最新の小児がん医療について
山梨大学医学部附属病院
小児科
山梨県中央市下河東

小児がんとは?
小児がんとは、子どもに発症するがんのことです。その代表として、白血病などの血液のがん、神経芽腫(しんけいがしゅ)などの固形腫瘍(しゅよう)が知られています。治療はがんの種類と進行度によって異なりますが、一般的に抗がん剤を使った治療、手術、放射線治療などがあります。日本全国の小児がん治療医が参加して行う治療方法の開発(多施設共同研究)により、その治療成績は著しく向上しました。しかし、再発などの一部の治しにくい小児がんに対しては、造血幹細胞移植療法、抗体製剤を用いた免疫治療も行われています。
小児がんとその治療について
小児がんは、一般に15歳未満の子どもに発症する、さまざまながんのことを指します。血液のがんである白血病が最も多く、小児がんの約4割を占めていますが、ほかに、脳腫瘍、神経芽腫、腎芽腫(じんがしゅ)、肝芽腫(かんがしゅ)などの固形腫瘍もあります。
これらの小児がんに対しては、手術、薬物、放射線、造血幹細胞移植などを組み合わせる集学的治療を行いますが、がんの種類や進行度によってその組み合わせは異なります。これらの治療は極めて専門的なものであるため、専門医や治療設備の整った施設でしか行うことはできません。
多施設共同研究について
ある病気に対して、複数の施設が同一の治療を行い評価し、より良い治療の開発を行うことを、多施設共同研究といいます。現在、全国のほぼすべての小児がん診療施設と小児がん担当医が協力して、日本小児がん研究グループ(JCCG:Japanese Children’s Cancer Group)を形成し、主な小児がんの最新の診断・治療に関する多施設共同研究を行っています。
これらの治療研究の結果は世界でも優れた治療成績として報告されており、患者さんはこれらのグループの治療研究に参加することで、国内において最も進んだ治療法を選択することが可能となります。
移植療法、免疫療法が行われる小児がん
通常の治療では治しづらいもの、また再発してしまったがんに対して、移植療法、免疫療法などの治療が行われています。特に小児の急性リンパ性白血病は、その治療研究が最も進んでいる代表的な疾患です。
移植療法とは、白血病などのがん細胞を放射線や抗がん剤などを用いてできる限り少なくした後に、健康な他人の血液の種(血液幹細胞)を患者さんに点滴で投与し、健康な血液の免疫の力により、がん細胞を駆逐する治療法です。移植による治療成績を良くするためには、移植前に寛解(かんかい)と呼ばれる、見かけ上、がん細胞がほとんどない状態にする必要があります。
免疫療法では主に、白血球の中のTリンパ球が、がんに対する攻撃の主役を担っています。急性リンパ性白血病では、免疫療法として、その白血病細胞が持っているAタンパクと患者さんの正常なTリンパ球が持っているBタンパクとに同時に結合することができる特別な抗体製剤を患者さんに投与し、がん細胞と患者さんのT細胞を直接戦わせることにより、寛解をめざします(図1)。

この治療では、がん治療薬の副作用である吐き気や脱毛、免疫力の低下による重篤な感染症は起こりにくく、患者さんは慣れると比較的楽に治療を受けることができます。近年では、このような治療薬で、治療に難渋する患者さんを寛解に持っていき、より良い状態で移植療法を受けることができるようになりました。
更新:2024.04.26