慢性腎臓病に気をつけましょう

済生会吹田病院

腎臓内科

大阪府吹田市川園町

慢性腎臓病という病気をご存じですか?

「慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう)」という病気をご存じでしょうか?慢性腎臓病とは、長い期間をかけて腎臓の機能が障害されていくことで、専門的には「腎臓の障害(蛋白尿(たんぱくにょう)など)、もしくはGFR(糸球体濾過量)60ml/分/1.73㎡未満の腎機能低下が3か月以上持続するもの」と定義されます(表)。

①尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか、特に0.15g/gCr 以上の蛋白尿
(30mg/gCr 以上のアルブミン尿)の存在が重要
②GFR<60mL/ 分/1.73 ㎡
①、②のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続する
表 慢性腎臓病の定義(出典:『CKD診療ガイド2012』社団法人日本腎臓学会編著、東京医学社、2012年)

難しい病気のように感じますが、実は日本の人口の約13%が慢性腎臓病といわれており、がんや心疾患、脳卒中などと並んで、新たな国民病と考えられています。13%というのは、言いかえれば約8人に1人で、通りを少し歩くだけで慢性腎臓病の患者さんに出会うことになります。しかし、問題は8人に1人いる慢性腎臓病の患者さんが、病院に通院をして適切な診察や治療を受けていないのではないかということです。

病院を受診するきっかけは、「熱が出た」「胸が痛い」「お腹(なか)が痛い」など、日常生活に支障が出るような症状が現れた場合でしょう。それでは、慢性腎臓病にはどのような症状があるのでしょうか?

実は慢性腎臓病の初期段階では、自覚症状はないか、あってもごく軽いもので、日常生活に支障が出ることはほとんどありません。ただし、慢性腎臓病が進行していくと、最終的には「透析」が必要な体になってしまいます。そのような特徴を持った慢性腎臓病は、初期段階で治療を開始するのが重要なのですが、早期発見には何が必要なのでしょうか?それは、「健診」です。

慢性腎臓病を早期発見し、予防しましょう

健康診断を職場で毎年受けている方もいれば、人間ドックを定期的に受診している方もいると思います。慢性腎臓病をどのように診断していくかは、先に述べた慢性腎臓病の定義で分かるように「腎臓の障害(蛋白尿など)」「GFR(糸球体濾過量)60ml/分/1.73㎡未満の腎機能低下」など、血液検査や尿検査を受けて初めて分かる項目を用いて診断します。つまり慢性腎臓病は、特に早期発見のためには、検査を受けないと診断できない病気なのです。

繰り返しになりますが、慢性腎臓病は初期段階では、自覚症状はないか、あってもごく軽いもので、日常生活に支障が出るような症状が現れる頃には、かなり進行した状態、あるいは透析が必要な状態になってしまう病気です。健康診断での早期発見がとても大事です。

早期発見に次いで大事なのが、慢性腎臓病を予防していくことです。

慢性腎臓病の原因は多岐にわたります。例えば糖尿病、高血圧症、慢性腎炎などが主な原因として挙げられます。糖尿病は現在、透析を開始する方の最多の原因といわれています(図)。そして糖尿病が原因の慢性腎臓病(正確には、糖尿病性腎症といいます)は、糖尿病の治療そのものが慢性腎臓病の進行予防につながります。

グラフ
図 血液透析導入患者の原疾患割合(糖尿病性腎症が最も多い)(出典:一般社団法人日本透析医学会「図説わが国の慢性透析療法の現況」2016年12月31日現在)

高血圧症が原因の慢性腎臓病は、高血圧症の治療、つまり減塩や降圧薬の服用が慢性腎臓病の進行予防につながります。

慢性腎炎の場合は、少し特殊な治療が必要になる場合がありますが、糖尿病や高血圧症などが「生活習慣病」といわれる通り、生活習慣の改善が慢性腎臓病の予防となることが多いです。

まず、①慢性腎臓病であるかどうかを早期発見すること、②慢性腎臓病の原疾患がなにかをつきとめること、そして、③慢性腎臓病の原疾患に適した治療を受けること、が非常に重要となります。

更新:2022.03.16