泌尿器がんー腎がんの診断と治療
済生会吹田病院
泌尿器科
大阪府吹田市川園町
腎がんの特徴
腎尿細管(じんにょうさいかん)という組織から発生した悪性腫瘍(あくせいしゅよう)のことを腎がん(腎細胞がん)といいます。比較的高齢の方や男性に多く(男女比は約2対1)、近年増加傾向にあります。人間ドックや健診の普及で、無症状で偶発的に発見される小さな腫瘍が増えています。早期発見により根治(こんち)と腎機能温存をめざすことが可能です。腎がんは肺や骨、肝臓に転移する場合が多く、一般的には抗がん剤や放射線療法は無効です。しかし最近では、「分子標的薬」と呼ばれる薬が多数使用可能になり、転移があっても延命が期待できるようになってきました。
腎がんの診断
古くは肉眼的血尿や腹部腫瘤(しゅりゅう)といった症状で発見されることが多かったのですが、近年は、健診や人間ドックの普及によって、超音波検査で偶然発見される頻度(ひんど)が増しています。いったん腎がんが疑われた場合は、CTやMRI検査で診断を行います。
腎がんの治療
1.手術療法
①腹腔鏡下根治的腎摘除術
偶然発見される腫瘍の増加に伴い、開腹で行っていた手術も腹腔鏡下(ふくくうきょうか)に低侵襲(てんしんしゅう)(体への負担が少ない)に行うことが可能になっています。開腹手術では20㎝程度の切開が必要でしたが、1㎝の小さな傷が4個程度で済むようになっています。
②腎部分切除術(腹腔鏡、ロボット支援手術、図)
腎摘除術では腎臓が1つになってしまい、機能温存の面からは好ましくない側面もあります。最近ではスクリーニング検査の普及によって小さな腫瘍が増えてきており、機能温存と根治性を両立できる部分切除術が増えています。部分切除においては、腹腔鏡下に、しかも「ロボット支援手術」を保険診療で行うことが可能であり、当院においても開始したところです。腹腔鏡での部分切除が難しかった症例に対しても、ロボット支援手術により部分切除が可能となることもあります。
2.分子標的薬
転移のある進行期の腎がんに対しては、全身治療として「分子標的薬」を使用します。腎がんがどのような仕組みで増殖するか、ということがかなり解明されてきており、ある遺伝子の働きを抑えることで、増殖を抑制することが可能になってきています。増殖などにかかわる「分子」を標的とした薬が分子標的薬と呼ばれています。血管新生阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬といった薬が使用されます。
いわゆる抗がん剤とは異なる副作用が出ることがありますので、注意深く経過観察をしながら治療を行います。
更新:2024.10.07