褥瘡(床ずれ)の基礎知識
済生会吹田病院
皮膚科
大阪府吹田市川園町
介護の経験があるなしにかかわらず、「床ずれ」という言葉を知っている方は多いと思います。自分では体位変換の難しい、いわゆる「寝たきり」の方に発症しやすいため、超高齢社会を迎えたわが国では、患者数が増加しており、正しい知識をもって対応していくことが求められます。当院では、「褥瘡(じょくそう)(=床ずれ)対策チーム」をいち早く立ち上げ、その予防と治療に力を尽くしています。
褥瘡(床ずれ)はどうしてできる?
私たちは通常、眠っている間は無意識のうちに寝返りを打っています。また、椅子に長時間座っているときは、お尻を浮かすなどして、同じ部位に長時間の圧迫が加わらないようにしています。このような動作を体位変換と呼びますが、自分で体位変換ができない方は、皮膚の一定の部位に持続的な圧迫が加わることになり、同部位への血の流れが妨げられることで、皮膚や皮下組織が障害されます。これによって生じる現象が褥瘡です。その要因をまとめると、次のようになります。
全身的な要因
- 栄養状態
- 低栄養による浮腫(ふしゅ)や皮膚の弾力性の低下、皮膚組織の耐久性の低下など
- 体格
- やせて皮下脂肪が減少し骨突起が生じる
- 加齢と基礎疾患
- 老化に伴う生体防御機能の低下、骨粗(こつそ)しょう症(しょう)や心不全、血管の病変、意識障害や認知症などの精神活動性の低下など
- 薬剤内服
- 抗がん剤、副腎皮質ホルモン剤、免疫抑制剤内服などによる易感染性(いかんせんせい)、創傷治癒遅延など
社会的な要因
- 生活支援の不足
- 家族で抱え込んでしまう、相談する場や情報の不足
- ケアの人材不足
- 介護者も高齢化しているため
- 経済力の不足
- 処置に必要な材料・物品費、ベッド、マットなどの費用が負担できない
局所的な要因
- 加齢による皮膚の変化
- 皮脂の減少によるドライスキン、皮膚が薄くなる、皮膚のバリア機能の低下など
- 摩擦やずれ
- ベッドアップ、体位交換時、衣類・シーツなどでの皮膚の摩擦やずれ
- 失禁や多湿環境
- 尿失禁・便失禁による蒸れ、発汗による蒸れ
- 局所の皮膚疾患
- 湿疹や皮膚感染症など
褥瘡の発生しやすい部位
体重がかかる部位が圧迫されることから、骨が突出した部位に発生しやすくなります。中でも、仙骨部の発生が多く、褥瘡の半数近くを占めます。次いで、かかと、腸骨が多いですが、体位によっては思いがけない部位に発生することもあり、注意が必要です。
更新:2022.03.28