前立腺がんと闘う 診断から最新治療まで

四国がんセンター

泌尿器科

愛媛県松山市南梅本町甲

前立腺がんは増えています

一生涯で前立腺がんになる確率は11人に1人と計算されています。2018年のがん統計予測では、胃がんや大腸がん、肺がんについで前立腺がんは男性がんの中で第4位です(国立がん研究センターがん情報サービス/2018年)。ここまで前立腺がんが増加してきた主な理由は、社会の高齢化と食生活の欧米化です。一昔前まで前立腺がんは、腰痛など、骨転移の症状が出て初めて診断されていましたが、今は違います。早期発見が可能になり、完全に治すことが可能ながんになってきました。では、どうすれば早期発見できるのでしょうか?それは血液検査です。

血液に中にある「PSA」という腫瘍(しゅよう)マーカーを測定することで、がんの疑いのある人を見つけることができます。PSAが正常値である4を超えると40%以上、さらに10を超えると75%以上、20を超えるとなんと90%以上の人に前立腺がんが見つかります(当院データ)。血液検査はどこでもできます。かかりつけ医や各自治体が行っている検診でも可能です。当院は、1993年から検診の取り組みを開始しています。初期の前立腺がんには症状はありません。検診を受けて早期発見に努めましょう。

最新治療について――手術と放射線

前立腺手術はロボット手術です。ロボット手術といっても、正式にはロボット支援手術ですので、現時点ではロボットが手助けをしてくれる手術ということになります。しかし、この手助けは素晴らしいシステムで、これまでの手術の概念を変えてしまいました。医師は操縦席に座り、ロボットアームに装着した手術器具をコントロールします。

ロボット支援手術の特徴は、①自由に動く手術器具と3次元画像により、繊細で安全な手術操作が可能であること、②術中出血量の減少と術後早期回復が期待できることが挙げられます。また尿失禁や性機能を含む機能温存において、ロボット支援手術の方が優れていると考えられています。しかし、ここで重要なことはロボットを操縦するのは人だということです。つまりロボットの頭脳は人なのです。いくら道具が良くても緻密な作戦が立てられないと、がんとは闘えません。

写真
写真 ダビンチサージカルシステム

前立腺がんは、放射線治療でもやっつけることができます。放射線治療にはいくつかの方法がありますが、ここでは当院が愛媛県下でも、いち早く開始したブラキセラピーについて紹介します。

ブラキセラピーは前立腺の内部から放射線を当てる方法です。通常の放射線は体外から当てますので外照射と呼ばれますが、ブラキセラピーは体内からの照射ですので組織内照射とも呼ばれます。放射線を密封したカプセルを前立腺の中に入れていきます。カプセルはチタン製で、長さ4・5㎜、直径は0・8㎜です。前立腺の大きさで異なりますが、通常60個から80個挿入します。ブラキセラピーの治療時間は約2時間です。放射線治療については「放射線治療」をご覧ください。

イラスト
図 ブラキ

QOLは大事です

前立腺がんの治療法を決めるときには、自分のがんがどのような進行度か、悪性度がどの程度かなどの説明を十分に受け、理解することが大切です。また、前立腺がんの治療では、治療後に排尿・排便・性機能に影響を及ぼすことが知られています。そのため、治療後の体の変化、特に排尿状態や性機能についても十分理解し、QOL(生活の質)の低下を最小限にとどめることも必要です。前立腺は排尿に関係していますので治療により、どうしても影響を受けてしまいます。私たちは、なるべく影響が出ないように治療を行いたいと考え実行していますが、治療後の変化をあらかじめ理解していただき、それに対応してもらうことが重要です。

この問題に対して、当院ではこれまでに多くの患者さんに協力していただき、QOLのデータを集めて解析してきました。治療法決定時には、そのデータを説明し参考にしてもらっています。特に、根治(こんち)療法である手術と放射線治療に関しては悩まれる方が多くいます。当院では、どの治療法も熟知しており、QOLも含めて適切なアドバイスができます。他院からのセカンドオピニオンにも数多く対応しており、放射線治療医から直接話を聞くこともできます。さあ、皆であなたに適した治療法を決めましょう。

イラスト

更新:2024.10.04