頸動脈狭窄症:首の血管が原因!?放っておくと怖い頸動脈狭窄症

札幌孝仁会記念病院

救急診療部(脳神経外科)

北海道札幌市西区宮の沢

頸動脈狭窄症とは?

頸動脈(けいどうみゃく)とは脳や顔の組織を栄養する血管の総称で、ドクドクと首で拍動する血管がまさしく「頸動脈」です。細かく分類すると、総頸動脈という血管から2つに分かれ、主に脳を栄養する血管を「内頸動脈」といい、顔や皮膚などを栄養する血管を「外頸動脈」といいます。

血管が分かれるところは人間の体の構造的に、脂質の塊(かたまり)であるプラークや、石のように硬くなる動脈硬化(どうみゃくこうか)が非常に起きやすい部位です。動脈硬化により、血液の通り道が細くなる病気が頸動脈狭窄症(けいどうみゃくきょうさくしょう)です(図1)。

図
図1 頸動脈狭窄症のしくみ

頸動脈が細いと脳梗塞になりやすくなる

脳梗塞(のうこうそく)になりやすい理由は大きく分けて2つあります。1つ目は、頸動脈のうち、内頸動脈は脳へ血液が流れるため、通り道が細くなると脳への栄養が非常に少なくなるからです。脳梗塞は脳への血液が途絶え、その先の脳細胞が死滅する病気です。幸いに完全に脳の血管が詰まらなくても、十分な血液が供給されない場合、一時的に手足が動かない(=片麻痺(へんまひ))、ろれつが回らない、意識が悪くなるという症状が出現します。

2つ目は、内頸動脈が細くなる原因として、先ほど説明したプラークや石灰化があるからです。プラーク自体が出血したり、不安定な構造のため、急に狭くなったり、一部がはがれて脳の中に流れてしまうことがあります。そうなると流れてしまったプラークにより脳血管が詰まり脳梗塞になります。

頸動脈狭窄症を発見するには?

脳梗塞を引き起こす怖い頸動脈狭窄症ですが、医療機関で簡単に検査をすることができます。超音波検査で直接頸動脈の中をみることができ、どれくらい細くなっているのか、どのあたりが細いのか、プラークの形状や石灰化の度合いを計測し、数値化します。

一般的な脳ドックに含まれる医療機関も多く、数千円で追加できたりもします。他にMRIや造影剤(血管を見るための液体)を使用したCT検査を併用し、精密検査を行い、本当に手術が必要かどうかを専門医師が評価します。

患者さんに応じた3つの治療法

頸動脈狭窄症はほとんどが生活習慣病や喫煙患者に起こる病気です。そのため、生活習慣の改善や禁煙により予防できますが、通常は改善せず進行する病気です。そのため、①薬物治療から開始します。今後脳梗塞の発症リスクが高い患者さんには手術法として、②頸動脈ステント留置術や、③血栓内膜剥離術(けっせんないまくはくりじゅつ)を提案し手術を行い、脳梗塞の発症予防を行います。

頸動脈ステント留置術はカテーテル(医療用の細い管)を用いた手術で、血管の中からカテーテルを使って狭窄部を広げてステント(金属でできた網状の筒)を留置します(図2)。

図
図2 ステント留置前後
治療前後で狭窄部位(囲み部分)が改善しています

頸動脈内膜剥離術は全身麻酔を用いて、直接頸動脈を切り開いて内部のプラークを摘出します(図3)。

図
図3 頸動脈内部のプラーク
上(摘出前):血管内腔に黄色(図では茶色)のプラークが付着し、血液が流れにくくなっています
下(摘出後):プラークがなくなり十分な血管内腔ができています

頸動脈狭窄症になりたくない人へ

頸動脈狭窄症は、狭心症や心筋梗塞と同様に動脈硬化が進行しどんどん内腔(ないくう)が細くなる病気です。特に頸動脈狭窄症は生活習慣や喫煙、肥満が原因です。

1,000人以上の頸動脈狭窄症を診てきましたが、私の経験では遺伝性の病気を除き、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症)、喫煙者、肥満のいずれにも該当しない場合、この病気で手術をした人は1人もいません。

日頃の正しい生活習慣で回避できる病気です。1人でも多くの人が頸動脈狭窄症から脳梗塞にならない時代を期待しています。

更新:2024.07.29