自己免疫性肝疾患とは 自己免疫性肝炎(AIH)・原発性胆汁性胆管炎(PBC)

済生会吹田病院

消化器内科

大阪府吹田市川園町

自己免疫性肝炎(AIH)

免疫の異常で肝細胞が障害され、血液検査でASTやALTが上昇します。通常は自覚症状がなく、健康診断や定期血液検査などで偶然に発見されることが多いです。急性肝炎様に発症する際は、食欲不振、黄疸(おうだん)などの症状がみられますが、自己免疫性肝炎に特徴的な症状ではありません。50~60歳代の女性に多い病気ですが、近年は高齢者の発症が増えています。ウイルス性肝炎などほかの病気が否定され、血液検査で抗核抗体陽性でIgGが高値であると自己免疫性肝炎の可能性が高いと考えられます。英語の略号でAIHと呼ばれることがあり、2015年から指定難病になっています。

基本的な治療は、副腎皮質ステロイドであるプレドニゾロンの内服です。肝機能検査値が改善してくると徐々に投与量を減量しますが、急に悪化することがあるので定期的な内服と検査を継続することが大切です。当院には、2017年に81人の患者さんが通院しており、軽症の場合はウルソ(ウルソデオキシコール酸)単独を処方したりするなど、できるだけ少量のステロイドで治療するようにしています。

原発性胆汁性胆管炎(PBC〈旧称/原発性胆汁性肝硬変〉)

肝臓の中に“胆管”と呼ばれる胆汁が流れる管がありますが、非常に細い胆管の細胞が免疫異常のために障害され胆管が壊れる病気です。胆汁の流れが滞るため、血液検査で胆道系酵素といわれるアルカリフォスファターゼ(ALP)やガンマ・グルタミル・トランスペプチダーゼ(γGTP)が上昇します。ASTやALTも上昇しますがその程度は軽度で、自己抗体の1つである抗ミトコンドリア抗体(AMA)の陽性化が特徴です。以前は病気が発見された時点で肝硬変(かんこうへん)に進行している場合が多く「原発性胆汁性肝硬変」と呼ばれていましたが、最近は血液検査を契機に早期の状態で見つかり、肝硬変まで進行していない場合がほとんどです。実際の病状とかけ離れていることが多いので、2016年から「原発性胆汁性胆管炎 Primary biliary cholangitis/PBC」と病名が変更されました。自己免疫性肝炎と同様に国の難病に指定されています。

自覚症状は初期の場合ありませんが、進行すると胆汁の流れが悪くなり、胆汁の成分が血液に逆流し全身のかゆみが出現してきます。また、ほかの臓器の自己免疫による病気を合併しやすく、口や目が乾燥するシェーグレン症候群や甲状腺の病気である橋本病、さらに関節リウマチを合併することがあります(図)。病気を完全に治す薬はまだありませんが、ウルソは胆汁の流れを良くし病気の進行を抑える働きがあるため、標準的に使用しています。肝機能が悪化した患者さんに対しては、適切な時期に肝移植を提案し大学病院に紹介しています。当院では2017年に123人の患者さんの治療を行っており、自己免疫性肝炎とともに豊富な診療実績があります。

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図 自己免疫性肝疾患と合併しやすい病気

なお、原発性硬化性胆管炎(PSC)という病気があり、これはPBCと異なり大きな胆管が障害される難病ですが、PBCよりも低い頻度(ひんど)の病気です。

更新:2022.03.08