前立腺がんはどんな病気? どんな治療法がありますか?

泌尿器科 放射線治療科

前立腺がんの特徴を教えて

前立腺は男性のみにある臓器で、精液の一部となる前立腺液を分泌する働きがあります。前立腺液には、PSAというタンパク質が含まれており、精子が働きやすい環境をつくる役割を担っています。

最近、前立腺がんと診断される患者さんの数は国内では増加しており、男性で最も多いがんの1つです。前立腺がんは主に60歳くらいから増加し、80歳以上の高齢者では、日常生活であまり困らないような前立腺がんのある患者さんもたくさんいます。

前立腺がんは、進行がゆっくりで初期には無症状のことが多いのが特徴です。尿が出にくい、尿の回数が多い、尿が残った感じがするなどの症状が出ることがありますが、これは前立腺肥大症でも起こるので、前立腺がんに特有の症状とはいえません。

前立腺がんの早期発見には、無症状でも積極的に検査を受けることが重要です。「PSA検査」という血液検査で、前立腺がんの可能性のある患者さんは絞られます。これは、がんや炎症などにより血液中に漏れ出したPSAの値を調べる検査です。前立腺がんが強く疑われる患者さんは専門医を受診して、より詳しい検査を受けることをお勧めします。

PSA検査の結果が著しく高い数値のときは、進行した前立腺がんを強く考えますが、この場合はリンパ節や骨に高い頻度(ひんど)で転移している可能性があります。

前立腺がんは手術や放射線治療で治すことができるの?

前立腺がんには「手術療法」「放射線療法」「内分泌療法(ホルモン療法)」など、さまざまな治療法があります。これらの治療を単独あるいは組み合わせて行います。初期のがんと診断されていても、治療を開始せずに経過をみることもありますが、がんの広がりや悪性度の強さ、患者さんの全身状態、年齢などを考えて、最適な治療法の選択に努めています。治療法のうち、前立腺がんを完全に治す(根治(こんち))目的で行われるのは手術と放射線治療です。

前立腺がんの手術では、前立腺と精嚢(せいのう)を切除し、がんを確実に取り除いて膀胱(ぼうこう)と尿道をつなぎ合わせる前立腺全摘除術が広く行われています(図1)。この手術には開腹手術、腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)、ロボット支援手術があります。

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図1 前立腺全摘除術

当院では、最新型の手術用ロボット「ダビンチ」を使用した手術を行っています。多くの患者さんで手術後しばらくの間は尿失禁がみられますが、次第に回復します。ロボット支援手術は小さな創(きず)で出血が少なく、機能温存ができ、回復が早いなどの利点があります。

放射線治療も前立腺がんを根治できる可能性があり、多くの患者さんは内分泌療法と組み合わせて治療しています。当院では、最新の放射線治療機器を用いてIMRT(強度変調放射線治療)を行っています。がんに放射線を集中させ、周囲の正常組織への放射線の量を少なくすることで、副作用を抑えることができます(図2)。

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図2 前立腺放射線治療

放射線治療の特徴として、がんを切らずに治療できること、高齢者や体力のない患者さんの体への負担が少ないこと、通院で治療が可能なことがあげられます。

手術と放射線治療のそれぞれの良い面を患者さんに説明の上、相談して治療方針を決めています。

前立腺がんの薬物療法はどんな場合に行うの?

前立腺がんのがん細胞は、精巣および副腎(ふくじん)から分泌される男性ホルモンの影響を受けて増えていきます。

男性ホルモンの分泌やその作用を抑えて、がん細胞の増殖を抑制する治療が内分泌療法(ホルモン療法)で、完全に治すことを目的にしている治療法ではありません。前立腺がんが非常に進行していて手術や放射線での根治治療ができない場合や、高齢者などに、がんの進行を抑えることを目標に治療を行っています。

診断時にがんがあまり進行していない場合は、数年以上内分泌療法を続けることで効果があり、がんの進行もあまり目立たず、元気に過ごされている患者さんもたくさんいます。

内分泌療法では、男性ホルモンを抑える薬を注射や内服で投与する場合があります。しかし長期間治療を続けていると、徐々に効果が弱まり、症状が再び悪化することがあります。

内分泌療法で進行を抑えきれなくなった進行前立腺がんの患者さんには、副作用に注意しながら、新しいホルモン剤や抗がん剤などの薬物療法を積極的に行っています。

更新:2022.03.29