胆嚢結石による胆嚢炎と胆嚢がんの外科治療

済生会吹田病院

肝臓・胆のう・膵臓外科

大阪府吹田市川園町

日本人の10人に1人は持っている胆石

一般人口の約10%が胆石を保有していると推定されています。胆石ができる原因は、食事の西洋化に伴うコレステロール過剰摂取、肥満、細菌感染、溶血性貧血、胃切除後、肝硬変(かんこうへん)などです。胆嚢結石などにより胆嚢に炎症を生じ、発熱、激しい腹痛、右上腹部にしこりを触れる場合があり、これを胆嚢炎といいます。治療は原則として「急性胆嚢炎診療ガイドライン」に基づいて手術加療、保存的加療(抗生剤投与など)を行っていますが、それぞれ患者さんの状態に応じて最も適切な治療を選択しています。

胆嚢結石の手術の主流となっているのは腹腔鏡下(ふくくうきょうか)胆嚢摘出術です。通常お腹(なか)に4か所の小さな穴を開け、その穴からカメラや手術鉗子(かんし)(マジックハンドのような器具)を挿入し、テレビモニターを見ながら胆嚢を取り出します。この術式のメリットは、これまでの開腹手術に比べ傷が小さく、手術後の痛みはかなり緩和され、回復が早いこと(通常、術後3~4日で退院)です。ただし、上腹部手術などの既往により癒着がひどい場合や、胆嚢の状態によっては腹腔鏡下手術が行えないことがあります。また、手術中の状況で開腹術に変更する場合もあります。

胆嚢結石による胆嚢がんの危険性については、どの程度関連があるかは完全に解明されたわけではありませんが、胆石症で手術をした場合の約0.5~1%に胆嚢がんの合併を認めます。

胆石症は良性疾患とはいえ、重症化すると命にかかわることもあります。まずは胆石症にならないために、暴飲暴食をさけ、食物繊維を十分にとり、脂っこい食べ物を控えるなどの規則正しい食生活を送るようにしましょう。上腹部に違和感など症状を認める方は一度検査をお勧めします。胆石症と診断された方で腹痛・発熱などを認めた場合には、速やかに医療機関を受診し、治療を受けるようにしてください。

胆嚢がんは早期発見が大切

胆嚢がんはその解剖学的特徴から、病気の進み具合により予後が大きく異なります。早期がんであれば、ほぼ手術切除により治癒可能ですが、進行がんになると非常に予後不良となります。外科的な治療も進行度に合わせた対応が必要となります。

そのためにまずは、CTや超音波内視鏡検査(EUS)などの検査を用いて、正確に病期診断を行います。その病期に応じて①全層胆嚢摘出、②肝床部切除±肝外胆管切除+リンパ節郭清(かくせい)、③右肝切除(胆嚢だけでなく肝臓の広い範囲を含めて切除する)などの術式が選択されます。国内で手術が可能であった症例は胆嚢がん全体の68.7%で、その5年生存率は41.6%と報告されています。当科の治療成績を「図」に示します。リンパ節転移のない症例の経過は極めて良好で、早期発見と早期治療が大切です。

グラフ
図 当科の胆嚢がんのリンパ節転移の有無別の生存率(2008~2018年)

更新:2024.10.17