泌尿器がんー精巣がんの診断と治療
済生会吹田病院
泌尿器科
大阪府吹田市川園町
精巣がんの特徴
精巣がんは前立腺がん同様、男性特有のがんです。人口10万人当たり2人程度で、全体から見れば非常にまれながんですが、”20~30歳代”の男性の中では最も罹患数の多いがんです。ほかのがんと異なり、”転移があっても80~90%で治癒”が見込めることが大きな特徴です(図)。症状としては、陰嚢(いんのう)内容(精巣)の無痛性腫大(しゅだい)です。
精巣がんの診断
陰嚢内容の腫脹(しゅちょう)などで受診されると、エコーやMRIによる検査を行い、精巣腫瘍(しゅよう)が疑われた場合は、可能な限り早期に精巣摘除を行うことが求められます。待機手術とすると、その間に急激に転移が進行する場合があるためです。
精巣がんの治療
1.高位精巣摘除
診断と治療を兼ねて精巣摘除を可及的速やかに行います。転移がない場合はいったん治療終了となり、経過観察となります。
2.化学療法
転移を認める場合は、抗がん剤による化学療法を行います。ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチンの3剤併用療法(BEP療法)を行うことが一般的です。減量や延期をせずに規定通りに行えば非常に効果の高い治療です。少ししんどい治療ですが、適切な支持療法(副作用対策)を行い、規定通りに実施することが大切です。
3.後腹膜リンパ節郭清
転移部位として最も多いのが、腹部の大血管周囲にある後腹膜リンパ節です。化学療法によって完全完解(画像上腫瘍がなくなる)に至らない場合は、残存腫瘍の切除が必要となります。通常の方法で手術をすると、射精神経を切断するため、手術後通常の射精ができなくなります。そこで、当院では射精神経温存後腹膜リンパ節郭清術を積極的に行っています。
近年では、さらに低侵襲(ていしんしゅう)(体への負担が少ない)で機能温存もめざした、”腹腔鏡下(ふくくうきょうか)後腹膜リンパ節郭清術(かくせいじゅつ)”を先進医療として実施しています。この技術は、全国で当院を含めて8施設のみが施行可能な手術法です。
ピアサポート
精巣がんはまれな疾患で、若い男性に多いという特徴があるため、情報を得られる機会が少なく、また、同じ病気で治療している方に巡り合う機会もほとんどないため、患者さんや家族は非常に不安を覚えられます。
当院では、精巣腫瘍患者の会(http://j-tag.jp/)の方にお越しいただき、精巣がんを治療中の方や治療体験者・家族などが、さまざまな情報交換をしていただける場を設けています。
更新:2024.10.07