股関節疾患:脚の付け根の痛みの原因となる股関節唇損傷

札幌孝仁会記念病院

整形外科

北海道札幌市西区宮の沢

X線や通常のMRIだけではわかりづらい、脚の付け根の痛み

これまで原因不明とされた股関節(こかんせつ)の痛みの中に、「股関節唇損傷(こかんせつしんそんしょう)」が含まれるといわれており、近年注目されています。股関節唇は、股関節の屋根部分である寛骨臼(かんこつきゅう)の縁に付いている、軟骨成分からなる組織です。

股関節唇を損傷すると、股関節を深く曲げたり、捻ったりしたときに、脚の付け根の痛み、引っかかり感、関節がずれる感じが生じます。X線や通常のMRI撮影では診断が難しく、この病態に精通した医師の診察と股関節を放射状にスキャンする特殊なMRI撮影が必要です(写真1)。

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写真1 放射状MRIによる股関節唇損傷の診断

股関節唇損傷の原因として、日本人は股関節の屋根部分の被(かぶ)りが浅い寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)が最も多く、逆に屋根の被りが深すぎたり、丸い大腿骨頭(だいたいこっとう)のくびれ部分が少ないことで、動きによって屋根部分と大腿骨がぶつかること(股関節インピンジメント)で股関節唇損傷が生じることもあります。

痛みを改善させる治療

リハビリテーションで、股関節やその土台の骨盤の動きを良くすることで、痛みが改善する場合が多いです。しかし、なかなか痛みが改善しない場合は手術が必要となることもあります。寛骨臼形成不全が原因の場合は、骨切(こつき)り術(じゅつ)を行って被りを深くするように、屋根の骨を矯正する手術を行います。

高齢の場合や軟骨のすり減りが生じている場合は、人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)を行う場合もあります。インピンジメントが原因の場合は、内視鏡手術で痛みが改善することがあります。股関節の中に内視鏡を挿入して、損傷している股関節を縫合し、骨の衝突する部分を削ります(股関節鏡手術、写真2)。

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写真2 内視鏡手術による股関節唇の修復術
(赤矢印:股関節唇損傷)

更新:2025.02.06