さまざまな放射線治療でがんに立ち向かう!

済生会吹田病院

放射線科

大阪府吹田市川園町

放射線治療って?

放射線治療は手術療法、化学療法(薬物療法)と並んでがん治療の3本柱といわれています。

病気の状態により、①腫瘍(しゅよう)細胞の根絶を目的とする根治(こんち)照射、②痛みや神経圧迫など、症状の軽減を目的とする緩和照射、③病気の再発を予防する予防照射などがあります。場合によっては手術療法、化学療法と組み合わせて治療を行うこともあります。

放射線治療の利点としては、①治療中の痛みがない、②手術や化学療法に比べて侵襲(しんしゅう)(体への負担)が少ない、③機能や形態を温存できることが多い、などが挙げられます。近年は高齢のがん患者さんも多く、手術や抗がん剤治療が体力的に難しい方でも、放射線治療なら受けられるという場合もあります。

放射線治療には体の外から放射線を当てる「外部照射」と、中から当てる「内部照射」とがあります。当院では主に「外部照射」と、内部照射のうちの「内用療法」を行っています。さらに外部照射の中には、「通常照射」や「強度変調放射線治療(いわゆるIMRT)」、「定位放射線治療」といったさまざまな方法があります。ゆっくり、じっくりと治療するタイプや、手術に近い、短期間でピンポイントに治療するタイプなど、がんの種類や程度、患者さんの状態により治療方法を選択します。当院では高性能放射線治療機器を導入しており(図1)、どのタイプの治療にも対応することができます。また画像誘導放射線治療(IGRT)システムを有していることから、正確でより侵襲の少ない治療を行うことが可能です。

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図1 高性能放射線治療機器

定位放射線治療

放射線治療の中でも定位放射線治療は、たくさんの方向からがんの病巣に集中して放射線を当てることにより、短期間で、より高線量を、しかも周囲への影響を少なく当てることのできる治療方法です。

主に頭(頭頸部(とうけいぶ))の腫瘍と、5㎝以下の肺がん、肝臓がんに保険適用があります。1回で高線量を照射する定位放射線手術(SRS)と、数回に分けて照射する定位放射線治療(SRT)があります。ほかの病気がある患者さんや体力的に手術が難しい患者さん、あるいは手術は受けたくないといった患者さんをこの方法で治療しています。また肝臓がんに関しては、ラジオ波やマイクロ波など体の外から針を刺して行う治療と、インターベンション(血管内治療)による化学塞栓療法(かがくそくせんりょうほう)、定位放射線治療とを組み合わせて、まさに、あの手この手で最善のがん治療を行っています。

内用療法

放射線を体の中から当てる「内部照射」のうち、飲み薬や注射により放射線治療を行う方法を内用療法といいます。以前から甲状腺がんに対しては内用療法が行われてきましたが、比較的最近になって、悪性リンパ腫や転移性骨腫瘍にもこの内用療法が行えるようになってきました。

画像診断の項(「がんを見つける――画像診断」)で述べましたが、核医学検査では放射性薬剤を投与することでがんの転移などを調べることができます。骨へのがんの転移を調べる検査(骨シンチ)では、注射した放射性薬剤が転移した部分に集まり、黒い点となって現れます(図2)。この性質を利用して、治療効果を発揮する放射性薬剤を注射することにより、転移の部分に薬剤が集まり、体の中から骨転移を治療することができるようになりました。転移による痛みに関してはどんながんでも、またホルモン治療が効かなくなった前立腺の転移に関しては痛みのあるなしにかかわらず適応があります。

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図2 骨シンチ

このように、放射線治療はほかの治療法と並んで、さまざまな形でがん治療をサポートしています。初めて放射線治療を受ける患者さんは、不安でいっぱいのことと思います。当科治療室の入り口は、まるでサロンか画廊のように柔らかく温かい雰囲気で、治療室内では患者さんにあわせた音楽が流れ、不安を少しでも解消できるように努めています。

図
図3 放射線治療室の入り口

私たちスタッフは毎日、患者さんと共に治療に向きあい、明るく、やさしく見守っています。

更新:2022.03.08