事課事務員まで含めて、多職種のチームでのサポート体制を整えています。
ICI治療が終了したあと、どの時点で副作用が出現するか未知の部分もあるため、院内の連携のみでなく、西濃地域各医療機関と協力して、患者さんの経過を診ていく必要もあります。
当院は「地域がん診療連携拠点病院」の指定を受けており、通院治療センター「チームOASiS」の活動を通して、病病・病診連携をさらに充実したものにしていこうと考えています。
更新:2024.10.07