見えない敵「新型コロナウイルス」との闘い

滋賀県立総合病院

総合内科 呼吸器内科 感染管理室

滋賀県守山市守山

新型コロナウイルスの院内感染対策

2019年末より中国武漢で確認された新型コロナウイルス感染症は、その後あっという間に世界中に広がり、2021年9月現在も、日本を含め世界中で感染者数は増え続けています。ワクチン接種が始まりましたが、まだまだ感染対策を緩めるわけにはいかないようです。

新型コロナウイルスは、咳(せき)やくしゃみ、会話などで口・鼻から飛び出した唾液・鼻水などの飛沫やエアロゾルを、近い距離で直接吸い込んだり、空気中を漂うそれらの成分の一部を吸い込んだり、あるいはそれらが落下したところに触れた手で、口や鼻・目を触ったりすることで感染するといわれています。

特にエアロゾルによる感染が今回の新型コロナウイルスの特徴であり、換気が悪いとエアロゾルが漂う時間・距離が長くなるため、窓やドアを開けたり、空調を調整したり、密にならないなどの対策をとる必要があります。そして一人ひとりの対策として、飛沫やエアロゾルを出さない、吸い込まないことが大事であり、院内ではマスクの着用やアクリル板・ビニールカーテンで遮断する(さえぎる)などの対策をとるとともに、手からの感染を防ぐために手指消毒も徹底して行っています。

次に述べるような外来・病棟での適切な感染対策を実施することにより、通院・入院患者さんが安全かつ安心して医療の提供が受けられるよう、職員一丸となって、病院全体で取り組みを行っています。

外来での新型コロナウイルスの感染対策

外来を受診する多くの方は、病気を患(わずら)いその治療やコントロールを目的に受診します。その中には、新型コロナウイルス感染が疑われるような発熱や咳症状がある方もいますので、診断前に本人の自覚がないまま感染症を広げるリスクが生じます。

そのため、当院では入館時の体温測定などを行い(写真1)、新型コロナウイルス感染症が疑われる方の早期発見を行うとともに、双方の感染リスクを下げるためにマスクの着用を義務化しています。

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写真1 病院入り口での体温測定

また、新型コロナウイルス感染症が疑われる方は、他の患者さんと接触しないようスペースを分けて、安全に診療できるよう努めています(写真2)。

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写真2 新型コロナウイルス感染症が疑われる患者さんの診察室

さらに地域の医療機関と連携した地域外来検査センターや、感染症の疑いのある患者さんの鑑別診断を専門に行うトリアージ外来なども設置し、迅速かつ適切な診断、治療、感染対策を実施しています。

病棟での新型コロナウイルスの感染対策

入院生活を送る病棟は集団生活の場であり、患者さんは病気などで免疫力が低下している状態です。そのため感染対策が破たんすると、感染が拡大する危険性がありますので、患者さんには手指衛生やユニバーサルマスク(*)の徹底などの対策について協力を依頼しています。また外部からの感染を防ぐために、許可を得ている方以外は面会を禁止とし、衣類の交換についても決められた時間でお願いしています。

一方で、新型コロナウイルス感染患者さんの受け入れも行っています。

専用病棟を病室、廊下、スタッフの待機場所など、感染の危険性によって区分し、危険性の高い病室には空調装置を設置するなど環境を整備しています。また、スタッフが区分されたそれぞれの場所で、適切な防護用具の着脱や手指衛生が実施できるよう、教育や指導を繰り返すことで、他病棟への感染や職員の感染を防いでいます。

さらに、新型コロナウイルス感染症での療養で不利益(感染症拡大防止のための隔離や、感染症への偏見などにより、必要な医療やケア〈援助〉が、感染症以外の患者さんと同様に提供されないこと)が生じないよう、各職種や各専門チームが協働することにより、安心して治療に専念できるよう支援しています。

私たちは新型コロナウイルス感染の方とそうでない方、どちらへも必要な医療が提供できる体制が維持できるよう努めています。

*ユニバーサルマスク:コロナ以前の時代には、咳やくしゃみなどの症状のある人にマスク着用が推奨されていたのに対し、コロナ時代には症状の有無にかかわらず、人との距離が保てない環境ではすべての人がマスクを着用する「ユニバーサルマスク(Universal Masking)」という概念が急速に普及しています

新型コロナウイルス感染症の検査体制

当院では、現在、新型コロナウイルスに対する検査として、核酸検出検査(PCR検査、写真3)、抗原検査(定性)を院内で実施しています。

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写真3 PCR検査装置

核酸検出検査では、新型コロナウイルスの遺伝子を特異的に増幅するPCR法を用います。検査にかかる時間はおよそ3時間で、午前中に提出された検体は当日中に結果が出ます。

抗原検査は、新型コロナウイルスに含まれるタンパク質を検出する検査法です。検体採取後約30分で結果が出ますが、ウイルス量が少ない場合は陰性となることもあり注意が必要です。

発熱があり当院を受診した患者さんのPCR検査、濃厚接触者となりPCR検査が必要とされた方の検査を院内で実施しています。また全身麻酔で手術を行う患者さんを対象に、手術前にPCR検査を実施し、術後の病状への悪影響を防ぎ、院内でのクラスター発生の起点とならないよう、感染対策を行っています。

更新:2023.08.24