高度健診と予防医療の重要性~人生100年時代を健やかに過ごすために~
札幌孝仁会記念病院
高度健診センター
北海道札幌市西区宮の沢
高度健診とは?
高度健診とは、通常の特定健診ではなかなか見つけることのできない「脳卒中・心臓病・がん」の三大疾病を中心とした急性期疾患(急激に発症し、かつ/または、経過の短い疾患)の予防や早期発見を目的とする、安全で質の高い健康診断のことを指します。私たちは、この高度健診を中心として予防医療を実践していくことで、健康寿命の延長を図ることができると考えています。当院ではこれからも高度健診事業で皆さまの健康寿命の延長に貢献したいと考えています。
高度健診はなぜ必要なのか
本来、医療の究極的な目標はすべての疾患を予防し、病気にかからずに寿命を全うすることだと考えます。日本の平均寿命は、戦後50年を超え、医療の進歩とともに、今は超高齢化社会といわれる時代に到達しました。
現在、死因の第1位となる疾患であるがんについては、早期診断、早期治療が最も重要であり、その治療も著しい進歩を遂げています。がんドックではPET(ペット)-CT(陽電子放射断層撮影という、がんを検査する方法の1つ)を駆使し、がんの検査を行います。PET-CTでわからない胃がん、前立腺(ぜんりつせん)がんは、それぞれ胃カメラ、腫瘍(しゅよう)マーカーが効果を発揮します。循環器系疾患に関しては、例えば心筋梗塞(しんきんこうそく)でしたら、心臓ドックで冠動脈(かんどうみゃく)の狭窄病変(きょうさくびょうへん)を検索することで、必要であればステント治療を行い予防することが可能な時代となりました。脳ドックで未破裂脳動脈瘤(みはれつのうどうみゃくりゅう)を発見し、治療することで、くも膜下出血(まくかしゅっけつ)も予防することができます。脳梗塞の原因の1つである頸動脈病変(けいどうみゃくびょうへん)も脳ドックで発見、治療することができます。骨密度の検査は、骨粗(こつそ)しょう症(しょう)による圧迫骨折など、健康寿命に大きく影響する疾患を予防するために必要です。

(厚生労働省「令和3年(2021) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」統計表・第6表をもとに作図)
しかし、今述べたような、高齢者に特徴的ながん、心臓疾患、脳疾患、運動器疾患などは、通常行っている特定健診では見つかりにくいのです。特定健診は、メタボリックシンドローム(メタボ)を発見し治療することにより、循環器疾患の改善予防に大きく貢献していますが、前述の専門的な検査は、設備が整った高度健診事業を行っているところでしか受けることができません。その意味で、PET-CTなどを活用する高度健診事業は、健康寿命の延長に大きく貢献しているものと考えられます。
私は医師として、これまで多くの経験を積み、高度健診事業の有用性を身にしみて感じています。心筋梗塞で死亡した60歳代の知人や、心臓の冠動脈の高度狭窄を放置していたら急性心筋梗塞で命を落としていただろうところを心臓ドックで発見され、ステント治療で命拾いし元気に活躍している人、がん発見が手遅れで亡くなった人、がんが早期に見つかり完治した人、さまざまな人との出会いを通じて、高度健診事業と予防医療の必要性を痛感しています。
もちろん健康寿命を延ばすのは日々の日常生活で健康に留意し、食事、運動、睡眠など、日々生活を楽しみながら、より多くの時間を笑顔で生きていくことが重要です。特定健診の受診も必ず行ってほしいと思います。
健康寿命を延ばすための予防医療
このような状況により、近年では一人ひとりが病気になってから治療するのではなく、病気になることを予防する「予防医療」の重要性が高まっています。
予防医療の第1段階(第一次予防)として、毎日の食生活・運動習慣・休養を上手にとり病気になりにくい「からだづくり」をしましょう。特に塩分の制限とメタボの予防は重要です。
第2段階(第二次予防)としては、自分の体になんの異変もなく、自覚症状がなくても必ず健診を受けましょう。また何らかの症状やいつもと違う状態が起きた場合はかかりつけ医に相談や受診をしましょう。そうすることで病気の早期発見、早期治療へとつなげることができます。
しかし病気によっては慢性化し、なかなか全快しない場合もありますが、第3段階(第三次予防)で計画的にリハビリを行うことにより、少しでもQOL(生活の質)の高い自分らしい生活を自ら確保することができます。
このように予防医療の第1から第3までを利用し、さらに進歩し続ける医療を上手に取り入れることで「平均寿命」と「健康寿命」を延ばすことができます。

(厚生労働省「第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会」資料3-1を加工して作図)
予防医療で最も重要なことは、個々人の健康に対する意識です。日常生活の食事、運動、睡眠などとともにメタボの予防、特定健診の受診、そして高度健診も取り入れ、健康寿命を全うするよう努力することが重要だと思います。

社会医療法人孝仁会 札幌孝仁会記念病院は、札幌市民のため、道民のため、そして日本のため、皆さまの健康増進に力を注ぎたいと考えています。
更新:2024.07.29