健康診断、きちんと受けていますか?~がん、脳・心臓、女性のための健診~

札幌孝仁会記念病院

高度健診センター

北海道札幌市西区宮の沢

1.高度健診センターの活動

高度健診センターが大切にしていること

「健やかで満ち足りた生活を送っていただけるよう健康を守り、育む健診施設を目指します」の理念のもと、次の5つの基本方針を軸に日々受診する皆さん一人ひとりに丁寧に対応できるように努めています。

  • 疾病の早期発見と予防に努めます。
  • 丁寧でわかりやすい説明を心がけ皆様とのコミュニケーションを大切にいたします。
  • フォローアップを大切にし、健康増進を支援いたします。
  • よりよい健診を提供できるように常に研鑽を積み努力いたします。
  • 受診される皆様の権利を尊重し、個人情報保護に努めます。

また、日本人間ドック学会「人間ドック健診施設機能評価」の審査を2015年に受け認定施設となりました。「理念達成に向けた組織運営」「受診者中心の良質な健診の実践」「継続的な質改善の取り組み」という3領域の審査項目の基準を満たし、現在も認定施設の資格を継続し、さらに健診実施施設としての質の保障と向上へ向け努力しています。

高度な健診内容と地域への還元

当センターには、法定健診といわれる年に1回は受診が必要な定期健康診断のほかに、人間ドックを含む13の健診コース(ドック)があります。また、三大疾病(脳卒中・心臓病・がん)の早期発見をめざし、高度な医療機器を使用した検査にも力を入れています。ほぼ全身を1日で調べる充実したドックや、肝臓(かんぞう)・胆嚢(たんのう)・膵臓(すいぞう)や脳など、気になる臓器に焦点を当て調べることができるドックもあります。受診者の要望やこれまでの健診結果をもとに、各コースや検査を組み合わせたオリジナル健診の提案なども行っています。

また、札幌市西区の地域住民のがん発見のお手伝いができるように、日曜など休日の乳がん検診の実施やPET(ペット)-CT検査が割引料金で受診できる企画なども行っています。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデミック前の2019年までは毎年「健康フェスタ」を開催し、2019年までは毎年「健康フェスタ」を開催し、医師の講演会や医療機器を使用した測定コーナー、健康相談コーナーなどを設け、地域の方たちに健康について興味を持ってもらえるような取り組みなども行ってきました。測定コーナーで一番人気があるのは「頸動脈(けいどうみゃく)エコー」「内臓脂肪」でした。

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写真 高度健診センターのスタッフ(センター長は前列中央)

2.がん検診

がんと診断される確率は2人に1人

がんを部位別に見たとき、上位3位に入っている代表的なものに「肺がん」「胃がん」「大腸がん」があります。これらのがんは、胸部(きょうぶ)X線、胃カメラまたは胃バリウム、便の潜血検査を含んだ健診コースで調べることができます。当センターでは、一般的な健診に近い「パブリックドック」というコースから、さらにがんを詳しく調べる「PETがん充実ドック」(図1)というコースまで用意しています。

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図1 充実ドック

がんは1981年から日本人の死因第1位となり、現在に至ります。毎年の健康診断と一緒にほぼ全身のがんを1日で調べることができるコース(ドック)を2022年から開始しました。早期に発見し適切な治療へ結びつけ、がんで亡くなる人の減少に向けて取り組んでいます。

さらに詳しく調べたいときの検査とは

さまざまな検査を組み合わせた各種ドックやコースがあります。また、個人の要望に合わせてオリジナルに組み合わせた健診も行っています。どの健診(検査)を受けるとよいかわからないなどお困りの場合は、電話やホームページから気軽にお問い合わせください。主な検査については以下の内容となります。

