最新の関節リウマチ治療-関節リウマチ

富山大学附属病院

免疫・膠原病内科

富山県富山市杉谷

関節リウマチは、どんな病気ですか?

関節を包んでいる滑膜(かつまく)という袋のようなものが腫(は)れると、周りの骨や軟骨などの関節の構造を次第に破壊していきます(図)。そうなると、微熱や倦怠感(けんたいかん)が出るなど日常生活にさまざまな支障をきたします。手足の関節だけでなく首の関節にも影響が出てくることがあります。

イラスト
図 健常者と関節リウマチ患者の関節(ランセット2016をもとに作図)
写真
写真 関節のエコー写真(矢印の赤いところが炎症のある滑膜)

関節の変形が進むと、手術以外に元に戻す方法はなくなってしまうため、できるだけ早い診断や治療を行って、変形を起こさないことが重要です。

最新のリウマチ治療には、どんなものがありますか?

まずは、抗リウマチ薬という飲み薬を使います。その中でも、特に内臓などに問題がない場合には、メトトレキサートという薬が中心的な役割を果たします。この薬が効果を現すまでの間は、痛み止めやステロイド薬を一時的に使用して、痛みを和らげたりします。メトトレキサートを最大限使っても効果が十分に出ないときには、生物学的抗リウマチ薬(バイオ製剤)という注射薬を併用します。

最近では、注射が苦手な人にも使えるJAK(ジャック)阻害薬という新しい飲み薬も登場してきました。ただし、これらのバイオ製剤やJAK阻害薬は高額ですので、主治医とよく相談して決めてください(表1)。

非ステロイド性消炎鎮痛薬
(NSAIDs)
いわゆる痛み止めです。痛みに対して即効性はありますが、リウマチの関節の破壊を抑えることはできません。胃潰瘍や腎臓障害の原因になることがあります
ステロイド薬
( プレドニンなど )
炎症を抑えます。以下の抗リウマチ薬が効果を現してくるまでの橋渡しとして用いますが、長期間使うと、骨粗しょう症などのいろいろな副作用が出てきます
合成抗リウマチ薬
(csDMARDs)
メトトレキサート (MTX) を中心として、何種類も薬があります。効果が出てくるまでに、通常1~3か月かかります。中でも MTX は、毎日飲む薬ではないので注意してください。薬の種類によって、副作用が異なりますが、特に薬による肺炎 ( 間質性肺炎 ) には注意が必要です
生物学的抗リウマチ薬
(bDMARDs)
点滴や皮下注射などの注射による薬です。効果は非常に高く、関節の破壊も効率よく抑えますが、高額です。
感染を起こしやすくなるので、注意が必要です
JAK( ジャック ) 阻害薬
(ctDMARDs)
新規の合成抗リウマチ薬で、飲み薬ですが、生物学的抗リウマチ薬と同じくらい高額です。帯状疱疹を起こしやすくなります
表1 リウマチ治療薬の一覧

治療中に気をつけることはありますか?

リウマチの中心的な治療薬であるメトトレキサートを服薬中は、青汁や健康食品などの葉酸が多く入ったものを摂りすぎると、薬の効き目が悪くなることがあります。また、過去知らない間に体内に入った結核菌やB型肝炎ウイルスが活発になるきっかけとなることもあるので、治療前や治療中のチェックが必要です。

治療薬の多くは、多少なりとも免疫力を低下させるため、うがいや手洗いをしっかり行ってください。冬場のインフルエンザワクチンや高齢者の肺炎球菌ワクチンもできるだけ受けてください。また、子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが活発になって、帯状疱疹(たいじょうほうしん)を起こすこともあります。皮膚の変化にも十分に注意してください(表2)。

結核 昔、結核や肺浸潤にかかった記憶のある人で、“ストマイ”という抗生物質を打っていたことのある場合や、同じ場所で暮らしてい
た人にも同様のことがあった場合には、結核の予防薬をまず飲み初めてから、リウマチの治療を開始します。また、そのような記憶
がなくても、胸部X線や血液検査で、結核にかかったことがあると分かった場合も同様に、結核の予防薬をまず飲みます。予防薬は、
通常、9か月間ほど服用します
B 型肝炎 B 型肝炎の人やそのキャリアの人は、B 型肝炎ウイルス検査を行い、B 型肝炎ウイルス薬を飲んだ上で治療を始めます。B 型肝炎の
感染の既往があると分かった人は、肝炎ウイルスの再活性化が起こらないか B 型肝炎ウイルスの DNA をモニターしながら治療し
ます
インフルエンザ 流行期には、ワクチンにアレルギーがある人以外はワクチンの接種を必ず受けてください。うがいや手洗いを行い、人混みではマス
クを着用してください
肺炎球菌 肺炎球菌ワクチンの接種をしてください。子どもは、発病していなくても肺炎球菌を保菌していることがあるので、注意してください
帯状疱疹 子どもの頃に水痘 ( 水ぼうそう ) にかかった人は、水痘ウイルスが体の神経節に潜んでいます。リウマチの治療で免疫力が低下する
と、再び活性化して帯状疱疹を起こします。まず、前駆症状として、チクチクした痛みや赤みが体の左右どちらかに出てきて、その
後で水ぶくれになります。おかしいなと思ったら、早めに受診してください。治療が遅れると、後遺症として神経痛が残ることがあ
ります
間質性肺炎
ニューモシスチス肺炎
間質性肺炎は、薬によって引き起こされる肺炎です。細菌による普通の肺炎と違って痰はほとんど出ませんが、頑固な咳や息切れが
特徴です。風邪の初期症状と似ていますが、長引いたり、おかしいなと思ったら、受診日以外でもすぐに受診して、胸のレントゲン
を撮ってもらってください。
また、症状や胸のX線の影はほとんど同じですが、空気中のニューモシスチスというカビによって引き起こされるニューモシスチス
肺炎があります。その危険度の高い方は、バクタという予防薬を内服します
リンパ腫 リンパ腺が腫れてきたり、寝汗をかくようになったり、原因不明の熱が出るようになったら、リンパ腫の可能性もあります。主治医
に早めに相談してください
表2 治療前、治療中の注意事項

関節リウマチは今では不治の病ではなく、早期に発見して適切な治療を受ければ、変形も起こさずに普通の人と同じ生活が送れる病気です。

更新:2022.03.16