ちょくちょうがん

直腸がん

直腸がん大腸がんに含まれます。

概要

大腸にはさまざまな部位があり、入り口から出口に向かって盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸S状部、上部直腸、下部直腸、肛門管で構成されています。大腸がんは大腸の粘膜に発生するがんで、日本人は特にS状結腸と直腸に発生しやすいといわれ、できる部位によって結腸がんと直腸がんに分けられます。正常な粘膜に直接がんが発生するものと、良性のポリープががん化するものがあります。

大腸の粘膜に発生したがんは、次第に大腸の壁に深く入り込み、がん細胞が大腸の壁の外まで広がって腹腔内に散らばったり、大腸の壁の中のリンパ液や血液の流れに乗って、肺や肝臓など別の臓器に転移したりすることがあります。

大腸がんは、早期に発見できれば完全に治ることが期待でき、治療後の5年生存率も高いがんです。特に40歳を過ぎると男女ともに発症率が高まるため、年に1回の検診が望ましいといえます。

図
図:大腸

症状

大腸がんの初期には、自覚症状がほとんどないことも少なくありません。進行していくと、血便や下血、下痢や便秘を繰り返す、便が細くなる、便が残る感じがする、体重の減少や貧血などの症状が見られます。がんが大きくなるとおなかにしこりを感じたり、大腸が狭くなって便が出にくくなることや、腸閉塞を引き起こして便やおならが出なくなり、腹痛や吐き気などが現れることもあります。

また、大腸がんは発生する部位によって症状の現れ方がやや異なります。盲腸や上行結腸など右側の大腸のがんだと症状は出にくく、発見が遅れることもあるので注意が必要です。一方、S状結腸や直腸など左側の大腸にがんが生じた場合は、血便など便通の異常が見られることが多く、発見につながりやすいという特徴があります。

原因

大腸がんの発症は、生活習慣とのかかわりが深いと考えられています。特に食生活との関連性が高く、動物性脂肪が多かったり、食物繊維の少なかったりと偏った食事、過度な飲酒、野菜や果物の摂取不足は大腸がんの発症リスクを高めるものとして注意が必要です。ほかに喫煙や運動不足、肥満などが原因として挙げられ、生活習慣の欧米化が影響を与えているとも考えられています。

また、遺伝との関連性も指摘されています。家族に大腸がんを患った人がいる場合はリスクが高まり、大腸に無数のポリープが発生する家族性大腸腺腫症という遺伝性の病気は、治療せずに放置していると、ほぼ100%がんになるといわれています。

検査・診断

大腸がんの検査には、便に血が混じっていないかどうかを調べる便潜血検査から、陽性になった場合に行う大腸内視鏡検査、がんと判明したときに行うCT検査やMRI検査など、段階的にいくつかの検査があります。

便潜血検査

便の中に血液が含まれているかどうかを調べます。検診などで広く行われる方法ですが、(じ)などの病気でも便に血液が混じることがあるほか、早期の大腸がんでは陽性にならないこともあるため安易な判断は禁物です。

大腸内視鏡検査

肛門から内視鏡(先端に超小型カメラのついた太さ約1cmの管)を挿入して大腸の内部を観察する検査です。異常が見つかれば、病変組織の一部を採取して顕微鏡で観察する生検を行い、がん細胞の有無を確認して確定診断につなげます。小さなカプセル型の内視鏡を飲み込むカプセル内視鏡検査もあります。

注腸造影検査

肛門から造影剤を大腸に注入して、大腸の変形など形態を調べます。がんの確定診断を目的にしたものではなく、主に手術前に腸の形やがんの広がりを見るために行います。

CT検査、MRI検査

がんと診断された際に、リンパ節やほかの臓器への転移がないかを調べるために行います。

腫瘍マーカー検査

がんから産生される物質の上昇度合いを調べる血液検査で、特に再発の診断に有効です。

治療

大腸がんの治療は、がんの進行度合いや患者さんの全身状態によって方法が異なります。早期の発見で転移の可能性が低い場合は、内視鏡による切除を行うのが一般的で、がんが大腸の粘膜の深い部分を越えて広がっている場合には、開腹手術や腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)を行います。

内視鏡切除

がんが大腸の粘膜から粘膜下層の浅いところでとどまっているようなら、内視鏡による切除が可能です。肛門から内視鏡を挿入し、高周波電流を使ってがんを切り取る方法や、粘膜を持ち上げて剥がし取る方法があります。

外科手術

大腸がんが進行して根が深い場合や、周囲の臓器にがんが広がっているときには手術による治療となります。大腸がんの手術は、おなかに小さな孔をいくつか開けて手術器具を入れ、モニター画像を見ながら行う腹腔鏡下手術が主流となっています。

抗がん剤治療・放射線治療

がんの再発を予防するために、抗がん剤による補助化学療法を行うほか、手術が不可能なほど進行しているケースでは、症状を軽減するために抗がん剤治療と放射線治療を組み合わせた治療を行うこともあります。

更新:2022.08.22

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