肺がんの最新手術について教えてください

呼吸器外科

肺がんって、どんな病気?

肺がんとは、肺や気管支の細胞から発生したがんのことです。ほかの臓器に発生したがんが肺に転移した転移性肺腫瘍(てんいせいはいしゅよう)とは異なります。

肺がんはその進み具合により、Ⅰ〜Ⅳ期に分類され、数字が大きいほど進行したがんとなります。また、肺がんは組織の違いから、小細胞肺がんと非小細胞肺がんに分類されます。非小細胞肺がんはさらに、腺(せん)がん・扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん・大細胞がんに分けられます。小細胞肺がんは進行が早く、手術ができる状態で発見されることはまれで、非小細胞肺がんのうち、比較的早期のⅠ・Ⅱ期および、Ⅲ期の一部が手術療法の対象となります。

肺がん手術時の切除範囲は?

肺は、右は3つ、左は2つの袋(肺葉)から構成されています(図1)。肺がんの標準的な切除範囲は、がんの含まれている肺葉を丸ごと切除する肺葉切除術で、これに付近のリンパ節を摘出するリンパ節郭清(せつかくせい)を追加します。肺葉切除術では肺がんを完全切除できない場合には、片方の肺をすべて摘出する肺全摘術を行うことがあります。

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図1 肺の構造

2cm以下の早期肺がんの一部や、呼吸機能が低くて肺葉切除術に耐えられない場合には、肺葉内の特定の区域を切除する区域切除や、肺葉の一部のみを切除する部分切除などの、切除範囲を縮小した手術を行うことがあります(図2)。一般的に手術の難しさは、区域切除>肺葉切除≫部分切除となります。

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図2 肺がん手術での切除範囲

肺がん手術のアプローチ法は?

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図3 肺がん手術のアプローチ法

開胸手術(図3 左)

かつて主流であった、15〜30cm程度の大きな切開を加え、直視下に行う手術です。創(きず)が大きいため、胸の中に手を入れることができます。現在は、切除に複雑な手術手技を必要とするような進行した肺がんにしか行われません。

出血などの術中アクシデントに対応しやすいという利点がありますが、肋骨(ろっこつ)と肋骨の間をジャッキのような器械(開胸器)を使用して無理矢理広げるため、術後の痛みがかなり強いという欠点があります。

胸腔鏡下手術(図3 中央)

現在主流となっている、小さな切開創を作成し、ビデオカメラ(胸腔鏡(きょうくうきょう))での観察下に行う手術です。3〜4か所の切開創を作成する多孔式が多いです。3〜5cm程度の切開創が1か所、そのほかに1cm程度の創(ポート孔)が数か所作成されます。創が小さいため、胸の中に手は入りません。最近では、1か所のみの切開創で手術を行う、単孔式の胸腔鏡手術も広まりつつあります。

開胸手術と比較し、手術創が小さく開胸器を使用しないため、手術後の痛みが軽く回復も早いという利点がありますが、出血時の対応は開胸手術より難しくなります。開胸手術と同等の質・安全性を確保するためには修練が必要です。

ロボット支援下手術(図3 右)

2018年4月から肺がん・縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)に対してロボット支援下手術が保険適用となりました。ロボット支援下手術は胸腔鏡手術の発展型で、手術支援ロボット(ダビンチ)を術者が操作して手術を行います。ダビンチのカメラとロボットアーム用に4か所の創が必要で、これに助手用の創が加わりますので、4〜6か所の創が必要です。

ダビンチは手振れ補正機能や立体視機能、ズーム機能などにより、非常に精密な操作が可能ですが、触覚が全くないという弱点があります。触覚がないのを視覚で補うことになるため、ダビンチでの安全性を確保するには、胸腔鏡手術の経験を十分積んでいる必要があります。

当院では2002年より、肺がんに対する多孔式胸腔鏡下肺葉切除/区域切除を開始しました。当院の多孔式手術は、3〜5cm程度の小切開創1か所と、1cm程度のポート孔2か所の3ポート方式です。2018年までは多孔式手術のみを行っていましたが、2019年6月より、3〜5cm程度の小切開創1か所のみで行う単孔式手術も開始しました。2019年9月からは、ダビンチXiによるロボット支援下肺葉切除も導入しています。

現在では、全手術の98%が胸腔鏡下手術もしくはロボット支援下手術となっています。また、2cm以下の早期肺がんの一部や低肺機能の場合には区域切除を行うようにしており、当院ではこの数年は肺葉切除と区域切除の比率は3:1程度となっています。当院における胸腔鏡下もしくはロボット支援下の肺葉切除/区域切除の累積症例数は約1,400例で、豊富な経験を持っています。

更新:2022.09.16