睡眠時無呼吸症候群(SAS)について
釧路孝仁会記念病院
呼吸器外科
北海道釧路市愛国
大きな産業事故の原因にもなる睡眠時無呼吸症候群の症状とは?
睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)は、夜間にいびきをかいて、しばらく息が止まり(平均30秒、長いときは2分以上)、そのままでは死んでしまうので、あえぐような激しい息や、いびきで呼吸が再開するのが特徴です。それを繰り返します。
浅い眠りになるため、昼間に異常な眠気をもよおします。そのために、SASはさまざまな合併症(高血圧、心筋梗塞(しんきんこうそく)、脳卒中(のうそっちゅう)、突然死など)を引き起こす病気であり、交通事故を含む重大な産業事故の原因ともなっています。
例えば、1979年のスリーマイル島の原発事故や、1983年のチェルノブイリ原発事故、1986年のスペースシャトルのチャレンジャー号爆発事故も、SASの従業員の居眠りが原因とされており、日本でも新幹線の運転手の居眠りが大きな社会問題となりました。
診断には、睡眠ポリグラフ(ポリソムノグラフ)という検査を行います。この検査では睡眠の状態、呼吸の状態、いびきの状態、体の酸素の状態などを同時に記録し、それぞれの関係を調べます。これによりSASかどうかが診断され、重症度の判定を行うことができます。
この検査は入院が必要ですが、検査項目を少なくした外来で行える簡易検査もあります(図1)。夜に検査の装置を自分で付けて、次の日に病院で解析します。無呼吸指数(AHI:1時間に何回呼吸が止まるかの回数)が5≦軽症<15、15≦中等症<30、30≦重症となります。

睡眠時無呼吸症候群の治療方法
治療としては鼻マスク式持続陽圧呼吸法(CPAP)があります。AHI≧20の中等症から重症例が治療対象となります。
患者さんは鼻マスクを装着して就寝します。空気が送りこまれ、のどの内側から膨らませてつぶれないようにします(図2)。よく眠れるようになり、虚血性心臓病(きょけつせいしんぞうびょう)や脳血管障害による死亡を防ぐことができます。CPAPの管理料として毎月約5,000円かかりますが、年中24時間サポートします。

軽症では、口を閉めて側臥位(そくがい)(仰向(あおむ)け)あるいは腹臥位(ふくがい)(うつぶせ)で寝るなど、寝方や枕の調整などを指導します。そのほかに軽・中等症やCPAPが困難な例では歯科装具(マウスピース)が選択肢となります。さらに扁桃手術(へんとうしゅじゅつ)、アルコールの摂取制限、睡眠薬の禁止、鼻閉(びへい)の治療、体重減量などがあります。
SASは成人の5%といわれており、国内では200万人とも推計されています。いびきがひどく、昼間でも眠気が強い場合にはSASが疑われます。当院でもSASの簡易検査、精密検査および治療が可能ですので、興味がある方は、気軽に外来受付または相談室までお問い合わせください。
更新:2024.05.31