食道がんはどんな病気ですか?

消化器内科 外科 放射線治療科

どんな症状が起こるの?

食道は飲み込んだ食べ物がのどから胃に運ばれる管のような臓器です(図1)。食道がんは、初期の場合にはほとんど症状がありませんが、飲食時のしみるような感じを自覚するかもしれません。

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図1 食道の構造

がんが進行してくると、飲食時のつまる感じや胸の違和感、痛みを感じるようになってきます。食道が非常に狭くなってしまうと、飲食物が通らなくなってきて、嘔吐(おうと)を繰り返したりもします。そのため、体重が減少してきます。進行の具合やがんの場所によっては、胸や背中の痛み、咳(せき)や声のかすれなどの症状が出ることもあります。

どんな手術をするの?

手術は食道がんに対する標準的な治療です。食道がんはいくつかの部位に分けられ、がんができている部位によって少し手術の方法が異なります。基本的にはがんを含めて食道を切除し、同時にリンパ節とその周囲の組織を切除(リンパ節郭清(せつかくせい))します。食道を切除しますので、食道の代わりとなる飲食物の通り道を作る手術(再建術)を行います。

1.頸部(けいぶ)食道がん

がんが小さい場合には、頸部食道のみを切除します。進行している場合は、のど(咽頭(いんとう)・喉頭(こうとう))や全食道を一緒に切除します。のどを一緒に切除すると、首に呼吸をする気管の入り口(永久気管孔(えいきゅうきかんこう))を作ることになり、声帯がなくなるので声を出せなくなります。この部分のがんは、手術ができても放射線治療を選択することが多いです。

2.胸部食道がん

食道がんが最も起こりやすい部位です。胸部食道全部を切除し、頸部・胸部・腹部のリンパ節郭清を行います。

以前は頸部・胸部・腹部を大きく切開していましたが、最近では胸腔鏡(きょうくうきょう)や腹腔鏡(ふくくうきょう)を使用して小さな傷で手術しています。胃を引き上げて再建しますが、胃が使えない場合には大腸や小腸を用います(図2)。

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図2 胸部食道がんの手術:食道を切除後に胃を持ち上げて再建します

3.腹部食道がん

食道と胃のさかいにあるがんでは、食道の上部を残して食道の下部と胃の上半分を切除する方法があります。食道の再建は残った胃や小腸を用いて行います。

4.バイパス手術

がんで食道が詰まってしまった場合に、がんは切除せずに胃や腸を用いて新しい飲食物の通り道を作る手術です。手術の代わりに食道ステント挿入(*1)を行うこともあります。

*1 食道ステント挿入:食道の中に管状の器具を挿入して狭くなっている食道を広げ、飲食できるようにします

手術以外の治療法はあるの?

がんの進行具合や患者さんの年齢や体力によっては、手術以外の方法を選択することもあります。また、手術ができる状態であっても患者さんの希望によって、放射線治療が選択される場合があります。

1.内視鏡治療

内視鏡を用いて、食道の内側からがんを切除します。がんが食道内側の粘膜にとどまっている場合に行います。体には非常に負担の少ない治療法で、当院では早期発見と内視鏡治療を積極的に行っています。

合併症として、出血や穿孔(せんこう)(食道に穴が開いてしまう)、食道が狭くなってしまうことなどがありますが、多くの場合には内視鏡を用いて対処することができます。切除したがんは顕微鏡で詳しく調べます。その結果、手術や放射線治療を追加することがあります。

2.放射線治療

高エネルギーのX線をがんやその周囲に当てて、がんを治します。週に5日の治療を5〜6週間かけて行います。手術ができない進行したがんの患者さん、高齢やほかの病気のために手術ができない患者さんでも行うことが可能です。治療の効果をよくするために、化学療法(抗がん剤治療)を併用することが多いです(化学放射線療法)。食道や胃など、臓器を切除せずに機能を残すことができるのが特徴です。

特に前述の頸部食道がんでは、気管孔を作る必要がないので声帯の機能を残すことができ、「生活の質」の観点から、手術ができても放射線治療を行うことが多いです。また、当院では強度変調放射線治療という、高度な放射線治療技術を用い、完治率を上げています(写真a、b)。

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写真 切除不能な食道がんが化学放射線療法で完治した症例

3.化学療法

化学療法だけでがんを治すことはできませんが、手術の前後や放射線治療と組み合わせて完治する可能性を高めます。

4.完治が望めない場合の治療

非常に進行した患者さんでは完治が望めない場合もあります。その場合でも、がんによる痛みを和らげたり、狭くなっている食道を広げたりするために、放射線治療を行うことがあります。

また、食事がとれるようにステントを留置したり、それも困難な場合には胃ろう(*2)を作って栄養を送り込んだりすることもあります。化学療法や免疫療法などの薬物治療を行うこともあります。

*2 胃ろう:胃に水分や栄養を送り込むために、お腹(なか)に小さな穴を開けて胃にチューブを通すこと

食道がんの治療は、手術・内視鏡手術・放射線療法・薬物療法など、進行の程度や患者さんの体力、価値観などに応じて方針が決まります。食道がんの治療はどの方法も進歩してきています。治療選択の際には、主治医やその他医療スタッフに納得いくまで説明を受けることをお勧めします。

更新:2022.03.29