直腸がんの最新治療とは? 人工肛門のことを教えて

外科 消化器内科

直腸がんって、どんな病気?

直腸は肛門からおよそ15〜20cmの腸管で、肛門と協調して便を一時的に溜(た)めておく働きと排便のための重要な機能を担います(図)。

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図 直腸を前からみた断面図
直腸は直腸S状部、上部直腸、下部直腸に分けられ、肛門管へ続きます。肛門機能を残すためには、肛門を締める括約筋の温存が必要です

直腸にがんができると、多くの場合は排便機能に障害を生じます。直腸がんに一番多い症状は血便です。さらに腫瘍(しゅよう)が大きくなると、便秘や下痢などの便通異常や腹痛などが現れます。また、進行すると肺や肝臓、リンパ節などに転移します。しかし、早期のがんではほとんどが無症状であるため、大腸がん検診(便潜血検査)を受けることが早期発見に重要です。

直腸がんは手術だけで治るの?

直腸がんの治療の中心は切除です。大腸カメラによる内視鏡治療の適応とならない場合は、手術が必要になります。

直腸は狭い骨盤の中で、周囲を重要な臓器(膀胱(ぼうこう)、前立腺、子宮、膣(ちつ)など)や自律神経に囲まれており、手術の難易度が高いとされています。近年では、お腹(なか)に小さな孔(あな)をあけて手術をする腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)の割合が増えていますが、さらに精密な手術が可能なロボット支援手術が2018年に保険適用となりました。当院でも積極的に行っており、高度な技術を必要とする直腸がんの手術において、根治(こんち)性(*1)と肛門温存の両立と、排尿・排便などの後遺症の減少が期待されています(写真)。

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写真 当院でのロボット支援直腸がん手術(ダビンチ手術)の様子
術者はコックピットから遠隔操作でロボットを操作します。助手と看護師は患者さんの脇について、手術をサポートします

肛門の近くに生じた進行直腸がんは、手術の難易度が高く、術後の再発率も高くなります。最近では、できるだけ再発を防ぎ肛門を温存できるように、手術と放射線治療・抗がん剤治療などを組み合わせた集学的治療が行われるようになりました。

直腸がんでは手術前に放射線治療を加えることにより、局所の再発リスクを低下させることが分かっています。放射線治療の効果を高めるために、通常は抗がん剤が同時に投与されます(化学放射線療法)。肛門に近い大きな腫瘍やリンパ節転移が疑われる進行がんに対して、肛門温存をめざし、がんの取り残しを防いで手術の確実性を高めるために、手術前に化学放射線療法を行っています。

抗がん剤治療は、肺・肝臓・リンパ節などの他臓器に転移している場合に実施します。また、手術前にがんの広がりを小さくしたり、手術後の再発を抑えたりする目的で行います。大腸がんの抗がん剤治療は、通常は外来通院で行うことができます。

*1 根治:完全に治すこと。治癒

どんな場合に人工肛門が必要?

肛門から腫瘍までの距離がおおよそ3cm以上あれば、がんを含む直腸(がんの口側10cm、肛門側2〜3cm)を切除し、残った大腸と直腸・肛門を縫い合わせて(吻合(ふんごう)/縫合)、肛門を残すことができます。手術直後の合併症を防ぐために一時的に人工肛門(ストーマ)をつくる場合もあります。一方、がんが肛門に近く、肛門を締める筋肉(外肛門括約筋(がいこうもんかつやくきん))へがんが浸潤(しんじゅん)(*2)している場合は(図)、肛門を含めて直腸を切除しなければならず、永久人工肛門が必要となります。

*2 浸潤:がんがまわりに広がっていくこと

直腸がん手術後の生活は?

退院後の生活で運動や食事に特別な制限はありませんが、手術後は排便の変化や腸閉塞(ちょうへいそく)に注意する必要があります。暴飲暴食を避け、刺激の強いもの・消化の悪いものを一度に大量に摂取するのは控えてもらいます。

がんの進行度(病期・ステージ)にもよりますが、手術でがんが取りきれたとしても、後に肺・肝臓・リンパ節などに再発・転移をきたすことがあるため、術後5年間は定期的に血液検査・CT検査・大腸内視鏡検査などを受けることが必要です。

当院では、ロボット支援手術や集学的治療など最新の技術を取り入れ、できるだけ肛門を温存し、再発と後遺症を少なくする治療を心がけています。また人工肛門(ストーマ)が必要となっても、手術前と同じように社会生活を送ることができるように、さまざまなサポートを行っています。

更新:2022.09.16