脊髄損傷のリハビリテーション
中部ろうさい病院
中央リハビリテーション部
愛知県名古屋市港区港明
脊髄損傷の原因と症状
脊髄(せきずい)とは背骨の中を通る神経の束です。これが傷つくと、手足が麻痺(まひ)したり、呼吸や血圧の調整がうまくいかなくなったりします。
脊髄損傷の原因の多くは、交通事故や転落・転倒といった外傷によるものですが、腫瘍(しゅよう)や血液の流れが悪くなる血行障害など、外傷以外で生じることもあります。
損傷が頸部(けいぶ)ならば手足に、胸部以下であれば足に症状が出ます。また、脊髄の中心部が部分的に損傷した場合では、手足ともに麻痺が生じますが、足の麻痺は手よりも軽度という場合もあり、症状はさまざまです。
脊髄損傷のリハビリテーション――急性期から回復期にかけて
急性期(早期)のリハビリテーション(リハビリ)では、体を使うことができなくなった結果、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響を生じることを予防し、全身状態を維持する必要があります。
頸部の損傷では肺の機能が低下するため、肺炎を生じる可能性が高くなります。また、全身の感覚や筋肉の緊張が著しく低下することで床ずれを起こしたり、体が動かせないことで深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)や肺塞栓(はいそくせん)も起こしやすくなります。これらを予防するために、頻回(ひんかい)に体の向きを変えたり、呼吸練習や痰(たん)を出す練習を行ったり、関節が固まらないように動かすことが必要です。全身状態が安定すれば(回復期)、積極的なリハビリを行います。
脊髄損傷では、比較的早期に損傷部位ごとの障害を予想することができるため、個々の患者さんに合わせて具体的なリハビリを選択します。日常生活に必要な動作を獲得するために、手で自分の体を持ち上げ移動する能力や、着替えるために柔軟性を向上させる必要があります。これらの必要な能力の獲得に向け、リハビリを計画的に進めていきます。
また、回復期の取り組みとして、社会復帰した脊髄損傷者の方に話をしてもらう社会生活講座を開催し、退院後の生活を理解し、リハビリへの意欲を高めることができるようにしています。
当院は回復期リハビリテーション病床を有していますので、急性期から回復期にかけて包括的なリハビリを行うことができます。
更新:2024.10.18