三叉神経痛・顔面けいれん:鍵穴手術で治す三叉神経痛・顔面けいれん
札幌孝仁会記念病院
脳神経外科
北海道札幌市西区宮の沢

三叉神経痛・顔面けいれんとは?
三叉神経痛(さんさしんけいつう)は、通常片側の顔の一部もしくは全体に突発的な耐え難い激痛が起こる病気です。
一方、顔面けいれんは、痛みはありませんが、片側の目のまわりや口のまわりの筋肉が勝手に収縮して動いてしまう病気です。
どちらの病気もまずは内服薬で治療しますが、あまり効果がない場合、もしくは薬が継続できない場合は、手術治療を考慮しています。
三叉神経痛・顔面けいれんの特徴
三叉神経痛は、通常片側の顔の一部もしくは全体に突発的な耐え難い激痛が起こる病気です。ちまたでは顔面神経痛と呼ばれることもあるようですが、三叉神経痛というのが正式な名称になります。
典型的には、笑ったり、食事をしたり、歯を磨いたりといった日常の動作で誘発される突発的な強い痛みが特徴です。数秒間で自然に痛みはおさまることが大半ですが、この痛み発作は激烈で、ひどい場合には痛みのため食事がとれなくなることもあります。
また、三叉神経痛と比較すると非常にまれではありますが、同様に喉(のど)や耳の突発的な激痛を特徴とする舌咽神経痛(ぜついんしんけいつう)といった病気もあります。
一方で、顔面けいれんはこのような痛みは伴いませんが、片側の目のまわりや口のまわりの筋肉が自分の意図とは関係なくけいれんすることで、勝手に目をつぶってしまったり、口がひきつったりしてしまう病気です。ストレスや緊張が誘因となることも多いため、人前で仕事をすることが問題になってくることもあります。
診断と治療
症状の特徴から問診だけでも診断は比較的容易に行えますが、まれに脳腫瘍(のうしゅよう)や血管奇形などが原因となっていることもあるため、病気を疑った際にはMRI検査で脳や脳の血管の精査を行います。多くの場合、正常な脳の血管が三叉神経や顔面神経を圧迫して症状が引き起こされるといわれています。MRI検査で、原因となっている疾患の有無、また神経を圧迫している原因となっている血管をある程度推測することは可能です。
治療は、まずは抗てんかん薬(てんかんを抑える薬)をはじめとした内服薬での治療を試みます。効果が認められる場合は内服薬を継続していきますが、あまり効果が得られない場合や、効果があっても薬の副作用などで内服を継続できない場合は、微小血管減圧術(びしょうけっかんげんあつじゅつ)(MVD)と呼ばれる、神経を圧迫している血管を神経からはがして圧迫をとる根治的(こんちてき)(病気を完全に治すことをめざす)な手術治療を考慮します。もし脳腫瘍や血管の病気が原因となっている場合にはそれらに対する治療を考慮します。
また、最近では三叉神経痛に限りサイバーナイフという定位放射線手術(詳しくは「サイバーナイフ」)も保険適用となっており、手術の効果が得られなかった場合や、なんらかの理由で手術が行えないような場合には、放射線治療も選択肢になります。患者さんの年齢や全身の状態などを考慮して適切な治療法を提案しています。
鍵穴手術による微小血管減圧術
微小血管減圧術は、開頭(頭蓋骨の一部を開ける)を行って、原因となっている血管を脳の神経からはがして圧迫を取ることを目的に行われる根治的手術です(図1)。通常は、耳の後ろの皮膚を切開し、開頭を行い、手術用の顕微鏡を使って、原因となっている血管を見きわめます。そして、その血管を神経からはがし、移動させて神経を圧迫しないようにします。

全身麻酔で行われる手術ではありますが、当院では患者さんの負担を考慮し、原則的には鍵穴手術と呼ばれる方法でこの微小血管減圧術を行っています。
鍵穴手術とは、福島孝徳医師が提唱している手術手技で、通常の手術方法と比べて必要最小限の比較的小さな皮膚切開、開頭で行う手術法です(図2、写真)。このため、手術の創(きず)も小さく、患者さんの手術の負担も少ないのが特色です。


10セント硬貨(直径17.9mm)と同じくらいの鍵穴を作成します(写真左)。脳神経を圧迫している責任血管を見きわめ(写真中央)、神経から血管の圧迫をとります(写真右)
手術無効例、再発例、年齢や全身状態により再手術が困難と考えられる三叉神経痛の症例については、当院ではサイバーナイフも選択肢として提案しています。
更新:2025.02.06