がんの早期発見

済生会吹田病院

健康管理センター

大阪府吹田市川園町

がんの早期発見には

わが国のがん死亡者数は2015年では37万人(男性22万人、女性15万人)で、死亡原因の第1位を占めています(図1)。

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図1 わが国における粗死亡率の推移(主な死因別)

部位別には、男性では1位肺がん、2位胃がん、3位大腸がん、女性では1位大腸がん、2位肺がん、3位膵臓(すいぞう)がんです(図2)。

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図2 主な部位別がん死亡数(2016年)

がんは恐ろしい病気ですが診断と治療の進歩により、その多くは早期発見が可能となり、早期治療で完治するものも多くなっています。

では、がんを早期発見するにはどうしたらよいでしょうか。

まず、何らかの自覚症状がある人は医療機関を受診し、必要な検査を受けましょう。なんでも相談できる「かかりつけ医」をもつことも大切です。

次に自覚症状がない人は、がん検診などを受けましょう。

がんは私たちの体の中に、知らないうちに発生し徐々に増殖します。発生した初期は全く自覚症状がありません。ある一定の大きさになって初めて自覚症状が現れます。したがって、がんを早期発見して早期治療に結びつけるためには、自覚症状がないうちに検診などを受ける必要があります。

がん検診について

わが国のがん検診は、対策型検診と任意型検診に分けられます。

対策型検診

対策型検診は、ある集団全体の死亡率を下げるために行われるもので、市区町村が行っている集団検診(例えば住民検診や職域検診)が対策型検診にあたります。公共的な予防対策として行われ、公的な補助金が出るので自己負担は少額です。通常、科学的な方法で死亡率の減少効果が証明されている検診方法が選ばれます。厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」に定められた検診は、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸けいがんです(図3)。

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図3 厚生労働省が定めたがん検診の内容
厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」より作図

任意型検診

任意型検診は、個人が自分の死亡リスクを下げるために受けるもので、人間ドックなどがこれにあたります。基本的に自己負担のため、集団検診に比べて負担金額は多くなります。検診内容の種類や料金は、ドック施設・医療機関によって異なります。集団検診に比べて、希望に応じてさまざまな検査を受けることが可能です。

がん検診は一次検診、精密検査(二次検診)、がんの確定診断、治療という流れで進んでいきます(図4)。

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図4 がん検診の流れ

一次検診は「スクリーニング(ふるい分け)」ともいいます。健康な人と、少しでもがんの可能性が疑われる人を検査でふるい分けます。この段階で陽性になっても、がんがあると確定したわけではありません。

一次検診で陽性となった人は、さらに詳しい検査、精密検査(二次検診)に進みます。精密検査でがんと診断(確定診断)された場合は、必要に応じて医療機関での治療へ進みます。

日本対がん協会の2014年度がん検診の追跡調査では、大腸がん検診便潜血検査)を1万人受診すると、一次検診で異常ありと判定される人は636人で、そのうち精密検査(大腸内視鏡検査等)を受ける人は444人、実際に大腸がんと診断される人は18人と報告されています。

つまり、一次検診は大きくひろいあげる検査なので異常があると判定されても、がんであるとは限らないのです。一次検診で異常ありとされて心配しすぎることはありません。一方、一次検診で異常ありとされても、面倒なためか精密検査を受けない方もいますが、このような方の中に一定の割合でがんが潜んでいます。精密検査は必ず受けるようにしましょう。

また、1回の検診で異常が認められなくても、将来、がんができないというわけではありません。しかるべき間隔で繰り返し検診を受けるようにしてください。

更新:2024.01.25