がん治療による皮膚炎はどうしたらいいですか?

滋賀県立総合病院

皮膚科 外来化学療法センター

滋賀県守山市守山

がん治療による皮膚炎とは?

薬剤により生じた皮膚の発疹は、薬疹と呼ばれます。従来の薬疹は、アレルギー性のものが多く、その場合はたいてい原因薬剤を中止していました。一方、近年はさまざまな機序による抗悪性腫瘍薬(こうあくせいしゅようやく)(がん細胞を攻撃する従来の薬だけでなく、特定の分子に作用してがん細胞を抑制したり、がん細胞と闘う免疫細胞を活性化するような薬があります)が開発されるようになり、アレルギーとは無関係に薬剤の性質に応じた特徴的な皮膚病変を生じます。

特に多いのが分子標的薬(ぶんしひょうてきやく)という種類の抗悪性腫瘍薬による皮膚障害ですので、これに絞って解説したいと思います。ざそう様皮疹(ようひしん)(ニキビのような発疹ができる、写真)、爪囲炎(そういえん)(爪の周りが赤く腫れる)、手足症候群(手掌足底(しゅしょうそくてい)が赤くなり、水ぶくれもできてくる)などが有名です。従来の薬疹と異なり、これらは非常に高率に出現します。なぜなら、分子標的薬がターゲットとする分子は、がん細胞だけでなく正常な皮膚組織内にも存在するため、薬剤投与により皮膚もダメージを受けてしまうからです。

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写真 胸部に生じたざそう様皮疹

どう対処したらよいですか?

原則として原因薬剤の中止ではなく、皮膚症状を緩和・コントロールしながら、できる限り治療を継続することをめざします。これは前述のように、皮膚障害もまた分子標的薬本来の作用なので、皮膚に症状が出てきたときは抗腫瘍効果も現れていると考えられるからです。ただし、皮膚症状が強ければ、休薬が必要となることはあります。

治療としては、保湿剤やステロイド外用薬のほか、抗生物質の内服なども使用されます。ゆとりのある靴にしたり、家事や歩行を最低限にするなど、手足の皮膚障害部にかかる外力をなるべく避け、負担を減らした生活習慣を心がけるとよいでしょう。

皮膚障害が出ても自己判断での休薬などはせずに、まずは主治医に相談するようにしましょう。また、必要に応じて皮膚科への受診も相談してください。皮膚の乾燥には、まずは市販の保湿クリーム(低刺激性のもの)を使用してみるのもいいと思います。

更新:2023.08.26