皮膚悪性腫瘍、難治性皮膚潰瘍など:皮膚疾患の「予防と治療」形成外科の仕事—part2
釧路孝仁会記念病院
形成外科
北海道釧路市愛国
皮膚悪性腫瘍、悪いできもの
皮膚悪性腫瘍(ひふあくせいしゅよう)とは、皮膚にできるがんの一種です。主に日焼けの影響を受けやすい場所にできやすく、長期間日焼けを繰り返したり、日焼け止めを使用しなかったりすることがリスク因子となります。一般的に、色素の多いシミのようなものや、ほくろの変化などがみられる場合があります。

早期発見と治療が重要で、手術や放射線療法、化学療法などが治療法の一部です。皮膚がんは、早期に発見することで治療の効果が高まり、予後(※1)が良くなることが多いため、日常的な皮膚チェックが大切です。
※1 予後:今後の病状についての医学的な見通し
まず表皮から発生する腫瘍として、①老人性角化症、②白板症(はくばんしょう)といわれるがん前駆症(ぜんくしょう)、③ボーエン病といわれる表皮内がんがあります。これらはいわゆる早期がんなので、治療は外科的な切除が基本です。
④有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がんは表皮から生じた悪性腫瘍です。中年以降の男性に多く、顔面、頭部、手、足、外陰部など全身に生じます。赤い塊(かたまり)として始まり、徐々に大きくなりキノコのように増殖し、表面がくずれて潰瘍化(かいようか)して出血、浸出液を伴います。有棘細胞がんになるとリンパ節転移を起こす可能性もあります。
治療は切除が必要ですが、転移の状態によっては放射線療法や抗がん剤による化学療法も必要です。⑤基底細胞がんは表皮の一番底にある基底細胞に似た細胞のがんです。高齢者の顔面に多く、日本人では黒色の半球状の病変として始まり、増殖の過程で潰瘍化したり平たい瘢痕(はんこん)のようになったりする病型もあります。
治療は外科的な切除で、転移することはまれなのですが、取り残しがあると再発を繰り返し、深部の組織に破壊的に増殖するので、確実な全摘出術が必要です。
次に皮膚付属器(毛包、脂腺(しせん)、汗腺)から発生する腫瘍として、⑥脂腺がん(眼瞼(がんけん)のマイボーム線がん)、⑦エックリン汗腺がん、⑧乳房パジェット病(これは乳がんの一種)、⑨乳房外パジェット病(外陰部、肛囲、腋窩(えきか)のアポクリン汗腺由来)があります。⑨は汗腺由来の腺がんが表皮内に侵入した状態で、浅い病変である湿疹と間違われやすいです。目安としては湿疹の原因はカブレであるのでかゆみを伴うことが多く、かゆみのない湿疹が生じたときはきちんと受診して検査を受ける必要があります。
そして、皮膚の色素細胞由来のがんとして⑩黒色がん前駆症、⑪悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)(メラノーマ)があります。⑩はがん細胞が表皮内にとどまり、真皮(しんぴ) 内に進行していないので病巣部の切除が必要です。⑪は皮膚の色と関係するメラニン色素を産生する、メラノサイトという皮膚の細胞が悪性化してできる腫瘍です。日本人は10万人当たり1~2人とされ、希少がん(まれながん)として扱われます。
さらに、皮膚に症状が出る腫瘍として、⑫隆起性皮膚線維肉腫(りゅうきせいひふせんいにくしゅ)、⑬皮膚血管肉腫、⑭菌状息肉症(きんじょうそくにくしょう)(皮膚に生じた悪性リンパ腫)⑮内臓がんの皮膚転移などがあります。
難治性皮膚潰瘍・治りにくい傷・褥瘡(床ずれ)
一般的に、やけどやけがであれば、数週間のうちに治ります。治りにくい傷を難治性皮膚潰瘍(なんちせいひふかいよう)といいます。
糖尿病による神経麻痺(しんけいまひ)(しびれ)や血流障害(血管の詰まり)が原因となることが多く、ほかには静脈うっ滞(逆流)や自己免疫疾患が原因となることもあります。
褥瘡(じょくそう)(床ずれ)の漢字の由来は「ふとんによるはれ物」ですが、栄養状態や寝返りができないなどの要因もあり、治りにくいです。治療の基本は、まず適切なマットレスの使用により圧迫を取り除くことと、十分な洗浄および適切な治療です。
皮下脂肪組織に至る褥瘡の場合は、持続陰圧閉鎖療法の装置によって肉芽(にくげ)(※2)形成を促進する治療法があります。最近は、その装置にある洗浄液の周期的自動注入機能により、細菌感染の温床となる壊死(えし)(※3)組織や不良肉芽組織の除去ができるようになりました。また治療の期間によっては、皮膚移植(植皮術)や周囲の皮膚を移動(皮弁術)させることも計画します。

※2 肉芽:外傷や炎症によって欠損した部分にできる赤く柔らかい粒状の組織
※3 壊死:組織や細胞が死んでしまうこと
手の外傷 切断指について
指が切断された場合、切断された指の血行を再開させる再接着手術を早急に行わないと、壊死してしまいます。切断した指は、まず湿ったガーゼで包んでからビニール袋に入れます。さらに、ビニール袋を外側から氷水で冷やした状態で保存してください。手はガーゼなどで保護・圧迫、挙上して、できるだけ早く形成外科医や外科医が勤務している病院に連絡をしてください。
更新:2024.05.28