地域医療連携におけるサービス提供と情報システムを活用した医療の質向上について

済生会吹田病院

地域医療センター

大阪府吹田市川園町

患者さんに可能な限りのサービス提供をめざす

吹田市近辺は大阪府下でも有数の急性期病院の多い地区で、患者さんにとっては数ある病院から好きな病院を選べる恵まれた環境ともいえます。これまで当院では、患者さんに選ばれる病院をめざして、さまざまな取り組みを行ってきました。例えば、かかりつけ医療機関を持っていない患者さんを支援するために、地域医療センター窓口には電子掲示板(図1)や地図で、当院との医療連携を密にしている登録医療機関を紹介しています。

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図1 医療機関を紹介する電子掲示板

また、タブレット端末を使って簡便に医療機関を検索できるシステムも整備し、患者さんの希望する条件(例えば、自宅付近や交通の便が良い診療所など)をスタッフがシステムに入力すると、希望に沿った医療機関が検索され、診療時間や診療科などを確認することができます(図2)。さらには、初めて診療所に行かれる際に迷うことのないよう、当院や最寄りの駅から診療所までのルートを記載した地図もお渡ししています。ほかにも、受診を希望する診療科が休診の場合に「今日診察してもらえる近所のクリニックを探したい」等の要望に、地域医療センターや医療相談窓口でこのシステムを活用しサポートしています。この医療機関検索システムは開発から携わり、今ではなくてはならないツールになっています。

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図2 タブレット端末で医療機関を検索している様子

些細なことですが、医療機関からの紹介で予約来院した患者さんには、受付後に検査室や外来診察室までスタッフが一緒に同行して、案内しています。大きな病院では、検査室や診察室がどこにあるのか分からず迷うことがあるので、この案内サービスは好評です。また、体のことで悩みを抱えている場合、どの診療科にかかればよいのか迷うこともあるかと思いますが、症状からどの診療科にかかればよいかを解説した冊子も製作中です。今後も、患者さんに安心して療養いただけるよう、可能な限りのサービスを提供したいと考えています。

情報通信技術(ICT)を用いた診療情報共有サービスを開始

近年の医療政策は、ICT(information and communication technology)を有効活用し、医療の質を向上させることを1つの方針としています。2017年5月、当院では電子カルテ内の診療情報の一部(病歴などの基本情報、レントゲンや内視鏡画像、血液検査データ、処方データなど)を、近隣医療機関に公開するシステム(名称/さいすいヘルスケアネット、図3)を導入しました。このシステムは全国でも多数利用されているもので、各省庁が推奨しているセキュリティレベルを有し、安全かつ迅速に当院と連携している医療機関に診療情報を提供するものです。当然ながら、患者さんの情報は本人の同意を得た上で公開します。

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図3 さいすいヘルスケアネットのサンプル画面

例えば、診療所(紹介元)の医師が患者さんを当院へ紹介される際に、さいすいヘルスケアネットの利用について、患者さんに説明し同意を得ます。後日、患者さんが当院を受診された際の検査結果、処方内容などはネットワークを経由して送信され、診療所の医師は閲覧できます。診療所の医師は、当院へ紹介した患者さんの医療情報を診療所にいながらいつでも参照することができます。患者さんが当院での治療を終え、かかりつけの診療所に戻った際に、かかりつけ医師と画像や検査データを見ながら、今後の治療方針などを話し合うことも可能です。現在、複数の医療機関でこのさいすいヘルスケアネットを利用いただいています。

短期~中期的には、病院や診療所だけでなくかかりつけの薬局や訪問看護ステーション、介護施設などにも診療情報を公開したいと考えています。薬剤師や看護師は、患者さんの病名や検査データをさらに詳しく知った上で、薬の副作用や治療方針を説明できるようになるため、医療の質が向上します。

中長期的には、遠隔診療、遠隔診断を取り入れたいと考えています。

より良質な医療を提供できる体制を支援したいという一心で、当院だけでなく地域の医療関係者や行政、そして地域住民の皆さんと一体となってイノベーションを起こしたいと思います。当院は「地域のヘルスケアをリードする」をビジョンとしています。地域住民の方がより一層、安心できる医療提供体制の構築をめざし、リーダーシップを発揮したいと思います。

更新:2024.10.24

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