胃がんに対する外科手術の進歩

山梨大学医学部附属病院

消化器外科、 乳腺・ 内分泌外科

山梨県中央市下河東

胃がんとは?

胃がんは、1年間に新たに診断される患者さんの数、死亡する患者さんの数が、すべてのがんの中で毎年上位となるがんです。ピロリ菌の感染、たばこや塩分の多い食事の摂取が、胃がんの発生リスクになります。胃カメラ、バリウム検査、CT検査などにより、胃がんの進行度を診断し、進行度に応じた治療を行います。

胃がんでは、手術による治療を行うことが多いですが、かなり早い段階のものでは、胃カメラでがんだけを摘出することもあります。また、胃以外の臓器に転移を認める胃がんに対しては、手術ではなく抗がん剤による治療を行います。

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胃がんに対する標準的な手術

胃がんに対する手術では、がんの部位だけではなく胃の周りにある転移しやすいリンパ節も一緒に切除します。切除する胃の範囲は、がんがある部位と進行度で決定されますが、通常、胃の出口側のがんに対しては出口側2/3の胃の切除(幽門側胃切除術(ゆうもんそくいせつじょじゅつ))、胃の入り口に近いがんや大きながんには胃を全摘すること(胃全摘術)が推奨されます。

胃を切除した後は、食べ物や消化液が通るように、さまざまな方法で胃や腸などの消化管をつなぎ直します(再建、図1)。

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図1 胃がん手術の切除範囲と再建法

体への負担の少ない手術

胃がんの手術では以前は、みぞおちからお臍(へそ)まで大きくお腹(なか)を開いて手術(開腹手術(かいふくしゅじゅつ))を行っていました。手術器具の進歩などにより近年、お腹に小さな穴をあけて、お腹の中をカメラ(腹腔鏡(ふくくうきょう))で観察しながら手術を行う腹腔鏡手術(写真)が多くの施設で行われるようになってきました。

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写真 当科での腹腔鏡手術の様子

腹腔鏡手術は、開腹手術より小さな創(きず)で行えるため、術後の創の痛みや体への負担が少なく、手術後の回復が早いというメリットがあります。胃がんにおける腹腔鏡手術では、5〜12mmの穴を5〜6か所あけて、そこから腹腔鏡や手術器具を入れて手術を行い、胃を取り出す際には、お臍の傷を3〜4cmに広げて胃を体の外に出します(図2)。

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図2 腹腔鏡手術と開腹手術の創の違い

最近では、お腹の中でより複雑なことができる手術支援ロボットを用いた腹腔鏡手術(ロボット支援手術)が行われています。

術後の生活の質を重視した手術

手術で胃がんを治療する場合には、少なくとも2/3以上の胃を切除することが推奨されています。しかし、手術後に残った胃が小さくなればなるほど、一度に食べられる量や消化・吸収の能力が減少します。そこで、なるべく胃を残せるよう、手術前はもちろん手術中も十分に検討して胃を切る範囲を決めることが大切です。

また、胃の入り口に近いがんでも早期のものは、全摘ではなく胃の出口側を残し、入り口側の胃だけを切除する手術(噴門側胃切除術(ふんもんそくいせつじょじゅつ))を行うことも、胃を残す選択枝になります(図3)。噴門側胃切除術を受けた患者さんは、胃全摘術に比べて術後の体重減少や貧血が少ないというメリットがあります。

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図3 噴門側胃切除術の切除範囲と、当科の再建法

更新:2024.04.26