骨粗しょう症:たかが「骨粗しょう症」と思っていませんか?
釧路孝仁会記念病院
整形外科
北海道釧路市愛国
骨粗しょう症とは
大根やごぼうなどの芯にできる隙間のことを鬆(す)といいますが、骨粗(こつそ)しょう症(しょう)とは、字のごとく、骨があら(粗)く、す(鬆)が入った状態になることをいいます(図1)。骨粗しょう症になると単に骨が弱くなったということではなく、ちょっとしたことで骨が折れてしまい、時には「寝たきりになってしまうこともある疾患」です。骨粗しょう症の有病者数は1,590万人(男性410万人、女性1,180万人)と推定されています(1)。

上が健常者、下が骨粗しょう症の患者さん
症状と原因
骨が弱くなるだけではない骨折の危険性が高まる
骨は生涯を通じて変化しないものと思っている方も多いかもしれませんが、実は毎日新しい骨に置き換わっています。

これは皮膚の古いところが垢(あか)となって剥(は)がれ落ち、新しい皮膚が作られているのと同じです。どんなに年を取っている方でも、自然と骨の古いところが新しいものに置き換わっていくのです。このことを骨代謝(こつたいしゃ)(骨の新陳代謝)と呼んでいますが、このバランスが崩れてしまうと骨が弱くなってしまいます。骨が弱くなると、以前は転んでも何ともなかったのに、手をついた際に手首の骨が折れたり、脚(あし)の付け根の骨が折れたり、背骨が潰れたり(図2)してしまいます。

もともと四角い形をしていた骨がたくさん潰れて背骨が曲がってしまっています
また、骨が弱くなると転んだりしなくても自然に背骨が潰れてしまい、背中が丸くなってしまいます。
検査・診断
診断は3つの検査でる
まずは、自分の現在の骨の状態をしっかり把握しておくことが必要です。骨粗しょう症は無症状のまま進行することが多く、骨折が起こるまで気づかないこともあります。
骨粗しょう症の検査として、背骨のX線検査、骨密度検査(写真)、血液検査(骨の新陳代謝の状態をみるため)を行い、骨粗しょう症かどうかを総合的に診断します。

予防と治療
寝たきりの原因にもなる骨粗しょう症
予防には食事と適度な運動が最も大事なことです。食事はカルシウムだけではなく、ビタミンDやタンパク質を摂取することが重要です。また、運動に関しては1回30分以上の散歩を週に2~3回程度するように指導しています。
骨粗しょう症が疑われる場合は、早期から治療を開始していくことが重要です。近年、骨粗しょう症に対してさまざまな内服薬や注射剤が使用できるようになってきており、骨粗しょう症の程度に応じて、個々の患者さんに合った適切な治療を行っていきます。また、骨折を起こしてしまった場合には再び骨折を起こす確率が高くなるため、再度骨折を起こさないように骨粗しょう症の治療をすぐに開始することがとても重要です。骨折が治ったからといって決して安心してはいけないのです。
「寝たきりだけにはなりたくない」と皆さん言われますが、骨折は脳血管疾患や認知症に次いで寝たきりの原因となっていることも知っておくべきだと思います。骨粗しょう症の治療は、骨の健康だけでなく、総合的な健康の維持にも寄与しています。どんなに年をとっている方でも骨は新しいものに生まれ変わっていきます。「もう年だから」というのは大きな間違いです。体の大黒柱である骨をいたわっていきましょう。
[参考文献]
(1)日本骨代謝学会/日本骨粗鬆症学会合同原発性骨粗鬆症診断基準改定検討委員会(福永仁夫委員長):原発性骨粗鬆症の診断基準2012年度改訂版
更新:2024.05.28