腫瘍(しゅよう)マーカー:
がんマーカーと呼ばれることもあります。採血で調べます。
腹部超音波検査:
お腹(なか)の臓器(肝臓、胆嚢、胆管、膵臓、腎臓(じんぞう))のがんを見つけることができます。
胸部CT:
胸部X線より詳しく調べることができます。胸部X線では見えにくい心臓の裏の病変も見つけることができます。また肺気腫(はいきしゅ)など肺がん以外の病気も見つけることができます。
腹部CT:
お腹の臓器(肝臓、胆嚢、胆管、膵臓、腎臓、膀胱(ぼうこう))のがんを見つけることができます。膵臓がんや胆管がんは腹部超音波検査では見つけにくいので、腹部CTを組み合わせるとより効果的でしょう。MRIより短時間で検査が可能です。
肝胆膵検診:
採血と腹部超音波検査を使用し、肝臓、胆嚢、胆管、膵臓を詳しく調べます(図2)。さらに詳しく調べる充実コースはMRIが追加となります。MRIでは、超音波(エコー)やCTより膵臓や胆管をより詳しく検査できます。
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図2 肝胆膵がん検診
PET-CT検査:
がん細胞に集まりやすい放射性物質(FDG)を注射して頭部から骨盤までPET-CTを撮影します。FDGが集まった部位があればがんの可能性があります。しかし炎症などがん以外でもFDGが集まってしまうことがあるため、その解釈には注意が必要です。また早期胃がん、前立腺(ぜんりつせん)がん、膀胱がん、腎臓がんはPET-CTでも見つけにくいがんですので注意が必要です。

3.脳と心臓の検診

脳検診

脳卒中(のうそっちゅう)は突然訪れますが、脳の検診(脳ドック)を行えば脳卒中になりやすいかどうかわかることがあります。脳卒中とは、血管が詰まる脳梗塞(のうこうそく)・脳塞栓(のうそくせん)や、血管が破れてしまう脳出血・くも膜下出血(まくかしゅっけつ)のことをいいます。自覚症状が少ないため、検診で早めにわかれば早めに対処することが可能です。特に、高血圧、喫煙、高脂血症など、脳卒中になりやすい因子を持っている人にはお勧めです。検査は脳のMRI検査とMRA検査、頸動脈(けいどうみゃく)エコーを行います。また、当センターではMMSE(ミニメンタルステート検査)という認知症検査も同時に行っています(図3)。

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図3 脳ドック
脳MRI検査:
脳の断面画像を確認でき、隠れ脳梗塞、脳の萎縮、脳腫瘍(のうしゅよう)などを見つけることが可能です。
脳MRA検査:
脳血管を立体的に確認でき、脳血管の狭窄(きょうさく)(細くなっていること)、未破裂脳動脈瘤(みはれつのうどうみゃくりゅう)や脳の血管の奇形などを見つけることが可能です。
頸動脈超音波検査:
頸動脈のプラーク(血管の壁にコレステロールが溜(た)まり血管内に出っ張っているところ)や、頸動脈の狭窄を見つけることが可能です。
MMSE:
7つの認知機能の程度を点数化し客観的に評価する国際的に用いられている認知症検査です。

心臓検診

突然死の危険のある心臓の病気には、心筋梗塞(しんきんこうそく)(心臓の血管が詰まってしまう病気)や狭心症(きょうしんしょう)(心臓の血管が狭くなっている病気)があります。これらは心臓検診により心臓や血管の状態を検査することでわかります。また、不整脈(ふせいみゃく)(心臓のリズムが正常でない病気)は通常の健診でも珍しくありません。不整脈にはさまざまな種類があり、経過観察してよいものから早めに受診したほうがよいものまであります。当センターの人間ドックでは、標準的な検査内容に加え、心臓エコー検査と血圧脈波の検査も受けることができる内容となっているため、非常に人気があります。

心電図:
定期健診や人間ドックで広く行われている検査です。ほとんどの人が一度は受けたことがある検査です。不整脈、心筋梗塞、狭心症などを見つけることができます。
心臓超音波検査:
心臓の動き、大きさ、弁(心臓の部屋を分ける扉のようなもの)の異常、心臓内の血栓(けっせん)(血液の塊(かたまり))を見つけることができます。心臓に不安がある方にお勧めです。
血圧脈波:
両手両足の血圧を同時に測定し、足の血管の硬さや詰まりを測定し、動脈硬化(どうみゃくこうか)の程度を検査します。
心臓CT:
造影剤を使用し心臓をCT検査します。心臓の血管を詳しく調べることができます。喫煙者など狭心症が心配な方にお勧めです。
トレッドミル負荷試験:
ベルトの上を歩行し、速度や傾斜を変えて心臓に負担を与えて心電図を記録します。心臓に負担をかけたときの心電図の変化などを確認します。

4.女性のための検診(婦人科検診)

乳がん検診

乳がんは日本人女性がかかるがんで最も多いがんです。しかし、早期発見・早期治療で高い生存率を望めるため、定期的に検診を受診することが重要です。日本人の場合は40歳以上が乳がんにかかりやすい年齢のため、各自治体では40歳以上の女性を対象に自己負担が少なく受診できるクーポンを配布しています。

