院内外での感染対策と抗菌薬治療を支援
山梨大学医学部附属病院
感染制御部
山梨県中央市下河東

効果的で継続可能な感染制御
風邪やインフルエンザの患者さんから咳(せき)やくしゃみで飛び出したしぶきには、ウイルスや病原性微生物が潜んでいて、これが私たちの目や鼻や口から体内に入ると、感染してしまいます。病院の中にもMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)や緑膿菌(りょくのうきん)などの病原性微生物が潜んでいて、これが患者さんの傷口などにくっつくと、化膿したり血液に入ったりして重篤な病気を引き起こします。
どのようにして感染するのか(感染経路)を科学的に解明し、その知識をもとに感染経路を効果的に遮断(しゃだん)すること、これを感染制御と呼びます。感染制御部では、最新の知見を駆使して院内外での感染制御策を立て、現場の職員と協力して、患者さんが安全に安心して療養に専念できる環境、職員が安全に医療を提供できる環境を整えると同時に(写真1〜3)、山梨県と協力し、県民の皆さんが家庭や学校、職場で効果的な感染症対策を行うためのトレーニングを実施しています。



一緒に考える抗菌薬適正使用
感染症の多くは、細菌や真菌といった感染性微生物が原因となります。これらをやっつけるには、抗菌薬や抗真菌薬での治療(抗菌薬治療)が効果的ですが「、効果的な薬剤を使用する」「治療効果を確認しながら使用する」「治療効果が十分得られたら終了する」という、基本ルールがあります。このルールを徹底することで、最も安全に最短で治療を成功させることが可能となります(抗菌薬適正使用)。
私たち感染制御部では、患者さんの状態を評価しながら主治医と協力して、抗菌薬適正使用を図っています(写真4)。

全員参加の新型コロナ医療体制
新型コロナウイルスは、変異を繰り返しながら流行を繰り返しており、今後も長く蔓延することを想定した、コロナ医療体制が必要です。コロナ医療体制がひっ迫すれば、がん治療や交通事故のように一刻も早く開始したい一般医療や救急医療など、コロナ禍以前はすぐに受けられた医療が受けられなくなってしまいます。
そのような事態に陥らないために、山梨大学は一致団結してコロナ医療体制、重症例の入院治療に加え、ワクチン接種(写真5〜7)やドライブスルー式の大規模PCR検査の実施、さらに患者さんの健康状態を医療者が把握するSHINGENシステムの開発とその運用、新型コロナウイルス感染症で療養中の患者さん専用の夜間救急コールセンターの運営など、多くの役割を率先して担っています。



これらの運営には、新型コロナウイルス感染症とはどんな病気なのか、どのようにして感染が広がるのかといった最新情報を提供し、医療者をとりまとめる司令塔が不可欠です。
感染制御部はコロナ禍のずっと以前、2013年から、新型インフルエンザの大流行を想定した準備を進めてきました。そしてコロナ禍の当初から、司令塔として院内の混乱を防ぎ、診療体制をコントロールしてきました。さらに山梨県のコロナ医療体制の立案と運用にも深く関与し、山梨県医師会の協力のもと、多くの医療機関が参加する、現在のコロナ医療体制を構築してきました(写真8、9)。感染制御に不安のある医療施設や、高齢者施設などへ技術支援も行っています。当部は、これからも山梨県のコロナ医療体制をリードし、安心して頼れる医療を維持していきます。


更新:2024.04.26