足の付け根（鼠径部）が出っ張っていると感じませんか？ー鼠経ヘルニアかもしれません

鼠径ヘルニアとは？

一般に「脱腸」と呼ばれている病気です。腸やお腹（なか）の中の臓器が鼠径（そけい）部の筋肉の穴から飛び出した状態です。

もし、嵌頓（かんとん）すると？

ヘルニアの穴に腸が長時間はまり込み、腸への血流が遮断され、腸は壊死（えし）してしまいます。その場合、一刻も早くこの状態を解除してあげることが必要となります（写真１）。

どんな治療法がある？

鼠径ヘルニアは、薬では治すことができません。確実な治療は唯一、手術です。しかし、例えば心臓の悪い方など手術に伴うリスクが高いと判断される場合、すぐに手術を行わずに定期的に外来で経過観察することもあります。また、ヘルニアバンド（脱腸帯）で外から物理的に腸が出るのを防ぐ方法もあります。

手術は2種類

お腹に小さな穴を開けてカメラを見ながら行う「腹腔鏡手術（ふくくうきょうしゅじゅつ）」と、鼠径部の膨（ふく）らみの上を切る「鼠径部切開法」です（図１）。どちらの手術を選択するかは、両方のメリットとデメリットを十分考慮した上で、患者さんとよく話し合いながら決めます（表）。

	腹腔鏡手術	鼠径部切開法
①傷と痛み	傷が小さく痛みが少ない （1cm 程の小さな穴・3 箇所）	5cm の傷
②入院期間	短い（3 泊 4 日）	4泊5日
③術後の回復	日常生活に早く戻れる	創が治るのに時間を要する
④両側の場合	同じ穴から左右同時にできる	左右に傷が 2 か所になる
⑤小さなヘルニアの確認	カメラで内側から観察するため見落としが少ない	判断が難しい場合がある

	腹腔鏡手術	鼠径部切開法
①麻酔	必ず全身麻酔が必要	腰椎麻酔（場合により全身麻酔）
②手術時間	長い（2 時間）	短い（1 時間）
③腹部手術既往、前立腺術後	不向き	可能
④腹腔内蔵器を損傷する可能性	あり	ほとんどなし
⑤費用	やや高い（3 割負担で約 150,000 円）	安い（3 割負担で約 75,000 円）

ヘルニアの穴は、どうやって塞（ふさ）ぐ？

現在、「メッシュ」と呼ばれる医療用のネットを使うのが主流となっています（写真2）。体の中に入れたメッシュは位置がずれないよう固定します。一度入れたメッシュは取り出さず、患者さんの体の一部となります。なお、当院ではメッシュを使用しない治療の選択肢もありますので、遠慮なくご相談ください。

鼠経ヘルニア手術の実績

当院での鼠経ヘルニアの手術の実績と内訳は、「図２」のようになっています。鼠経ヘルニアは、女性と比べて男性で多い病気です（女性４％、男性96％）。年代別では、60歳代、70歳代、80歳代と、高齢の方が多くなっています。手術方法では、腹腔鏡手術と比較し鼠径部切開法が多い傾向があります。

更新：2024.10.18