心房細動に対するカテーテルアブレーション
山梨大学医学部附属病院
循環器内科
山梨県中央市下河東

心房細動(しんぼうさいどう)とは?
心房細動とは、心房という心臓の上の部屋が小刻みに震えるようになり、収縮しなくなる病気で、不整脈の一種です。脈が常に不規則になるのが特徴で、一般的には心拍数が上昇することが多いですが、時に徐脈性心房細動(じょみゃくせいしんぼうさいどう)といって、心拍数が低下し、ペースメーカーが必要となる場合もあります。原則、致死性不整脈ではありませんが、放置すると心不全あるいは血栓形成から脳梗塞(のうこうそく)を発症することがあり、早期に発見し治療を開始することが重要です。加齢に伴い罹患率(りかんりつ)(病気になる人の割合)が上昇しますが、高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸(すいみんじむこきゅう)などとの関連が指摘されており、メタボリックシンドロームのコントロールも心房細動の発症・再発予防において重要です。

脳梗塞に対しては、抗凝固薬(血をさらさらにする薬)により予防が可能ですが、抗不整脈薬の効果は限定的です。一方、発症早期であればカテーテルアブレーションによる根治(完全に治すこと。治癒)も可能であり、発症早期に専門医に診てもらうのが望ましい疾患です。
心房細動の症状
動悸・息切れが主症状ですが、低血圧や徐脈を併発した場合は、めまいが出現することもあります。心不全を併発した場合は呼吸困難になることもあります。
心房細動そのものは無症候(症状がない状態)という場合もありますが、時に初発の症状が手足の麻痺や構音障害(言葉の発音の異常)など、脳梗塞に伴って症状がでる場合もあり得ます。心房細動が血栓を合併しやすく、その血栓が脳の血管へ到達し、脳梗塞を引き起こすためです。
心臓由来の血栓が引き起こす脳梗塞は致命的になる可能性が高く、半身麻痺や寝たきりなど、重篤な後遺症を残しやすいといわれています。無症候性の心房細動を見逃さないようにするためには、定期的に健康診断を受けること、脈の乱れを自覚した際には早めに医療機関を受診することが重要です。
心房細動の診断
房細動は、発作中の心電図を記録することができれば容易に診断が可能です。ただし、発作性心房細の場合、頻度がまれであったり、持続時間が短い場合があり、発作中の心電図記録が困難なことがあります。そのようなときは、1泊2日で携帯用心電図を持ち帰っていただくホルター心電図検査で、診断がつくことがあります。
一方で、動脈硬化(どうみゃくこうか)以外の原因が疑われる、これまでに脳梗塞に罹(かか)ったことがある患者さんにおいては、左胸の皮下に植込型心電計を留置することで、4人に1人は心房細動が診断できるともいわれています。
最近のトピックとしては、心電図機能付きスマートウォッチがあります。日本ではまだ医療機器として認可されてはいませんが、スマートウォッチで不整脈が指摘された3人に1人に、実際に心房細動が診断されたという報告もあり、今後の展望に期待が寄せられています。
心房細動に対するカテーテルアブレーション
心房細動には、抗不整脈薬などによる薬物治療が行われることがありますが、効果は不十分なことが多く、逆に致死性不整脈を引き起こしたりする副作用の懸念もあり、近年カテーテル治療が急速に普及しつつあります。
発作性心房細動の原因は、7〜8割が、肺からきた血液が左心房に流入する肺静脈にあるといわれています。心房細動のカテーテルアブレーションは、右足の付け根にある大腿静脈(だいたいじょうみゃく)からカテーテル(医療用の細い管)を挿入し、右心房と左心房の間にある心房中隔に穴をあけて、肺静脈の左心房への接合部へアクセスします(図1)。発作性心房細動であれば、7〜8割の方が、1回のカテーテル治療で根治が可能です。

高周波アブレーションでは、同部を1点1点円周上に連続して焼灼することで、心房細動の契機となる電気信号をブロックします(図2)。肺静脈の形状によらず、テイラーメイドな治療が可能なところが特長です。

冷却バルーンアブレーションは、冷却したバルーンを各肺静脈の入口部へ押し付けて、冷凍傷害をもたらすことにより、肺静脈からの電気信号を遮断します(図3)。1回の冷凍で1本の肺静脈を一括して治療が可能であり、治療時間が比較的短いことが特長です。

更新:2024.04.26