当センターでは平日の乳がん検診のほかに、日曜日にマンモグラフィー検査を受けることができる企画「ジャパン・マンモグラフィーサンデー」にも賛同し、毎年実施しています。そのほかに年に数回、日曜・祝日にマンモグラフィー検査を受診できる日を開催し、1人でも多くの方ががん検診を受けることができるように努めています。

マンモグラフィー検査:
乳房専用のX線撮影で、乳房を2枚の板で挟んで薄く伸ばして撮影します。薄く伸ばすのは、乳腺が広がり病変を観察しやすくするためです。
乳腺エコー:
乳房内の状態を表面から確認する検査で、しこりなどの病変の有無や大きさなどをみます。X線による被ばくもなく痛みの少ない検査です。
乳房専用PET:
小さな乳がんの病変を確認することができ、マンモグラフィーのように強い圧迫をせずに検査着を着たまま検査ができる受診者にやさしい検査です。PET(ペット)-CT検査(がん検診の項目参照)と一緒に行います(図4)。
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図4 レディースPET

子宮頸がん検診

子宮(しきゅう)がん検診には頸(けい)がんと体(たい)がんの2つの種類の検診があります。当センターでは子宮頸がん検診を実施しています。自治体(札幌市)でも20歳以上の女性を対象に2年に1度の間隔で受診することを推奨しています。

20歳代後半から30歳代にかけて急激に増えるのが頸がんです。この子宮頸がんの原因因子にHPV(ヒトパピローマウイルス)があります。子宮頸がんの前がん病変(今後がんに変わる可能性がある部分)でほぼ100%確認されるウイルスです。この原因となるウイルスに感染していないかを1回の細胞の採取(細胞診)で同時に調べることができます。また、検診受診に抵抗がある方は自宅で調べることができるキットもあります(図5)。当センターでは、どちらの方法でも対応することができます。

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図5 自宅でできるHPV検査
子宮頸部細胞診:
子宮の入口付近(頸部)をブラシなどで擦って細胞を集め、顕微鏡でがん細胞や前がん病変の細胞がないかどうかを確認する検査です。
HPV検査:
原因となるHPV感染を調べる検査です。

5.正常値ではなかったとき

結果表が手元に届いたら確認しましょう

一般的な健康診断(健診)や、特定の疾患を対象とした”けんしん”(検診)の結果表に記載されている判定結果を大きく分けると、「異常なし」「軽度異常」「再検査」「要精検・要治療」「治療中」の5種類になります。これは検査の結果が正常範囲からどの程度はずれているかで決まります。「再検査「要精検・要治療」の判定結果となった場合は、医療機関の受診が必要となります。

ただし、「異常なし」だから健康だと安心はできません。毎年の健診/検診結果の数値の推移を確認しましょう。数値に変動があるなど不安や疑問があるときは、受診した健診センターに相談しましょう。結果の説明とともに、必要な方へは日頃の生活習慣についてアドバイスすることもあります。かかりつけ医のいる方は結果表を持参して相談してみましょう。

異常なし:
定期的に健診/検診を受けて、引き続き自分の健康状態を確認してください。
軽度異常:
小さな病変や健康や生命に危険を与えない病変が見つかった場合です。一般的には1年後の健診/検診をお勧めします。前回より結果が悪くなっていないか確認してください。
再検査:
数か月以内に再検査が必要と判断された場合です。指示された時期(例えば3か月後など)に医療機関を受診してください。
要精検・要治療:
重要な病気の可能性や治療が必要な場合です。ただちに医療機関を受診してください。
治療中:
現在、通院治療中のことをいい、結果表の現病歴に記載されている病名がその対象となります。

結果表の判定の指示に従いましょう

「再検査「要精検・要治療」と判定された人は、結果表にどの診療科(例えば消化器内科など)を受診するとよいか記載があります。「再検査」の場合は、本当に健康状態に問題があるのか、健診/検診受診時に一時的に異常値だったのかを確認する検査をします。「要精検・要治療」の場合は、健康状態に何らかの異常がある可能性が高いため、その原因を特定する検査をします。

当センターでは、医療機関の受診が必要な判定結果の受診者に当院外来の担当医表を結果表に同封し送付しています。当院で二次検査を希望の場合は、当センターで健診/検診結果を確認できる利点を生かし、外来予約を受診者の代わりにスムーズに行える体制を整えています(図6)。

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図6 健診結果で精密検査が必要な方へ
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更新:2025.02.06