バセドウ病:バセドウ病の放射性ヨウ素内用療法

釧路孝仁会記念病院

放射線科

北海道釧路市愛国

バセドウ病とは

甲状腺はのど仏の下部にある内分泌臓器で、代謝を調節する甲状腺ホルモンを産生しています。バセドウ病は、自己免疫疾患(免疫が自分自身の体を攻撃してしまう病気)の1つで甲状腺の働きが異常に活発になることで、甲状腺ホルモンが過剰に産生され、さまざまな症状が現れる病気です。

症状と原因

甲状腺ホルモンが異常に分泌され、新陳代謝が過剰に

甲状腺ホルモンの産生は通常、視床下部(ししょうかぶ)および下垂体(かすいたい)から分泌される上位の調節ホルモンによるフィードバック調節により適切なレベルに調節されています。

しかし、バセドウ病では体の中に甲状腺を持続的に刺激する自己抗体が現れ、正常なフィードバック調節が逸脱し、過剰に甲状腺ホルモンが分泌されます。甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)の1つでもあり、食欲増加、体重減少、手指の震え、発汗、頻拍(ひんぱく)、不整脈など、さまざまな症状をきたします。

図
図1 バセドウ病の主な症状

検査と診断

血液検査や甲状腺シンチグラフィや超音波(エコー)検査で診断

血液中の甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、抗TSH受容体抗体、甲状腺刺激抗体の測定を行い、甲状腺ホルモン高値、TSH低値、抗TSH受容体抗体/甲状腺刺激抗体陽性を証明します。また、甲状腺シンチグラフィによる甲状腺機能評価や甲状腺エコー検査による血流/形態評価を行い、びまん性の機能亢進状態であることを証明します。

診断は、前述の血液検査異常所見や甲状腺シンチグラフィによる機能亢進所見に加えて、頻脈(ひんみゃく)、体重減少、手指の震え、発汗増加などの甲状腺機能亢進所見、びまん性甲状腺腫大(せいこうじょうせんしゅだい)、眼球突出などの目の症状があればバセドウ病と診断します(1)。

予防と治療

バセドウ病の放射性ヨウ素内用療法

治療法は、抗甲状腺剤による甲状腺ホルモン産生の抑制、手術による甲状腺部分切除、放射性ヨウ素内用療法による甲状腺細胞の破壊の3つです。国内では抗甲状腺剤を用いた薬剤治療が選択されることが多いですが、欧米では放射性ヨウ素内用療法が第一選択です。

甲状腺は海藻などの食物に含まれるヨウ素を原料として甲状腺ホルモンを産生します。そこで、細胞に与える影響が大きいベータ線を放出するヨウ素のアイソトープ(ヨウ素131)を内服し、吸収されたヨウ素131を甲状腺細胞に取り込ませて、ヨウ素131を取り込んだ甲状腺細胞をベータ線で破壊し、甲状腺ホルモン産生を低下させるのが放射性ヨウ素内用療法の原理です。

放射性ヨウ素内用療法施行前後の甲状腺CT画像を示します(図2)。治療後、甲状腺が縮小しているのがわかります。副作用はまれですが、一時的に甲状腺ホルモンが過剰に血液中に放出されて、甲状腺機能亢進症が悪化することがあります。また、まれに目の症状が悪化することがありますが、これらの副作用に対しては薬剤で対処します。甲状腺を含めて、発がんリスクは低く、治療後、正常妊娠や出産も可能です。

図
図2 放射性ヨウ素内用療法前後の甲状腺CT画像
CT画像より算出した内照射試行前の甲状腺体積は74mlと高値を示したが(A)、治療後4か月のCTでは28mlと正常化しました(B)。○印は治療前後と相違箇所

治療効果は、2週から数か月で認められます。放射性ヨウ素に対する甲状腺の感受性には個人差があり、適切な投与量を計算して治療を行いますが、効果が不十分で、甲状腺ホルモンが正常化しない場合もあります。この場合、半年後に再治療を行います。

逆に効果が強く出て、甲状腺機能が低下する場合もあります(一時的、あるいは永続的に)。この場合、甲状腺ホルモン剤を内服してもらいます。甲状腺ホルモン剤には、抗甲状腺剤のような副作用はなく、適量を服用していれば、生活には全く問題ありません。当院では、この放射性ヨウ素内用療法を外来で行っています。バセドウ病の患者さんで、薬剤治療が困難、外科治療後の再発、早期の確実な治癒を望まれる方々にはこの治療法は良い適応です(2)。

[参考文献]
(1)バセドウ病の診断ガイドライン 日本甲状腺学会2022/6/2改訂
(2)放射性ヨウ素内用療法に関するガイドライン 第6版日本核医学会分科会腫瘍免疫核医学研究会/甲状腺RI治療委員会2018/10

更新:2024.05.28